「少ない人数で漁に出るのはきついべ。本格操業に向けてこれから回数出て行かなきゃいけないのに高齢化が進んでるもんですから。担い手を募集して『常磐もの』でもっと盛り上げて町も含めて発展していきてんだ。」と話すのは、本格操業への移行を準備する、久之浜漁港で漁を担ういわき市漁業協同組合の江川代表理事組合長。
最大の水揚げ量を誇った久之浜漁港
福島県いわき市の北部に位置する久之浜地区は、初日の出の名所としても有名な海から突き出た弁天島と朱塗りの橋がシンボルの美しい波立海岸を擁しています。また、山間部の大久川流域周辺は、化石の発掘でも有名でとても風光明媚な町です。
昔から漁業とともに暮らしてきた久之浜には、市内7漁業協同組合から構成されるいわき市漁業協同組合(以下、いわき市漁協)の中枢を担う久之浜支所があります。底魚類を対象とする底曳網漁業やコウナゴ等を対象とした船曳網漁業が盛んで、平成22年の漁獲量は約2,200t、漁獲金額は約7億円といわき市漁協で最大の水揚げを誇りました。
しかし、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故で大きな被害を受け、沿岸漁業は操業を自粛せざるを得ない状況に。それから、ガレキの回収と試験操業を行いながら、全魚種のモニタリング検査を行い、震災から10年以上経つ2021年9月から本格操業への第一歩を踏み出すことになりました。
けれど、新たなスタートを前に立ち塞がる課題があります。それは、漁師の高齢化と担い手の不足です。
「震災から10年経つと60歳の人が70歳、65歳の人が75歳になり、年齢的にかなり厳しくなってきた。久之浜の組合員の平均年齢は63歳で、後継者が不足しているんです。これからが再スタートなのに担い手がいないんでは、発展していかない。このままでは久之浜の暮らしを支えてきた歴史ある水産業が衰退してしまうと危機感を感じています。」と話すのはいわき市漁協の新妻専務理事。
「常磐もの」の復活を
かつては豊富な水揚げ量でいわき市漁協を引っ張ってきた久之浜支所。そこで揚がった魚たちは、いわき市で水揚げされた水産物「常磐もの」として、震災前から築地市場等の水産関係者の間で高く評価されてきました。
「久之浜を含むいわき市の沖合に位置する常磐沖は、親潮(寒流)と黒潮(暖流)がぶつかる潮目の海だから、プランクトンが豊富。それを食べる魚は栄養豊富で肉厚なんです。だから、『常磐もの』の魚は昔からおいしいと言われている。震災後に海を休ませていた分、資源量がかなり回復したから、これからもっと『常磐もの』を知ってもらってブランドの復活をしていきたい。」
本格操業への第一歩を前に、新たに担い手を募集することになった久之浜支所は、正組合員が60名、准組合員が10名の計70名で構成。高齢化が進んでいる一方、20代も所属しており、お互いがもつ知識や体力でそれぞれ助け合う人情味あふれる組合です。船は6tから47tと大きさが異なる計12隻の底曳網漁船と小型漁船があり、今回は、高齢化と人手不足が目立つ底曳網漁船の乗組員の募集となります。
「今回の募集は正直初めての取り組みなんです。手探りの状態だけど、でもなんとか一人でも多くの担い手を募りたいんです。」
真剣な思いが、江川代表理事組合長、新妻専務理事、そして漁師の方々から伝わってきました。
増加する資源量
久之浜の漁は夜中に始まります。おおよそ夜中1時に船出し、2時間半ほどかけて漁場に向かいます。到着すると、船頭さんの合図に合わせて海に網を入れ、2~3時間ほどかけて網をひき、船頭さんの2度目の合図で網をひき上げます。このとき、魚がどのくらいかかっているのかは船頭さんの腕の見せ所です。
ここからが漁師の本当の仕事が始まるのだといいます。それは魚の選別です。年間で約150種類ほど獲れる魚の種類は季節ごとに異なり、1シーズンでおおよそ50種の魚がかかります。その魚を一つ一つ選別し、鮮度のいい状態で氷水が入った樽にそれぞれ入れていくのです。
「太陽下では鮮度が悪くなっちまうから選別は素早くして氷漬けしないといけない。」と漁師は選別の大切さを教えてくれました。「でもそれ以外はたばこ吸おうが、本を読もうが、寝ようがなにしててもいい。船長は寝たらだめだかんな(笑)」とも。
漁師たちは底曳網の楽しさはなんといっても漁獲量だと言います。網をひく場所や時間によって、ある船は1tでも、ほかの船は2tという結果もあるなど、経験や知識によって獲れる魚の量に差が生まれるため、より多く獲れたときは、人一倍の喜びを感じるそうです。そして、震災前と比べて資源量が格段に増加しているこれからは、より一層獲る楽しみが味わえるだろうと新妻専務理事はいいます。
「震災前は今の10分の1くらいの漁獲量だった。だから1泊泊りがけで漁に出るのがメインだったんです。震災以降の試験操業により、魚の水揚げ量が一定程度制限された分、資源量がものすごい回復したんです。一回で魚ってこんなに入んの?て思うぐらい入るときも結構あるからね。試験操業によって、海のことを考えるのも大事と考えさせられた。これからは朝出て、午前10時ごろには戻るっていう比較的操業時間が短い日戻りのやり方で漁をやっていきましょうって今はなっているんです。」
まずは1週間のおためし体験から
「最初っから全部やれなんてそんなこと言いません。ちゃんとお試し期間っていうのを用意してます。」
初めての募集にも関わらず準備がしっかりと行き届いているのは、いわき市役所の農林水産部水産課と連携しながら、しっかりと親身になって未来の新しい仲間たちを迎え入れる気持ちが強いからではないでしょうか。今回、1週間の漁業体験ができる期間を設けています。日曜日に開始し、金曜に終了するスケジュールです。
第一回 令和3年10月3日(日)〜8日(金)
第二回 令和3年10月17日(日)〜22日(金)
第三回 令和3年10月24日(日)〜29日(金)
まずはオリエンテーションから始まり、それから船に乗って漁業体験したり、漁業全般の流れを説明したりと未経験者でも無理なく始めやすい内容です。また、衣・食・住も整えられており、徒歩約7分の位置に食事付きの宿泊所や漁業に必要な衣類などもしっかり準備しています。
「お試しのときは、わかんないことが多いのはしょうがない。初日はわけわかんないと思うからそばで見ててもらいながら次の日に、ほれ、これはひらめだ。ほうぼうだ。ってちゃんと説明する。意地悪なやつはいねーから(笑)。徐々に手出せる人にはやってもらって。あとは、だんだん覚えてくる。まずは体験してもらって、就業したいんだという意欲のある方が1人でも多くいてもらえればうれしいね。」
お試し期間を通じていわき市の底曳網漁に興味をもってもらえたら、さらに3ヶ月の研修を経て、1年後に准組合員、そして正組合員とステップアップが待っています。
「組合員には、新規で漁師になった人もいるんです。最初は船乗ってみないかって誘われて始めたんだけど、今は正組合員になって一生懸命やってるよ。話聞くと、楽しい、面白い、やりがいあるって言って目が生き生きしている。」
「常磐もの」の復活に向けて新たな一歩を踏み出す久之浜支所で一緒に新しい歴史を築いていきませんか?
文=くさのなお 撮影=吉田暁誠・大平啓貴
※取材は2021年6月に行いました。
募集職種 | 漁師 |
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雇用形態 | 正社員・フルタイム |
給与 | 月収20.17万円~ (研修期間3ヵ月)月給201,700円 ※東北運輸支局管内における (研修後)月給201,700円〜 |
福利厚生 | 船員保険加入(健康保険、雇用保険、傷害保険、 労災保険、船員年金など) |
仕事内容 | 底曳網漁(水揚げ、魚の選別、陸での網修理など) |
勤務地 | 福島県いわき市 |
勤務時間 | 午前1時〜9時頃まで(水揚げによって変動あり) |
休日休暇 | 毎週土日休み(中央卸売市場のカレンダーに基づく)、荒天日、祝日、年末年始休業あり |
募集期間 | 2021年08月01日(日)~2021年08月31日(火) |
その他 | 7,8月は禁漁期のため、陸での作業となります。 |
会社名 | いわき市漁業協同組合久之浜支所 |
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住所 | 福島県いわき市久之浜町 |
Webサイト | http://fsiwakigyokyo.jf-net.ne.jp/ |
選考方法 | ※新型コロナウィルス感染拡大防止措置として、現地対応(面談・研修)の受け入れ時期を慎重に判断させていただいております。お電話やビデオ電話などでの事前の説明や相談なども行っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ 電話もしくはビデオ電話にて面談 ▼ 現地面談・ おためし漁師体験(1週間程度) 乗船する船は募集選考後にご相談の上決定します ▼ 現地研修(3週間程度) ▼ 内定 |
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