石巻魚市場のすぐ近くにある渡波海水浴場は、市街地にも近く、海水浴、花火、BBQと、石巻市民にとって一度はお世話になったことのある思い入れのある場所。
そんな海水浴場も、2011年の東日本大震災で砂浜が流出し、閉鎖。
防潮工事などを終えて再オープンができたのは、7年後の2018年のことでした。
渡波海水浴場に子供たちの楽しそうな声が戻ってきたその年の夏。
同じく石巻に“戻ってきた”人がいます。
海水浴場の目の前に会社を構える水産加工会社「株式会社 布施商店」の4代目・布施太一さん(38歳)。東京の大学を卒業後、大手商社の営業マンとしてバリバリ働いてきた太一さんが、曽祖父の代から110年続く会社を担うべくUターンしたのは、東日本大震災がきっかけです。
「当たり前だと思っていたものが、一瞬で吹き飛んだ。今まで家業とか、故郷というものに特別思い入れはなかったんですけど。当たり前じゃなくなってはじめて自分のアイデンティティの大事なところがここにあるんだということに気づいたんです」
震災復興に関わる仕事ができないかと東京で悶々と考える中で、早々と再興を決めた父・三郎さんの姿が、太一さんを動かしました。
「やっぱりそこで、家業に対する父の並々ならぬ思いを感じましたよね。一方で、父は当時61歳。再興するにも10年、20年先を見据えなくちゃいけないわけです。そうなったときに継ぐ人がいないと成り立たない。もうこれは見て見ぬふりができないぞ、と腹をくくりました」
自身が切望していた海外赴任をやり終えたあと、商社を退職。
2018年7月にUターンをし、布施商店に入社をしましたが、水産業の知識もなければ、事業内容もはじめて知ることばかり。ゼロからのスタートとなりました。
「子供の頃から、会社を継いでほしいと父は一度も言わなかった。自分自身、家業には興味がありませんでした」
「当たり前」の大切さが
教えてくれたこと
戻ってきてしばらくは、父と喧嘩を繰り返す日々が続きました。
「漁獲量の減少に、食卓の魚離れ。震災前から水産業界は元気がありませんでした。それに輪をかけて、あの震災です。今までと同じやり方じゃ到底立て直せない。今まで自分は営業マンとして合理性を重んじてきたんですけど、父の経営の中ではどうしても人情とかそういう非合理があるんです。会社として何がやりたいのか、どうして新しいことをしないのか……このままじゃ会社は成長しないと、ずいぶん偉そうなことを言っては父とぶつかっていました」
自分に何ができるのだろうか。
どうして父は、自分の意見を聞いてくれないのだろうか。
悩み続けるなかで、中小企業会社向けの経営セミナーに参加。そこで言われたことが、今までの考え方を覆しました。
「初日にめちゃくちゃ怒られたんです。何気なく携帯を見ながらご飯を食べていたんですけど、『あんたがつくる食品は絶対食べたくない』と言われてしまって。『いただきます』も言わず、食べ物に感謝もしない、そんな姿を見られてたんですね。それを指摘されて、頭をぶん殴られたような気持ちになりました。ほかにも、親への感謝が足りないと指摘されました。今まで自分が『当たり前』と思っていたことが、実はいろんな人の努力のもとにあったことに気づかされたんです。そこから徐々に父親と話すように心がけました。会社の歴史、父の苦労話、たくさんの話を聞きました。はじめて聞く話もたくさんありましたし、これは自分が責任を持って会社をやっていかないとならないぞ、と改めて思いました。そういう姿勢になってはじめて、父も弱音を吐いてくれるようになったし、ようやくなんでも相談できるようになりました」
すぐに会社は変わらない。コツコツ地道にやることをやっていくだけーー
太一さんは、2021年1月に布施商店の4代目に就任。
この数年で社員も若返りをはかり、会社はいよいよ新しいステージにさしかかっています。
最高の仲間と一緒に
「おいしい」をつくる
ここで改めて、布施商店の紹介をします。
会社の売り上げの半分は、目の前の石巻魚市場で買い付けした魚を市場やスーパーに流通させる鮮魚卸。残りの半分は、家庭や飲食店でも扱いやすいようにフィレにおろしたり、下処理をして冷凍保存をするといった加工の仕事。最近では調理加工したものを商品化したり、ECサイトを立ち上げるなど、消費者のニーズに合わせた新しい挑戦も行っています。
どんなに加工度が高まっても、品質に妥協はしません。
主力選手の鱈(たら)をはじめ、手さばきによる鮮魚加工を大切にしています。
「機械を否定しているわけではないのですが、機械でさばくと大量の水をあてることになるので、その過程で傷んでしまうんです。品質を落とさず、お客様が求める価格に応える。そのためにこだわっている部分でもあります」
加工場を見渡すと水産加工会社では珍しく、外国人実習生の姿がありません。スタッフも10名程度と少なめです。
「なるべく実習生に頼らずに頑張りたいんです。自分は社員やパートの方をただの従業員ではなく、“パートナー”と考えています。コミュニケーションを含めて、一緒に成長していきたいんです。みんながいきいき働いてくれたら、きっといい力を発揮してくれる。もちろん、この人数がベストではありません。会社として生産力を高めていくために、新しい仲間が必要なんです」
残業を減らし、休日も徐々に増やすなど、労働環境の改善にも力を入れました。そして何よりも“雰囲気の良さ”が、布施商店の一番の魅力。職場には笑い声が溢れ、働くスタッフは「仕事が楽しい」と声を揃えます。
入社3年目の小倉妃梨さん(21歳)もそのひとり。
地元の高校で調理を学び、卒業後は東京のホテルに就職しましたが、2019年にUターン。たまたまアルバイトを募集していた布施商店で働きはじめたことをきっかけに、社員登用されました。
小倉さん曰く、布施商店は「とにかく最高!」なんだとか。
「ただ魚をおろすだけじゃなくて、調理にも携われているので考えるのが楽しいし、人間関係も最高です。困ったことがあってもすぐになんでも相談できます。自分にとっては工場長の存在も大きいです。いつもみんなが楽しく仕事ができるように盛り上げてくれるんです」
小倉さんをはじめ、スタッフみんなが絶大な信頼を置くのが、工場長を務める浅利卓也さん(41歳)。震災前そして震災後と、会社の過渡期のど真ん中で、常に現場をまとめあげてきました。
「若い子たちの成長は見ていて楽しいです。この数年で現場は若返ったし、チームワークができてきました。私自身、入社して15年になりますが、今、心からこの会社で一緒に仕事をしていきたいと思えるんです。社長は誰よりも頑張っているし、考え方がいつも光ってる。ちょっと優柔不断なのがネックですけど(笑)。それだけいろんな視点から物事を考えてる証拠だと理解しています。これからいろんなおもしろいことを一緒にやっていきたいし、きちんと販売能力もあげて、現場もそれに応えられるようにしていきたい」
実は太一さん。
社長に就任後、思い切って仕事をどんどん社員に任せるようにしたそうです。
その結果、社員が自発的に行動でしてくれるようになり、今では会議も社員で回してくれるそう。うちの社員はすごいんですよ、と自慢げに教えてくれました。
「やっぱりね、自分ひとりが一生懸命やってもできることって1.5倍くらいです。でも社員一人ひとりがやる気になって、1.1倍ずつ頑張ってくれる社員がたくさんできたほうが、会社に与える影響力って大きいんですよ。会社にとって、すごい底力を持っているんです」
自分ひとりでは何もできない。でもみんなの力を合わせたら、できることは増えるはずーー
会社の経営理念や10年ビジョンも社員のみんなに相談して考えました。
「これはうちの社員が描いた10年後のビジョンのイラストです。会社の前の海で、地びき網体験をやったり、移動販売でお魚を届けたり、なぜかリーゼントの人が働いていたり(笑)。こういうのを全部うちの会社でできたらいいね、ってみんなで考えてるんです。やっぱり地域があっての仕事なので、地域を盛り上げる仕事を、“海”という観点でやっていけたらおもしろいなと」
目指すは海の事業全般を手がける総合笑社?
そんな未来を一緒に描けるのも、布施商店で働く楽しみのひとつかもしれません。
布施商店だからできる
最高の昼休みの過ごし方
今後会社として力を入れていきたいのが、ネット販売を中心としたBtoC事業。
会社の発信ツールとして、そして石巻の水産業のことや海産物を知ってほしいという思いのもとはじめたのが、You Tube「仲買人タイチ」です。
動画では布施商店の商品PRにとどまらず、あるときは世界一長い石巻魚市場を全力疾走し、またあるときは漁師の船から生産現場の様子をお届けするなど、地域の魅力を余すところなく紹介しています。
ついにYou Tubeまで開設してしまった太一さん。
いつも全力で動画配信するその姿を、社員のみなさんもこっそり応援しているそうです。
そんな「仲買人タイチ」のロケ地として幾度となく登場するのが、会社の目の前にある渡波海水浴場。
ここは、布施商店の若手社員にとっても最高の休憩スポット。のんびりお昼ご飯を食べたり、キャッチボールをしたり、カバティをして遊んだり(!?)。休憩時間は笑い声が絶えません。
この海水浴場が再オープンしたあの夏。
目の前の小さな水産加工会社に戻ってきたひとりの男性が、たくさんの若者の人生も変えようとしています。
株式会社布施商店。
ここは、海産物の流通の「はじまり」の場所。
そして、新しい海の物語が「はじまる」ワクワクする職場です。
ここからまた、100年先へ向けて。
一緒に新しい歴史をつくっていきませんか?
(写真提供=布施商店、文・撮影=高橋由季)
※取材・撮影は2022年7月に行いました。
給与 | 17万~40万円 ※応募者の経験や能力値、年齢に合わせて、初年度の給与案をご提示させていただきます。 ※賞与 年2回 ※昇給 年1回 (想定年収例) 40代前半・中途12年目:430万円 30代後半・中途7年目:400万円 20代前半・中途1年目:270万円 |
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勤務地 | 宮城県石巻市魚町3-4-13 |
休日休暇 | 年間100日(基本日曜休。シフト制で月の休みは8~9日程度/GW、お盆、年末年始休みあり) |
その他 | <募集職種> ①石巻のおいしい水産加工品の製造スタッフ、及びリーダー候補(製造部) ②石巻のおいしい水産品を日本全国や世界に販売していく営業スタッフ(営業部) ※営業スタッフについては水産加工の経験次第で最初の3か月~半年間は製造スタッフとして研修を行う場合があります。 <① 製造部の仕事内容> 1. 水産物の一次加工 包丁を使って魚を捌きます。主にさばくのは、マダラ、ヒラメ、スズキ、マダイ等。包丁を触ったことがない人の方がクセがついていないので、うまくなることが多いです。大事なのは手を切らないこと。 2. 二次加工品の製造 タラフライや、刺身などの製造を行います。1. の一次加工に比べて繊細な技術や、原料の管理・準備などもありますが、調理工程の技術やノウハウが身につきます。 3. 水産加工品の開発 新しく販売していく二次加工品の開発を行います。営業メンバーと一緒に商品開発を行います。プロのフレンチシェフがアドバイザーについているので、本当に美味しい商品が出来上がります。 4. 製造部の生産性改善 製造スタッフ全員で生産性の改善を行います。弊社が取り組んでいるのは、3S(整理・整頓・清掃)プロジェクトで全社プロジェクトとして、実行していきます。必要なのは、社内のスタッフをまとめていく力で、個人の力量だけではなく、チームをまとめる力が高い社員は評価していく会社です。 <② 営業部の仕事内容> 1. 弊社商品の販売戦略の立案 弊社商品の主力であるマダラやヒラメ、スズキ等を、どの業種に販売していくかの戦略を立案し、実行していきます。鮮魚の状態で販売するのか、加工して販売するのか、冷凍して販売するのか、お客様の業種業態によって、販売戦略を考えます。 現在の販売先は、全国規模・地域規模のスーパーマーケットや、地域のホテルなどです。最近ではアメリカへの輸出も始めました。販売先の可能性は無限大です。 2. 商品開発 お客様と話し合い、オーダーメードで商品を開発したりもします。水産物の流通の面白さはスピード感です。1回目の商談の場で商品が決まってしまうこともあります。現在は、ものすごい勢いで水揚げされる魚が変化しています。どんどん新しい商品を開発して、お客様に提案していく柔軟性や発想力を求めています。 3. 水産物の仕入れ 主に前浜にある石巻魚市場で仕入れを行います。全国有数の水揚げ規模を誇る石巻魚市場には、大小さまざまな魚が水揚げされ、それを自らの手で仕入れます。また、弊社では石巻はもとより、北海道、青森、岩手、福島での調達も行うことで、販売の可能性を広げていきます。 <勤務時間> ①7:00~16:00(休憩1.5時間) ②6:00~16:00(休憩2.5時間) ※②については早出手当を支給します <その他> 会社として、定期的にYoutubeの配信も行っております。「仲買人、タイチ」をご覧いただければ、会社の雰囲気が分かると思います。 https://www.youtube.com/channel/UCNQG0iteFlB_lx8qrAFanvw/videos |
会社名 | 株式会社布施商店 |
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住所 | 石巻市魚町3-4-13 |
Webサイト | http://www.fusesyouten.co.jp/ |
通販サイト | https://fuseshouten.shop-pro.jp/ |
その他 | You Tubeチャンネル「仲買人タイチ」 https://www.youtube.com/channel/UCNQG0iteFlB_lx8qrAFanvw |
選考方法 | 応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ 電話もしくはビデオ電話にて面談 ▼ 現地面談 ※適正テストを受けて頂く場合があります。 ▼ 内定 |
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