船上で力強く網をあげる漁師さんの勇ましい姿。
豊漁だったときの漁師さんの笑顔。
一緒に朝ご飯を食べているときのおしゃべりの様子。
漁師さんが見せる多彩な表情には、人を惹きつける魅力がある気がします。ここで一緒に漁師をやりたい。「松島網」はそんなふうに感じられる船です。
「松島網」は宮城県気仙沼市にある熊栄産業という会社の漁業部門。熊栄産業は、水産加工部門も併せ持ち、漁師自ら加工場を持つことで、生産から販売まで一貫して行える体制を作っています。
松島網が営むのは定置網という漁法。大きな網を海に仕掛け、潮に乗ってやってくる魚を獲ります。季節によってさまざまな種類の魚を獲りながらも、他の定置網と違い、6月から11月までは、イワシに特化した漁を行っています。松島網が獲ったイワシは、気仙沼に入港するほとんどのカツオ船に餌として積み込まれています。20年以上生鮮カツオ水揚げ日本一を誇る気仙沼を支える影の立役者といえるのです。そんな松島網が今回募集するのは一緒に船に乗る漁師。作業の様子や会社の魅力を探るべく、船に乗せてもらいました。
さあ、イワシを獲りにいざ海へ。
集合は朝の4時。集合時間が近づくにつれ、漁師がぞろぞろと港に集まり始めます。全員で15人。あ、社長がやってきました。
おはようございます!
「はい、おはよう、今日はよろしくね」
熊栄産業の社長の熊谷友孝さん。社長でありながら、毎日船に乗り、水揚げを行っています。他の漁師が出港の準備をする中、社長と大謀(定置網では船頭のことを大謀(だいぼう)と呼びます)は何やらタブレットを覗き込んでいます。
タブレットに映るのは、海況予測や天候、湿度など20項目以上の気象データ。このデータを元に、その日の作業内容や時間が決められます。
「やっぱり船員の命を預かってるわけだから、風とか雨が強い日に作業させたくないじゃない。何時からは風が強くなりそうだから、この日はここまでかなとか、安全第一で決めてるよ」
みんなの準備が整うと、船外機に乗り込み本船へ。さあ、出港です。
取材を行った時期(7月)は、松島網はイワシ網を海に入れています。狙うのはカタクチイワシ。わずか10センチほどの大きさで、カツオ一本釣りの餌として重宝されています。カタクチイワシを獲るための網の目は非常に細かく、水の重みで網揚げも難しい。また、網も痛みやすく、頻繁に網直しをするなど細かなメンテナンスが必要になります。
定置網という漁法の性質上、マイワシや太刀魚などカタクチイワシ以外の魚も網に入ります。この日はなんとメジマグロ(クロマグロの幼魚)も。網を揚げるときの漁師たちの俊敏な動き。チームワークの良さが光ります。
この日は潮の入れ替わりの時期で魚があまり入らず、漁としては最悪の日だったそう。昨日はトン単位で獲れたものが、今日はほとんど入らない。思い通りいかないことが漁業の醍醐味でもあり、難しさでもあります。
四つの網を揚げ、とれたイワシを生簀に移したら、一度港に戻ります。朝ご飯の時間です。港のそばの建物が松島網の食堂。その日獲れた魚を中心に、栄養たっぷりのご飯をみんなで一緒に食べます。ご飯を作ってくれるのは、ゆきこさん。
漁師みんなのお母さんのような存在です。美味しいご飯を食べてみんなの体力は全回復。
漁師のみなさんは食べるのが早い。食べ終わるのはライターである私がびりでした…笑
朝食後の作業は日によって違います。網のメンテナンスをしたり、カツオ船にイワシを積み込む作業があったりします。
どんな時でも支え合う。カツオ船と松島網の密接な関わり。
続いて、熊栄産業の事務所にお邪魔し、社長である熊谷友孝さんにインタビュー。会社のことを語る上で、切っても切り離すことができないのがカツオ船との関係です。気仙沼に入港するほとんどの船は、松島網で獲れたイワシを積んで漁に出ているのです。
「ずっと昔からイワシ網をやってるよ。でもイワシ網って目立たない存在。黒子的な存在なのさ。だからほとんどの人がその存在を知らない」
目立つことは少なくとも、気仙沼の漁業、カツオの一本釣りにとってはなくてはならない存在です。そのことがはっきりしたのが、2011年に起きた東日本大震災。気仙沼の漁業は壊滅的なダメージを被り、熊栄産業の工場も流されました。そんな状況の中、宮崎県や高知県のカツオ船からは真っ先に連絡が入ったといいます。
「一番最初に連絡くれたのが、彼らなわけよ。『どうにか頑張ってくれ』って。もちろん頑張る気でいたんだけど、やっぱり嬉しいよね。西日本からは大勢の記者がやってきて、新聞にも大々的に掲載してもらった。高知や宮崎の人たちは、俺らの存在あってのカツオ一本釣りということをよく知っている」
被災した3ヶ月後には、イワシ網を入れ始めた松島網。家や木々が流され、海の中は瓦礫でいっぱい。
「そんな海に網を入れることは阿呆のやることだよ。でも、やった。俺らにしかできない仕事だって。他の漁師が誰も獲ってないんだから、普通の定置網をいれてもいいわけさ。それでもみんなでイワシ網を入れることを決めた」
「震災後、一番最初に海で仕事するってのは大変なことなんだよ。みんな怖い。今まで最前線でバリバリ働いてた漁師がどんどん海から離れていっていた。当時、ほとんど休みはない。網起こす。船が来る。イワシを積む。瓦礫を片付ける。1日疲れて帰る。ご飯はゆきちゃんが作ってくれたおにぎりを船上で食べる。そんな日々が続いていた」と話します。
あるとき、高知県や宮崎県のカツオ船から賞状が届きました。
「そこには、カツオ船から『我々の命の糧である』って書かれていた。これをもらった時はみんな拍手さ。俺らにしかできないことを成し遂げたんだって気持ちが強かった。あの想像もできないほどの世界を一緒に乗り越えた。だからうちの船は、結束力が強いし、使命感をもって仕事している人が多いのさ」
社長は松島網とカツオ船の関係を相互補完関係と呼んでいます。カツオの初水揚げの時には、必ずタクシーでカツオを熊栄産業の事務所まで持ってきてくれる。「カツオ船との密接な関わりはこれからもずっと続いていく」と、社長は嬉しそうでした。
やる気があって、真面目な人ならきっと馴染める。
今回、新しく入ってもらう漁師さんは、一体どんな仕事をすることになるのでしょうか。
「新人だからこの仕事をやれっていうのはないよ。いろんな人がいろんな仕事をやっていて、誰が何やるかは決まっていない。やっぱり漁業は仲間仕事。チームワークの問題だから」
松島網がなにより大事にしているのがチームワーク。昔はマグロ船の船頭クラスだった人や、巻網船に長年乗っていた人など、松島網には本当にいろんな人が乗っています。
「うちは震災でいい人がガチッと集まった分、すこし世代交代が遅れた節がある。今の幹部の人たちの技術力は本当に高い。震災の時は、網を自分たちだけで作ってた。だから、新しく入る人には彼らの技術を盗んでほしい」
松島網の漁師さんはベテランの方が多い。彼らは決して技術の出し惜しみをしないし、教えを請えば喜んで教えてくれる。だから、今はまだ漁業や海に馴染みがなくても、やる気がある人、素直な人なら馴染みやすいと、社長は話します。
「今は、環境的にはとても恵まれてるんじゃないかな。若くてやる気のある人が成長して、どんどん幹部になっていってほしい。でもうちはみんな動きいいから、幹部候補がいっぱいになって、すこし困っちゃうなあ笑」
松島網の船は、操業中でも会話が途切れることはありません。「そっち、もう少し引っ張ってみ」「わかった!」。小さな連携の積み重ねが、船全体の良いチームワークを作り出しています。
どんな人でも、松島網のトリコになってしまうと思います。ここでならきっと楽しく漁師ができる。そう感じられる素敵な船です。一緒に船に乗ってみませんか。
(文=香川幹、写真=Funny!!平井慶祐)
※取材は2021年7月に行いました。
募集職種 | 漁師 |
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雇用形態 | 正社員・フルタイム |
給与 | 月収18万~25万円 試用期間一ヶ月 水揚げに応じて成果報酬あり |
福利厚生 | 社会保険完備, 賞与あり, 水揚げによりボーナスあり, 朝食昼食支給, 温泉旅行あり, 住まいは気仙沼市移住・定住支援センターに相談可能 |
仕事内容 | 定置網漁業乗組員 |
勤務地 | 宮城県気仙沼市 |
勤務時間 | 3月下旬~4月:8:00~14:30、5月~10月:5:00~14:30、11月~1月:5:30~14:30、2月~3月下旬:9:00~17:00(自社冷凍加工場勤務の場合) ※雨天・時化の場合は早上がりあり |
休日休暇 | 魚市場の休みに準ずる(月6日程度、GW・年末年始休みあり)、悪天候時 |
募集期間 | 2024年05月01日(水)~ |
会社名 | 熊栄産業株式会社 |
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通販サイト | https://kumaei.com/ |