揺るがなさとやわらかさ 風通しの良い水産の現場が未来を少しずつ変えていく

揺るがなさとやわらかさ 風通しの良い水産の現場が未来を少しずつ変えていく

  • 水産加工屋,
  • 宮城県,
  • 正社員

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宮城県石巻市と女川町にまたがり、牡鹿半島の付根に位置する内海、万石浦。
海苔と牡蛎の養殖棚がたゆたい、その朝は青く澄んだ空気と、静寂に包まれます。

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末永海産株式会社もこの湾の恵みを食卓に届ける水産加工会社のひとつです。今回お話を伺った末永寛太さんは、父親のバトンを引き継ぎ、今年10月に社長に就任しました。

末永家は、もともと代々万石浦で養殖業を営んできた生産者家系。末永さんの父親の代に創業し、以来30地域や漁師たちと共に歩んできました。2014年9月に新社屋と工場を新設し、今年8月からは仙台駅で商品販売を開始するなど、飛躍的な変化を遂げています。

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再スタートで心に決めたのは「戻らない」という覚悟

万石浦に面する旧社屋と工場は、他の水産加工会社同様、震災で大きなダメージを受けました。取引のあった生産者の筏は全て流され、海の状況も回復しない中、海産物そのものの生産量も震災前の半分以下に落ち込む状態が長く続いたそうです。

「以前と同じ仕事をしていたら、うちだけではなくこの業界が衰退していくという危機感がありました。生産者にも喜ばれ、なおかつ勝負が出来る、以前とは違う形の商売をしていこうと、社長含め3名でイチから経営を再開しました。」

なにもなくなった所からの再スタート。これを末永さん達は「第2創業」と呼び、今までの水産業にはない働き方、販売形態を模索する挑戦を始めました。

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水産業というと、朝が早く、体力勝負で、低賃金というイメージを持つ方が多い中、末永海産では水産会社では珍しいという月給制と、7.5時間の勤務体制、週休二日制を取り入れています。

実を言うと、この勤務体制を維持するのには大変な苦労をなさっているそうです。自然を相手にする海産物の収穫は天候や水揚げ量にも左右される上、それを一次加工し出荷する作業は毎日行われます。10月から3月までの牡蛎の収穫と、年明けから4月までのワカメの収穫が重なる時期は、特に仕事量が増大するそうで、末永さんご自身も休みを取りづらい「超繁忙期」になるといいます。

「経営再開する時に、震災前には戻らないと決めたんです。いまの水産業は365日働かされる時代ではない。働きにきたくなるような環境を整え、新しい柱を掲げて日々変化していかなくてはならないんです。」

確かなものは海のそばで海を知る人とつくられる

震災前、事業の柱となっていた一次加工の他に、年中販売できる加工食品を新しい柱に掲げた末永海産では、加工処理の効率をあげる為、大型機械を14台導入しました。安定した出荷量を保つことで「末永と付き合えばうまくいく」と漁師達に安心してもらいたい。代々養殖業という厳しい生業を受け継いで来たこの会社だからこその使命感かもしれません。

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「加工屋だけど、もっと海に近づきたい」

漁師や生産者とより近い関係を築き、その距離を縮めていく事で、確かなものを作っていけると、末永さんは言います。その名の通り春もまだ浅い頃に出荷される「春告げわかめ」も、漁師から教えてもらった知恵から誕生した商品です。何をいつどう食べたら最高に美味しいか、海を知り尽くした漁師との近さが、春先のわかめとしては日本有数の出荷量を誇る商品に繋がったと説明してくれました。

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支えるベテランと、受け継ぎ、変えていく若手のチーム力

今回募集をしているのは、こうした信頼関係の中、生産者たちが納めてくれた大切な素材を、新導入した加工機械を使って一通り出荷まで任せられる人材だということですが、

「食品に興味がある方が多いですが、海のことに関しては知識ゼロで入って来る人もいます。知識がなくても、とにかく素直に人の意見を聞き入れる柔らかさのある人がいいですね。これから今までとは違うことをやろうとしているのですから、やらされるのではなく、自分で考え、その都度やり方を柔軟に変えていける人がいいかな、と思います。」

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本社工場で働く社員は現在26名。震災前まで60代だった平均年齢も、今では30代後半〜40代まで下がりました。男社会というイメージの強い水産業界ですが、ここでの男女比は半々で、繊細な作業ができる女性の力も求められています。

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工場の別棟では常時十数名のパートが次々と水揚げされてくる牡蛎やホタテを剥く一次処理の作業を行っています。剥き作業は経験がものをいう特殊技術。海の側で生きてきたベテランの技で若い力を支えています。

これからの原動力となる若い人材を育てていきたいと語る末永さんは、社員の教育にも力を入れています。新人教育にあたるのは、震災前から社長とともに会社を支えて来たベテラン勢。作業だけではなく、会社の理念、役員の想い、今後の展望など、同じ方向を見て、引っ張ってくれる大先輩がいる事はなんとも頼もしいことです。

苦労をシェアすることで循環する思いやり

また、新しく入社する社員には、新しく導入した加工機械に触れるようにして、加工の流れを知ってもらう他、持ち場以外の作業も体験するようにしています。

「お互いの現場を知る事で、自分の持ち場の役割がはっきりしてきます。事務職が自分の発注した資材の行方を追ったり、製造のおばちゃんには催事場で販売をしてもらったり。大変な思いを共有することで、全ての従業員の思いが繋がっていることを確認してもらいたいんです。」

年1回は全社員で、売り場を見学にも行きます。仙台駅に堂々と並ぶ自社の製品や、老舗料理店でこだわって調理された牡蛎やホタテを目の当たりにすると、モチベーションもぐっと上がってきます。

「自分が作ったものがお客さんに届いて、口に入る。おいしかったーって電話や手紙を頂くと、私も思わず社員たちに見せてしまうのですが、そうするとみるみるうちに彼らの意識が変わるのが分かります。」

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「根っ子」はひとりひとりから始まる幸せの連鎖

ここまで、話を伺っていて気付いた事。

末永さんは、社員の数を数える時も、エピソードを話す時も、必ず「○○と○○と・・・」と、ひとりひとりの顔を思い浮かべているのです。

大変さもよろこびも、老若男女に関わらず共に感じ合い、新しい水産加工会社として旗を揚げるその中で、自然と育まれて来た風通しの良さとチームのような連帯感。

それはあの震災で、どうしようもない虚無感と苦しい決断を強いられたから末永海産だからこそできる「人を大切に思う強さ」なのかもしれません。

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「お客様の為とはいえ、自分達が幸せでなければいい商品は作れません。つくるよろこびを知り、思いを込めて作るものだからこそ、食べた人にそのよろこびを伝え、感動してもらえます。私たちが幸せになれば、生産者にも運送屋にも資材屋にも、皆に幸せを分けてあげられます。根っこはまず、自分が楽しくです。

そうなるためにやるべき事はやろう。楽しい思いをするためにはひとり一人が仕事や商品に対して責任を果たすことが、基本的なことですが、大事なことです。」

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分かち合える人たちと一緒に、海の恩と恵をつなぐよろこび

震災でなにもかにもが流されてからしばらくして、末永さんの叔父が筏を作り、万石浦に浮かべたそうです。これまで採れたことのなかったスポットながら、揚げてみると牡蛎の種がびっしりと付着していました。その種牡蛎から震災後初の水揚げを迎えたその時のことを、末永さんは今でも忘れる事ができません。

「あの湾が津波の威力を受け止めてくれたおかげで、私たちはあの日助かることができました。あの湾があったから、今もこうして恩恵を受けられる。ほんとうにありがたい恵みの海です。」

「恵みの海」

その静かな海の声に耳を澄まし、そのありのままの恩恵を食卓に届けるために、新しい水産加工会社としての道なき道に挑んでいる末永さん。漁師、生産者とタッグを組み、そして思いの通じた仲間とともに一緒に変化を楽しめる若い力を待っています。

 

(取材日:2015年10月12日 文:佐藤睦美 写真:Funny!!平井慶祐)

募集情報
募集職種 幹部候補となる製造スタッフ
雇用形態 正社員
給与 170,500円〜(大卒)
福利厚生 雇用保険, 労災保険, 厚生年金, 健康保険
仕事内容 現場作業管理, 生産整備オペレーター, 原料処理
勤務地 宮城県石巻市塩富町
勤務時間 8:00〜17:00
休日休暇 週2日
募集期間 2015年11月29日(日)~
その他 原料処理(牡蠣・ホタテ・ほや・わかめ等)
会社情報
会社名 末永海産株式会社
Webサイト http://www.suenaga.co.jp/
選考方法
選考方法 まずは履歴書をお送りください。その後、面接・作文試験を行います。

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