日本での延縄漁は、古くから行われており、『古事記』や『古今集』にもその記載があるほどです。
特に延縄によるまぐろ漁は、日本で最も有力な漁法です。世界中の海で日本の遠洋まぐろ延縄船が、みなさんの食卓に美味しいまぐろを届けるために漁を行っています。
今回、遠洋まぐろ延縄漁師の一日とその魅力を教えていただくのは、株式会社長久丸 第二十一長久丸の守山宗七(もりやましゅうしち)漁労長です。
守山さんの経歴等を教えてください
地元宮崎で16歳から漁師になり、現在63歳なので漁師歴は47年になります。
長久丸では4年間船長を務めておりましたが、今年から漁労長を務めることになりました。
現在も宮崎に家があるので、10か月~1年間の操業を終えた後は宮崎に帰ります。
遠洋まぐろ延縄漁師の一日を教えてください
出典:遠洋まぐろ延縄漁業ってどんな漁業なの? | かつお・まぐろコラム | 遠洋かつお・まぐろ漁業組合の働き方、豆知識、冷凍マグロの食べ方をご紹介
投縄作業
漁のある日は、まずはじめに延縄を海中に投げ入れる「投縄」からスタートします。
投縄ではまず幹縄に浮き玉やラジオブイ(縄の位置を確認するためのブイ)を装着します。
その後枝縄にある釣針にイカやイワシなどの餌を付け、続々と海中に投入していきます。
投縄作業は6人1チームで行われ、3チームがローテーションして担当します。
投縄が終わった乗組員は、3時間ほど休憩を取る時間があります。
揚縄作業
およそ5時間超に及ぶ投縄作業を終え、数時間の休憩をとったあとは、魚を取り上げる揚縄作業(縄を引き揚げる作業)を行います。
揚縄時にかかったまぐろを引き上げているときは、この仕事のロマンを感じる瞬間です。
魚を取り上げる以外にも、縄の回収や修復作業なども同時に行います。
作業は大きく分けて、おおよそ次の5つです。
- まぐろを船内に取り入れるためカギを掛ける
- 魚を手繰り寄せる
- 道具を収納する
- マグロを処理する(解剖し、エラや内臓を取る)
- 凍結処理する(冷凍部員)
乗組員は交代しながら、トータルで12時間近くをかけて作業を行っていきます。
作業中4~5時間ごとに30分ほどの食事休憩があり、自担当の作業がない場合は休憩時間になりますので、全員がずっと動きっぱなしというわけではありません。
漁がない日の過ごし方
漁がない日は、まぐろを釣るための道具整備に充てます。
作業は午前中で終わることがほとんどです。
当直以外の乗組員は、自由時間になります。
当直は自動操舵中の船に、危険が無いか周囲を見回します(ワッチ)。
遠洋まぐろ延縄漁師のやりがいや魅力を教えてください
航海が終わって、計算書(給与明細のようなもの)を見た時に、「稼いだな!」と実感するときですね。
一攫千金ではないですが、食いっぱぐれることはないかなと思います。
他にも2~3ヶ月に1回の補給で世界各地の港に行くことができます。
燃料と食糧の補給に入ります。港に入れば2~3日滞在し、新型感染症流行前は食事や買い物などを行ってました。
前もってオーダーしておくことで、代理店の人が欲しいものを運んでくれたりします。
辛いと思うことはありますか?
自分で選んだ道なので、あまりないですね。
ただ、今思い返すと辛い事も有ったと思うが、陸では思い描けない自然への感動や達成感の方が大きく感じ、振り返ると「あんな事も有ったな〜」と今では笑い話になりますね。
自分自身の成長における経験と受け止め、今から育っていく若者への良きアドバイスへと変換していけたら良いのではないかと思います。
船の雰囲気はどのような感じですか?
乗組員は外国人の船員が多く乗っていますが、年齢や国籍は関係なく全員で楽しく操業をしていますよ。
また、この船はインターネット設備が充実しているので、洋上でも家族や友人と連絡を取ることができます。
乗組員たちは、自分のベッドへテレビやDVDプレーヤー、本や漫画を持ち込んでいるので、休みの時は自由に過ごしていますね。
最後に漁師を志す方へメッセージをお願いします!
「大きい家を建てよう!」とか、「稼いで家族を幸せにしよう!」みたいな、将来に希望を持って働ける方、大歓迎です!ぜひ一緒に働きましょう!