宮城県塩竈市桂島。日本三景の1つ「松島」湾に浮かぶ、人口150人ほどの小さな島です。島に小学校はなく、子供達は隣の野々島にある小学校まで船で通います。
夏になると、島の南部に位置する桂島海水浴場は人でいっぱいに。都会では味わうことのできない時間の流れが人を呼び、県内でも人気のスポットとなっています。
島までの交通手段は1日に7回、塩竈港から出る定期船。塩竈港の海の玄関である「マリンゲート塩釜」からは20分ほどです。
世代と性別が混ざりあう現場を、それぞれの思いやりが繋ぐ
今回仲間を募集するのは、桂島で海苔養殖を営んでいる浦戸合同会社。もともと個人事業主として海苔養殖を営んでいた6名とその後継者3名が、震災後、協力して立ち上げた会社です。現在は、役員と従業員合わせて7名。他にも、漁師の奥さんや島の若者などが仕事を手伝っており、20代〜70代までの男女幅広い世代の方たちが働いています。
取材をしたのは、10月中旬。
種付けされた海苔網を松島湾の漁場で育てる「育苗」が終わり、海に刺した竹に固定してある網を外す作業を行っていました。
島に住むベテラン漁師はいち早く出航して、若手が網を外しやすいように準備を進めます。若手漁師は島ではなく、塩竈本土に住んでいるため、出勤するのに時間がかかります。朝5:30に若手漁師全員で船外機に乗って島に出勤。2名1組のペアになって、力の要る網はずしや網上げの仕事に移ります。海から上げた網は、女性が中心となって広げ、干していきます。
そんな姿を取材していて印象的だったのが、ペアが入れ替わっても、持ち場が入れ替わっても、世代と性別を超えて自然と歯車が噛み合い進んでいく現場の様子でした。
「おもいやり」
それが現場の隠れた潤滑油となっていました。
島に住むベテラン漁師は、先に沖に出て仕事を始めます。
ベテランから若手への思いやり。
少しでもスムーズに仕事が進むように。
若手漁師は力の要る仕事をしています。
若手からベテランへの思いやり。
ベテランには段取りや船の操縦をしてもらうから。
女性陣は船から上げた網を素早く受け取り、干していきます。
女性陣から漁師への思いやり。
漁師は、再び海へ出るから。
漁師は、女性陣に感謝の気持ちを伝えています。
浜の隠れたヒーローはいつも女性だから。
誰に言われることもなく、相手を思いやる。年齢、性別、経験値の凸凹は自然と埋まる。作業を見ても、話を聞いても、そんな風に思わずにはいられませんでした。
先頭に立たず、チームをまとめる
そんな凸凹のあるチームをまとめるリーダーは、一体どんな人なのでしょうか。
浦戸合同会社の代表を務めるのは、46歳の内海洋倫(ひろみち)さん。リーダーを務めて今年で3年目になります。年配の漁師も多くいる中、「若い人に代表をやってほしい」という先代の思いから、直々に指名されたそうです。
「俺はリーダーっていう柄じゃないんだ。普通、リーダーだったら、今日はこの作業をしましょうってバシッと決めるだろ。俺はそういうタイプじゃないから、みんなのところに『今日は何しましょうか』って、聞き回っているんだ」
「お互い声をかけなくても、みんな作業の流れやその中での役割を自然と察している。ちゃんと話しているように見える時は大抵馬鹿話さ(笑)」
「自分はリーダーっぽい仕事はしていないよ」と笑って話す内海さん。みんなを尊重すること。そんなバランスを大事にする内海さんこそ、浦戸合同会社の代表に適格な人なのでしょう。
内海さんは周りからの信頼も厚く、若手からベテラン、女性陣まで、気持ちよく仕事ができる環境を作っています。
地域おこし協力隊で若手を育てる
浦戸合同会社に若い仲間が集まる訳は何なのでしょうか。その訳を聞いてみると、
「うちの会社は、塩竈市と協力して、地域おこし協力隊で若い奴らを募集しているんだ」
と内海さん。地域おこし協力隊とは、地方において、地域外の人材を積極的に受け入れる国の制度。塩竈市では、地域おこし協力隊の枠として、桂島と寒風沢島で漁師を募集しています。
「今すぐに人が少なくなって、困るわけじゃない。でも、熟練の技を持っている人がいるのは今だけなんだ」
内海さんはそう語ります。年配の漁師はだんだんと引退していきます。このままだと、彼らの一流の技術を引き継げるのはわずかな人だけ。それではもったいない。なんとかしなくてはと早い時期から人材育成を考えていたと言います。
2015年から正式に始まった地域おこし協力隊の募集。島内で廃校となっていた旧校舎を「ステイステーション」という新人漁師が住むことのできる家にリノベーション。市と漁師が協力して受け入れ態勢を整えました。
これまで浦戸合同会社では、2名が地域おこし協力隊として入り、任期を終えた後も、漁師として活躍しています。そして、今も新たに1人が地域おこし協力隊として働いているのです。
教わる。楽しむ。溶け込む。
地域おこし協力隊として働き始め、就業した漁師に荒井啓汰さん(27歳)がいます。漁師として働き始めて今年で5年目、地域の一漁業者として働きぶりが認められ、宮城県漁業協同組合浦戸支所の准組合員になりました。漁師になるまでは東京でサラリーマンとして働いていたと言う荒井さん。今では、すっかり日焼けして、漁師然としています。
「宮城出身だったので、塩竈市の地域おこし協力隊になることに壁は感じませんでした。実際にやってみると、漁師の仕事は大変ですが、1日目一杯働くところがとても良いと思いました。仕事も翌日に回すということはないですし、何としてもこれは今日やり切ろう、午前中には終わらせよう、というみんなの雰囲気が好きですね」
しかし、いきなり漁師になるには苦労もあったはずです。「心の中で通じ合う」ような浦戸合同会社の働き方にはどのように慣れていったのでしょうか。
「みんなに『校長先生』と呼ばれている漁師がいるんです。基本的にはその方が教えてくれます。教えてくれると言っても、俺がやるから見とけって感じなんですけど(笑)。他の漁師もこうしたらいいんじゃないかと丁寧にアドバイスをくれるので、自分にあったやり方を見つけることができましたね」
漁師の仕事はもちろん、島での生活もとても気に入っていると荒井さん。島内では、貴重な若者ということで引っ張りだこです。特にお祭りの時には大活躍。桂島には、秋頃にお祭りがあり、神輿を担いで島を周り、最終的には海の中に飛び込みます。
「島のおじいちゃん、おばあちゃんが顔を覚えてくれたりと、温かく受け入れてもらっているのが嬉しいです」
地域おこし協力隊のうちは、島の活性化も業務内容に入ります。島での暮らしに溶け込みながら、自分に合った働き方を探す。これは地域おこし協力隊ならではの働き方かもしれません。
若手が安心して働ける場所へ。
若い人が集まりつつある今、どのような会社を目指していきたいのでしょうか。
「人は宝物だ。若い奴が安心して働けるような場所にしていきたいな」
と内海さん。
荒井さんがきた当初は、保険や休暇制度も整備されていなかったそう。それまでは、必要がなかったから。
若い人が増えていくにつれ、若い人に合わせた職場環境を整えることが必要になってきます。そこで、荒井さんを中心にして仕事や福利厚生についての提案をしていきました。
年配の漁師もそれを拒否したりせず、じっくり話し合い、良いことであれば積極的に取り入れてきました。そんな柔軟さが浦戸合同会社にはあります。たとえ、あなたがどんな人であっても、仕事に真面目に取り組み、他人を思いやる気持ちを持とうと心がければ、きっと浦戸合同会社は受け入れてくれます。
さらに、生活のことで分からないことがあっても、すぐに市に相談することができます。
「桂島には、これまで積み上げてきた海苔養殖の文化があります。これは絶対に次世代に伝えていかないといけません。私たちの代で途絶えさせるわけにはいかないんです」
市役所には、そんな熱い思いを持った職員が待っています。
漁業に関わる人全員が誰かを思って仕事をする。浦戸合同会社が、桂島が、塩竈市が、そして、海があなたを温かく受け入れてくれるはずです。
浦戸合同会社で漁師になってみませんか。
(文=香川幹、写真=Funny!!平井慶祐)
※取材は2020年9月、撮影は2020年10月に行いました
募集職種 | 桂島での海苔養殖漁師(地域おこし協力隊) |
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雇用形態 | 契約社員 |
給与 | 月給20万~30万円 (※想定年収 3,000,000円 ~ 5,000,000円) ※試用期間は1ヶ月で、そのほかの条件に変更はありません。 |
福利厚生 | 社会保険完備 寮あり(廃校となっていた旧校舎を「ステイステーション」という新人漁師が住むことのできる家にリノベーション。市と漁師が受け入れ態勢を整えました。) |
仕事内容 | 1.漁業(養殖業務) 4月~10月:養殖筏(いかだ)の片付けや種付け準備作業 11月~3月(繁忙期):育苗や摘採(てきさい)作業 季節に応じた漁業活動を行い、地域の漁業を支えます! 2.島の情報発信 浦戸諸島の魅力を広く発信し、観光や移住希望者に向けた情報提供を行います。 3.移住交流支援 島への移住を希望する方のサポートや交流イベントの企画運営に携わります。 4.その他、市長が必要と認めた活動 地域のための幅広い活動に参加し、島の活性化に貢献します。 <働く環境とキャリア> 勤務時間(季節による変動あり) 繁忙期(11月~3月):6:00~22:00の間で7時間勤務 閑散期(4月~10月):5:00~13:00の間で7時間勤務(休憩1時間) ※漁の状況により、勤務時間が変動する場合があります。 将来のキャリア支援: 地域おこし協力隊員として雇用される期間中は、漁業の技術を学びながら、漁業権の取得を目指すサポートを受けられます。雇用期間終了後は、浦戸合同会社への入社が可能です。 住居の提供: 期間中の居住は、浦戸桂島ステイ・ステーション(宿泊施設)を利用できます。規定に基づく費用の減免制度があり、移住後の生活を安心して始められます。 |
勤務地 | 宮城県塩竈市桂島 |
勤務時間 | 週5日、1日あたり7時間勤務、基本午前6時〜午後2時(休憩含む) |
休日休暇 | 月平均8日 |
募集期間 | 2020年10月22日(木)~ |
その他 | ・漁の状況により、勤務時間が大きく変動することがあります。 ・地域おこし協力隊員(市の任期付任用職員)としての雇用になります。雇用期間終了後は、漁協のサポートを受け、漁業権の獲得を目指しながら、浦戸合同会社へ入社することができます。 ・期間中の居住は、浦戸桂島ステイ・ステーション(宿泊施設)となり、規定に基づき減免を受けることができます。 【資格・経験】 1、現在、塩竈市在住以外で、三大都市圏又は地方都市等(過疎、山村、離島、半島などの地域に該当しない市町村)に居住し、任命後に住民表を浦戸桂島に異動し居住できる方(活動期間中は浦戸ステイ・ステーションに居住することが可能です) 2、心身が健康で、かつ、地域協力活動に意欲と情熱を持っている方 3、普通自動車運転免許を取得している方、又は、隊員卒業までに取得見込みの方(AT限定可) 4、パソコン(ワード、エクセルなど)の一般的な操作ができる方 5、活動期間終了後に塩竈市においてのり漁師として就業し、本市に止まる意欲のある方 6、上述の1〜6までの規定にかかわらず、地方公務員法第16条欠格事項に該当しない方 7、未経験歓迎 |
会社名 | 浦戸合同会社 |
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住所 | 塩竈市桂島 |
選考方法 | TRITON JOBから応募いただきます ▼ TRITON PROJECTよりメールにて連絡をします ▼ TRITON PROJECT 公式LINEを追加いただき、チャットにてやりとりを開始 ▼ LINE内で、サポート窓口と電話での簡易面談 ▼ LINE内で、エントリーシートの提出をお願いします 1、第一次選考(書類選考) ・書類選考の上、結果を応募者に文書で通知します。 ※状況により、電話によりお話しさせていただくことがあります。 提出書類:地域おこし協力隊応募用紙 2、第二次選考 ・第一次選考合格者を対象に、塩竈市浦戸諸島にて開催する、「島ぐらし・就業体験ツアー」に参加していただきます。 ・「島ぐらし・就業体験ツアー」は選考試験を兼ねています。 (桂島のり養殖しま体験ツアーは午前中から午後まで1日を予定) ・詳細については、第一次選考結果通知の際におしらせします。 3、選考結果の報告 ・結果は合否を問わず、文書で通知します。 ・千句合格者は1ヶ月の使用期間を経て、正式に地域おこし協力隊として活動していただきます。 ・使用期間の最終週に面談を行い、本人の意思確認をしつつ正式な隊員としての合否判断をいたします。 |
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