【漁師入門】覚えておきたい!漁具10選

【漁師入門】覚えておきたい!漁具10選


漁師の仕事は体ひとつあればいいと思っていませんか?
実は仕事をする上で欠かせない漁具がたくさんあります。

漁具は普段聞きなれない名前も多く、さらにやっかいなことに漁師によって呼び方が異なることもあります。最初は戸惑うこともあると思いますが、今この場面で何を必要としているのかを想像しながら、一つひとつの名前を覚えていきましょう。

今回、石巻市で就業中の新人漁師に「これだけは知っておいてほしい身近な漁具」という項目でアンケートをとりました。
回答が多かったアイテム10選を、使用例とともに紹介します。

【注意】
※呼び名や使用方法は地域、漁師、魚種ごとによってさまざまです。
※参考価格はアサヤ株式会社にご協力いただきました。価格はあくまでも「単品」で買う場合の参考価格です(漁具を購入する際は、ある程度まとまった数を発注することが多いです)。


1、スパイキ

先のとがった木製・鉄製の道具。漁師それぞれでこだわりがあり、カジキや鹿の角で自らつくる人もいます。動物の角などは落とすと割れることもあるので、取り扱いに注意が必要です。
参考価格:150mm 鉄@850円程度

◎スパイキ使用例「綱さし」
スパイキを使ってロープの間を広げ、隙間にロープの先端を差し込むことで、結び目なく輪っか状にしたり、2本のロープを1本に繋ぐことができます。


2、バンジョウ(万丈篭)

海産物や資材を入れるために使用されるプラスティック製のカゴ。使用頻度も高いので、他の人のものと混ざらないように、屋号や船名、浜の名前などが書いてあるものが多いです。強度があり、ひっくり返せば椅子にもなる万能選手。漁業になくてはならない存在です。
参考価格:サンコー I型@3,450円程度

◎バンジョウ使用例「牡蠣の水揚げ」
バンジョウに水揚げした牡蠣を入れ、フォークリフトで浄化タンクへ運びます。穴があるので海産物が入った状態で水につけることもできます。


3、アバリ(網針)

タモ網や漁網を編んだり、修復するときに使う針。素材はプラスティック製のもののほか、竹や木材などがあります。編むもののサイズにより、大きさもさまざま。
参考価格:合成アバリ14号@65円程度

◎アバリ使用例「海苔網の修復」
穴があいてしまった箇所をアバリを使ってつなぎ合わせます。綺麗なひし形になるように力加減や結び方に注意が必要です。


4、カギ

先が曲がった金属製の器具を長い棒につけたもの。船や海でよく使うのは「ボートハッカー」と呼ばれるタイプのもの。船をつけるときや筏のロープを取るとき、ものを押すときなど、手が届かない場所の対象物に使用します。
参考価格:ボートハッカー ステン 12mm@2,800円程度


5、箱いろいろ(テンバコ/スカイタンク/トロバコ・バット・通函/樽)

漁師の仕事道具として、全面ベタ面のマルチボックスがあります。
大きさ、高さはさまざま。海産物を入れたり、魚の種類を分けるときに使ったりします。水を張って魚を入れたいとき、逆に運送時に水を垂らしたくないときなどにも使います。

◎テンバコ
石巻では、銀鮭漁師がよく使います。
参考価格:サンボックス 75 R ロープ付き@9,500円程度

◎スカイタンク
海産物を運搬・保管するために使われるコンテナ。水が1t近く入り、キャップを外せば水を抜くことも可能。
活魚を扱う現場では、酸素を送り込んで生簀として利用しています。
参考価格:サンコー ジャンボックス#1000 H4@110,000円程度

◎トロバコ・バット・通函
まだまだ箱物はたくさんあります!魚市場をのぞいてみましょう。
比較的浅めの箱は「トロバコ」「バット」「通函(つうかん・かよいばこ)」と呼ばれています。魚を種類や大きさで選別をしたりするのに使われます。丸い入れ物は「樽(タル)」。こちらもたくさんの魚を入れることができます。
参考価格:
(トロバコ)サンコー 特大型トロ-2@8,000円程度
(樽)サンコー サンコータル#75 本体+フタ@7,000程度


6、ナタ(ホタテ用ナタ)

ホタテ漁師の仕事道具、ナタ。刃物の部分でホタテの殻についた付着物を削ぎ落とします。刃物の背の部分はホタテのサイズを計測できるようになっている優れもの!
内側から10cm、11cmの目盛りとなっています。
参考価格:木柄 ゲージ付き 鉄@2,500円程度

◎ナタ使用例「ホタテ水揚げ作業」
機械で取りの除ききれなかったホタテの付着物をナタの刃物の部分で削ぎ落としていきます。


 

7、タモ(タモ網)

棒の先のわっかに袋状の網をつけたもの。魚をすくう時などに使用します。用途に合わせて、網の大きさや深さ、枠の強度など、適切なものを使用します。穴があいたら、アバリで補修。基本的に既存のものではなく漁師のお手製です。

◎タモ使用例「銀鮭の選別」
出荷する銀鮭を別の生簀に移す選別作業では、素早く魚を移す必要があるため、浅めのタモが使われます。


8、マギリ(間切)

船上では刃物は必須。魚をさばくときはもちろん、止むを得ずロープを切るときなど万能に使える漁業用包丁がマギリ。切れ味に優れ、大きさ、刃渡りもちょうど良いことから、腰ベルトに常備する漁師も。最近は、ステンレス製で錆びにくいものや、柄の方が大きくなっていて海に落としても沈みにくいものもあります。
参考価格:竹好135mm サヤなし@1,700円程度

◎マギリ使用例
船上で魚をさばくとき、血抜き処理などをするときなど使用します。


9、ノンコ(手カギ)

木製の柄の先に金属の爪(カギ)が付いた道具で、重たい荷物や大きな魚を移動するときに引っ掛けて使います。腰をかがめずに対象物を移動させることができるので、魚市場では必須アイテムです。
カギの形(角度や丸さ)は魚種の大きさ・用途によって異なります。
参考価格:鯨カギ600mm@3,650円程度

◎ノンコ使用例
箱の両側にそれぞれ引っ掛けて持ち上げることも。屈まなくて済むので楽チン!


10、パレット

荷物や道具などを移動させる際に使用する平らな荷台。両サイドに差し込み口があるので、リフトを使って一度にたくさんのものを乗せて運ぶのに便利。素材は木製やプラスチック製、再生品などさまざま。
参考価格:D4-1111 (1.1m×1.1m)@12,000円程度

パレット使用例:
一度にたくさんのものを運ぶ時はパレットとフォークリフトの出番。
牡蠣の原盤(ホタテの殻を連ねたもの)など重ねづらいものを運ぶ時は、パレットの脇に支柱を立てて落ちないようにするなどの応用も。


これらは漁師の道具のほんの一部。
まだまだ覚えなくてはいけない漁具がたくさんあります。

最初にお伝えした通り、漁具は人によっても呼び方がさまざま。
どんな呼び名であっても(たとえ正式な商品名とは異なっても)、「用意できない漁具はない!」と断言する心強い存在が、漁具屋さんです。
たくさんある商品の中から、希望の素材や大きさ、用途を聞きながら、漁師が欲している漁具をズバリ用意してくれるスペシャリスト。
漁具のことで困ったことがあったら、ぜひ身近な漁具屋さんに相談してみましょう。

今回記事の制作に協力してくださった「アサヤ株式会社」の廣野専務(右)と藤野常務。アサヤでは創業から170年に渡って地域の漁師を支え続けています。

 

忘れてはならないのは、これらの漁具は「理にかなった」「商売道具」であるということ。モノによっては唯一無二のものや、高額な商品もあります。何よりも「なくては困る」ものばかりです。

新人漁師諸君。
基本的なところですが、「使ったらもと場所に戻す」「こまめに手入れを行う」ということを心がけ、大事に使うように心がけましょう。

参考リンク
海に浮かんでいる漁具の名前
漁師の服装
新人漁師の心得

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