舞台となるのは日本を代表する景勝地、松島湾に浮かぶ浦戸諸島のひとつ、野々島。
ここで新たに始まったプロジェクト「松島オイスターリゾート計画」は、松島湾の地形的特徴と地域資源を有効活用し、「潮間帯養殖」という牡蠣養殖を導入することで、輸出に適した世界で戦える牡蠣を生産しようとしています。また、牡蠣養殖を主軸に観光・漁業者の担い手育成などを行う複合的な内容です。
プロジェクトを推進するのは、宮城県石巻市にある水産加工会社 株式会社ヤマナカの代表取締役 髙田慎司さん。加工や流通、香港や東南アジアなど10カ国での販路開拓のみならず、輸出支援や海外でのブランディングまで手がけています。牡蠣の輸出ノウハウを持っている企業が養殖にまで関わる理由についてお伺いしました。
「商人という生産者にも消費者にも近い立場から、水産業のあらゆる変革に挑戦してる中で、マーケットのニーズに合わせた牡蠣の養殖技術の導入を推進することになったんです。
浦戸諸島に新しく導入しているのは欧米で行っている干潟での潮間帯養殖法です。既存の牡蠣養殖のやり方を否定するものではなく、既存のやり方と両立させることで、生産者が複数の販路を持つことができ、海外の競合とも戦えるようになります。県内の生産者さんとも連携し、商流に直結した牡蠣を育てることで、次世代にバトンを渡せるような一次産業にしていきたいと思ってます。」
海外市場のニーズに合った養殖法
宮城県のカキ生産量は広島に次いで全国2位を誇ります。牡蠣の生産地である松島湾の島々では、高齢化や担い手不足が深刻化し、牡蠣養殖の存続の危機に直面しています。また、宮城県内で盛んに行われている垂下式の牡蠣養殖は、通年海中に浸かったままなため、ハードな空輸に耐えることができず輸出中に口を開けてしまいます。増大する海外からの需要に対応しきれていないのが現状なのです。
そこで育て方を変える必要があり、牡蠣を鍛え上げ、貝柱を太くするため、バスケットを用いり潮間帯で干出させる「潮間帯養殖」を導入しました。潮の干満を利用し、適度な干出と動揺を与えて養殖します。厳しい環境下で養殖することで、生存期間が長く、貝柱の大きな牡蠣が育つのです。
従来の養殖方法で育った牡蠣が、海外の需要に対応しきれない理由はもう一つあります。サイズです。
海外で需要のある牡蠣のサイズは50グラムほどと小さめ。サイズが大きなものほど高値がつく日本とは対照的です。
2050年、日本人口は1億人近くまで減少する見込みですが、世界人口は100億人に届くといわれています。そして、海外各国から日本の食へのニーズは日々大きくなっています。今のままでは安定した輸出が難しかったことから、「マーケットイン」の養殖を徹底し、干潟での潮間帯養殖を導入し、小ぶりで強い牡蠣を養殖することにしたのです。
海外市場のニーズに合致した牡蠣養殖モデルを普及させ、稼げる水産業の実現を目指していきます。
再び、漁師の道を歩む
養殖施設の管理をしてくれているのは浦戸諸島・野々島の牡蠣漁師、鈴木宏明さん。
「髙田さんから話を持ちかけられた時は、漁師を辞めようと思っていたのでお断りしたんです。でも、彼の熱意に押し切られて、島の漁業を残していくためになにかできるならと思ってね。あと2年だけ、協力することにしたのさ」と、笑いながら髙田さんとの出会いを振り返ってくれました。
「島内では高齢化や担い手不足が深刻化してる。島民は70人しかいなくて、漁師は自分とあと1人だけ。牡蠣養殖が消滅する危機がすぐそこにやってきている。この事業には島の産業を次世代に残せる可能性があると思ってます。地域一丸となってこの事業に取り組むことで、島の活性化に繋げられるといいよね」
宏明さんの横で、少年のように目を輝かせながら成長した牡蠣を手にしていた髙田さんが今後の展望を聞かせてくれました。
「このプロジェクトは新しい養殖方法の導入、海外輸出に止まるものではありません。輸出が当たり前の一次産業にして、次世代の担い手にとっても魅力的な稼げる水産業にしていきたい。松島湾の地理的特徴(干潟)を活かして、牡蠣の収穫・実食体験も提供する予定です。
牡蠣養殖を通じて離島の活性化を目指して、観光事業や地域の担い手育成にも注力したいと思っています。シーカヤックを活用し、海上で牡蠣を食べられるアクティビティや松島湾が一望できるレストランの建設も構想中です。
この場所で新しいことに挑戦させてもらっているからこそ、牡蠣養殖をハブとして、地域に人を呼び込み、浦戸諸島の活性化に貢献したいんです。」
2021年に農林水産省が主導するGFP産地の宮城県第一号として認定を受けて実施しているこの事業。観光事業や担い手育成事業と連動させながら、浅海漁業の振興と交流人口拡大を推進し、日本国内におけるグローバルスタンダードな牡蠣の一大生産地を目指しているのです。
立ちはだかる山は、高ければ高いほどいい
2021年11月、2020年から始めた実証実験で育てた牡蠣が初出荷の時期を迎え、塩竈市市政80周年に合わせて、牡蠣の初出荷を記念した輸出出発式を行いました。香港・シンガポール・ロシアへの3カ国へ輸出されました。海外市場のニーズに合った養殖法で育てられているため、国際競争力が高く、すでに注目を集め始めています。
また、このプロジェクトを拡大させていくために、牡蠣の輸出に特化した新会社「日本養蛎合同会社」を設立し、輸出の強化も図っています。
スタートしたばかりの松島オイスターリゾート計画。まだまだ解決しなければならない課題は山積みで、事業を推進していくために求められるものは多いかもしれません。しかし、新たな事業を創り出すということは大きなやりがいとなって自分自身に戻ってくるのではないでしょうか。
一次産業・地域活性・観光事業などに興味がある方、そして何よりも髙田社長の熱い想いに共感し、地域の産業を残していくことに一緒に挑戦してみませんか?地域産業の継承とマーケットインでの販路拡大が叶う日を、自分自身の手で築けるチャンスがあります。
(※1)GFPグローバル産地
Global Farmers / Fishermen / Foresters / Food Manufacturers Project の略称。農林水産省が推進する日本の農林水産物の輸出プロジェクト
募集職種 | 漁師 |
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雇用形態 | 正社員・フルタイム |
給与 | 月収20万~25万円 |
福利厚生 | 雇用保険, 社会保険完備, 住宅手当 |
仕事内容 | 牡蠣養殖, 沿岸/養殖漁業, 養殖漁業 |
勤務地 | 宮城県宮城県塩竈市 |
勤務時間 | 8:00〜17:00 1時間半の休憩あり(作業内容により変更あり) |
休日休暇 | 週休2日制 |
募集期間 | 2021年10月01日(金)~2022年05月29日(日) |
その他 | <仕事内容> 『松島オイスターリゾート計画』に関する業務。主にはオイスターファームの管理、オイスターツーリズムの提案、漁師の新しい働き方の提案となります。 |
会社名 | 株式会社ヤマナカ |
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住所 | 宮城県石巻市幸町1-38 |
Webサイト | https://www.yamanaka.co/ |
Facebookページ | https://www.facebook.com/Yamanaka-Inc-1589833271328037 |
選考方法 | ※新型コロナウィルス感染拡大防止措置として、現地対応(面談・研修)の受け入れ時期を慎重に判断させていただいております。お電話やビデオ電話などでの企業説明や相談なども行っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ 電話もしくはビデオ電話にて面談 ▼ 現地面談 現地研修(1週間程度) ▼ 内定 |
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