【漁師入門】新人漁師の心得

ようこそ、海の世界へ。
これから一緒に水産業の未来をつくっていきましょう。

漁師の世界は、常に「信頼関係」のもとで成立しています。
海を守り、海と共に生きてきた漁師にとって、「よそ者」を受け入れることははじめてのことばかり。

すぐに辞めるんじゃないか。
どうせ続かないだろう。

はじめはそんな偏った目であなたのことを見るかもしれません。
それでも挫けずに、毎日浜にいきましょう。
元気にあいさつをして、彼らの一挙一動から、たくさんのことを学びとってください。そしてわからないことがあったら、怖がらずに尋ねてみましょう。

そんな毎日を積み重ねていくうちに、周囲があなたに順応しはじめます。
そこにあった「異物」はいつしか「当たり前」として受け入れられ、はじめからあったパーツのように「なくてはならないもの」に変わっていくはずです。

彼らが暮らしている漁村は、あなたが想像しているよりももっと小さなコミュニティであり、これからあなた自身がそのコミュニティを守っていく一員になります。
大切なのは、彼らが守ってきた暮らしや営みを壊さないということ。
まずは小さなところから「信頼」を積み重ね、彼ら一人ひとりの大切な日常を守ることを心がけてください。

ようこそ、海の世界へ。

あなたを仲間に迎え入れるにあたって、心がけてほしいことを7つお伝えします。
これから働き出す人も、すでに働き始めている人も。
これさえ知っていれば、きっと気持ち良く働けるはず。

TRITON PROJECT・新人漁師の7カ条

1、あいさつをすべし

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当たり前のことですが、一番大事なことなので最初に書きます。
親方はもちろん、顔を合わせる人には必ず元気にあいさつをしてください。
あいさつをするということは、あなたが「ここにいる」ということの証です。同時に、相手への気遣いにもなります。

「おはようございます」「ありがとうございます」「お疲れ様でした」

コミュニケーションが苦手という人も、まずはあいさつから頑張りましょう。
あいさつを毎日繰り返すことで、コミュニケーションが生まれ、そこから信頼関係が築かれていきます。外から来た人にとっては地元の言葉を理解する必要がありますので、あいさつからどんどん耳を鳴らしていきましょう。

2、五感を磨け!

漁師の仕事は危険がつきもの。
経験がものをいうこともありますが、何が危なくて、何が危なくないのか、察知できるようになりましょう。
船の上は、エンジン音や機械音などさまざまな音が溢れているので、漁師たちも声が大きくなりがちです。時に強い口調にもなります。それに怯(ひる)まないでください。それだけ作業に危険が伴うのだということを忘れないようにしましょう。

また、一生懸命仕事をしていると、自分のことだけに集中しがちです。
最初はそれでも仕方ありませんが、少し仕事に慣れてきたら視野を広くするように気をつけましょう。この場合の視野は、視覚のことだけではありません。他の人がいま何をしようとしているのか、周りに危険はないか。目線を向けたり作業を止めることがなくても、音や色、気配、風の向きなど、五感を最大限に使うことで、周囲への気配りや、一歩先を読んだ動きができるようになります。

3、とにかく学べ!

最初は何もかも知らなくて当たり前。開き直ってどんどん学びましょう。
おそらく漁師たちは、1から10までをあなたに教えません。しかしながら、漁師たちの目線、動き、一挙一動に学ぶべきことがたくさんあります。
いま何をしているのか。どうしてこの作業が必要なのか……自分で考え、失敗を恐れずに実践してみましょう。
もちろん、わからないわからないことはどんどん聞くべし。
一番よくないのは、わかっているふりをすること。実は漁師自身が、あなたが何をわからないかをわからなかったりするのです。臆せずに、わからないことはわかるまで聞きましょう。

漁師の仕事は、探究心が大事です。
70歳を過ぎたベテラン漁師でも、どうしたらもっとよくなるかを常に考えながら行動しています。常に謙虚な気持ちで学び、探求することを忘れずにいてください。
今までにない新しい視点から見たあなたのアイディアが、これからの漁業を変えるきっかけになるかもしれません。
そしていつか、あなたのような若者が目の前に現れたときには、ぜひ「教えて」あげてください。
人に教えることで、あなたにとっての学びがまた得られるはずです。

4、自由には責任が伴う

自由奔放に思われる漁師ですが、「相手」や「地域」があってこその仕事であるため、周囲に迷惑をかけることなく、それぞれが責任を持って仕事をしています。
社会の一員として常識を逸脱した行動をとることなく、自分の言動に責任を持つようにしましょう。特に漁師はさまざまなルールと、信頼関係のもとに成り立つ仕事ですので、信頼を失うような行動をとってはいけません。

浜の情報は光よりも速いです。

良くも悪くも、あなたの言動を常に誰かが気にかけていると自覚してください。
また、健康な体あっての仕事ですので日々の体調管理をしっかり行うように心がけましょう。

5、片付け上手は仕事上手

使ったものはきれいにして戻すのはもちろんのこと、自分のものだけでなく、他の人のものも積極的に片付けたり、仕事場を整理整頓するように心がけましょう。
漁師の仕事は危険がつきものですので、整理整頓をすることや身だしなみをきちんと整えることは安全への配慮に繋がります。また、きれいにすることで次の作業がスムーズに行えるなど、仕事の効率もあがります。

一つひとつが、大切な仕事道具。
日頃から手入れをし、いつでもすぐ使えるように整えておきましょう。

6、情けは人のためならず

孤高の戦士に見える漁師ですが、実は一匹狼ではできない仕事。
漁業は常に地域の仲間と助け合って行われています。

ライバルであり、仲間。
仲間がいるからこそ、協力し、切磋琢磨することができます。

困ったときはお互い様です。
困っている人を見かけたら積極的にお手伝いするようにしましょう。
めぐりめぐって、
自分が困ったときに助けられることもきっとあるはずです。
そしてどんどん仲間を増やしていってください。
その仲間が、あなたの世界を広げてくれるはずです。

7、なりたい自分を描く

なにか悩むこと、困ることがあれば周囲に相談しましょう。その悩みは、漁師の誰しもが通ってきた道かもしれません。
そして仕事をただこなすだけでは、モチベーションはあがりません。

「明日はこの作業ができるようになりたい」

最初は想像しやすいところからで構いません。そこから、少し先の自分を思い描いていきましょう。

1年後、3年後、10年後……あなたはどんな漁師になっていたいですか?

その目標の実現のために何が必要なのか。
周囲にアドバイスをもらい、具体化していくことで、
毎日の仕事もさらにモチベーションがあがっていきます。

どうかあなたの思い描く未来を目指して、進み続けてください。
ため息ばかりの日々ではなく、もっと水産業界が自由に夢や希望を持てる未来になることを、私たちは願い、応援し続けます。


 

最後にひとつ。
これだけは忘れないでください。

何か大きなことを成し遂げようとしなくても、あなたが「漁師になりたい」と思ったこと自体が、水産業界にとっては大きな革命です。

決して焦らずに、1日1日を大切に積み上げてください。

「海という宇宙で、理想の星を目指す」

それが、TRITON PROJECT。

一緒に少しずつ、水産業の未来をつくっていきましょう。
集え、水産業の未来を担うフィッシャーマン。限りない挑戦は、楽しい。

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