【千葉/養殖/大学発ベンチャー】日本発『グローバル養殖魚ブランド』の創出を目指す仲間を募集しています!
ニジマスからキングサーモンが生まれた――――。
2024年5月、東京海洋大学の吉崎悟朗教授が発表した研究成果は、様々なメディアで大きく取り上げられました。遡ること10か月、2023年7月に設立された「株式会社さかなドリーム」は、その吉崎教授が20年以上に渡って研究を重ねてきた技術「代理親魚技法」を社会実装すべく立ち上げられた東京海洋大学発ベンチャーです。大学の研究所がある千葉県館山市を拠点に、養殖魚の品種改良から生産、販売までを一貫して手掛けています。設立から1年を迎えた2024年7月、大学が開発したオリジナル品種の養殖を始めたさかなドリームが描く構想や事業展開について話を聞きました。
革新的な品種改良技術「代理親魚技法」で見据える未来
――「代理親魚技法」とは、どのような技術なのでしょうか?
吉崎:代理親魚技法は、ドナーとなる魚から精子や卵のもととなる幹細胞を採取して、これを近縁種の仔魚に移植すると、移植を受けた魚が成魚になった際に、代理の親となってドナー由来の精子や卵を生産する技術です。いわば「魚の代理出産技術」であるこの技術を使えば、ターゲットとする魚がわずか一尾でも手に入れば、代理親への細胞移植を通じてその子孫を量産することができ、これまでにサケ科・サバ科・アジ科・タイ科・フグ科・ニベ科といった様々な種類の魚で成功してきました。
――何というか、すごい技術ですね。
細谷:私と石崎は当社を起業するまで水産業の経験が無く、この技術も全く知らなかったので、初めて耳にした時はとても驚きました。世界的な魚類学者である吉崎は、魚の保全のために代理親魚技法を開発し、ミヤコタナゴやクニマスといった多くの天然記念物や絶滅危惧種を代理親によって生産してきました。そして新たな挑戦として、自身の教え子でもある森田准教授、総合商社や大手飲料メーカーで食品事業の経験を積んだ私や石崎と共に、養殖領域での社会実装を目指すことにしたのです。
石崎:誤解されがちですが、代理親魚技法は幹細胞をそのまま移植するため、細胞の中身に手を加える遺伝子組み換えやゲノム編集とは全く異なる技術です。代理親魚技法で生まれた魚は、通常の交配で生まれる魚と遺伝的な違いがないため、海面養殖や流通に一切の制限がないのが大きな利点です。
――この技術を養殖に使うと、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
吉崎:例えば、世界的に人気が高いキングサーモンは、親魚が大きいことや成熟まで5年を要すること、一度産卵すると死んでしまうといった性質がハードルとなり、ごくわずかな量しか養殖されていません。しかし、小型で何度でも産卵できるニジマスにキングサーモンを産んでもらうことで、従来よりも安価にキングサーモンを生産できるようになります。また、ニジマスはキングサーモンの半分未満の期間で成熟するので、品種改良を早く進められることも大きなメリットです。
森田:加えて、今まで養殖されてこなかった希少魚でも、代理親を介して完全養殖を実現することが可能です。実は水揚げ後の鮮魚であっても幹細胞は生きているので、当社ではこの1年間、豊洲市場や全国の漁港を巡って、100魚種以上の幹細胞を集めて、今後の養殖に向けて凍結保存しています。
――さかなドリームでは、この技術を今後どのように活用するのでしょうか?
細谷:日本には4,000種類を超える魚が生息している一方で、海面で養殖されている9割がわずか5魚種で占められています。これは海水魚の人工繁殖が技術的に難しく、安定的に稚魚を生産できる魚種が限られているからです。代理親魚技法を使って、今まではほとんど食べられなかった希少な魚をいつでも食卓に届けられるようにしたいです。
石崎:農産物や畜産物と比べて、魚は品種改良が進んでおらず、「神戸牛」や「あまおう」のような誰もが知るブランドが少ないことが課題です。この技術によって高速で品種改良を進めていくことで、日本国内だけでなく、海外でも戦えるようなブランド魚を生み出していけると考えています。
「美味しさにこだわり抜いた独自品種」が鍵となる
――ブランド魚を生み出すために大事なことは何でしょうか?
石崎:お客様に「さかなドリームの魚は一味違う」という驚きや感動を提供することです。そのためには、美味しい希少魚を養殖するだけではなく、品種改良で美味しさ自体を高めていく必要があります。
吉崎:従来の品種改良では、死んだ魚を親にはできないため、成長性や見た目の品種改良が中心でした。しかし、代理親魚技法で用いる幹細胞は凍結保存ができるため、「実際に食べてみて美味しい魚」を親にすることができるのです。
――稚魚の生産はともかく、今まで生産されてこなかった魚を簡単に養殖できるものなのでしょうか?
森田:たしかに、代理親魚技法で稚魚生産の難易度は下げられますが、成魚までの飼育も一筋縄では行きません。そこで美味しい魚と飼いやすい魚を掛け合わせることで、「美味しくて飼いやすい品種」を開発するのが当社の狙いです。魚は異種交配を行うと、その組み合わせによっては先天的に不妊となることが知られており、私たちはこれを利用して「種なし」の品種を開発しています。魚は成熟の際に大きなエネルギーを使うため、味わいが一気に落ちてしまいますが、種なしの品種なら一年を通して旬が楽しめる上に、和牛やブドウなどで問題となっているような品種流出のリスクもありません。
――御社の美味しさに対する強いこだわりを感じます。
細谷:種なしの魚はただ美味しいだけではなく、もし海面生け簀から逃げてしまったとしても、海での増殖や野生個体との交雑といった心配がありません。日本では、野生種よりも遥かに早く成長するように品種改良された魚、海外から輸入した稚魚や日本には生息していない魚種などが養殖されています。もちろん、これらの魚は逃げないよう厳重に管理されていますし、世界中で増え続ける水産物需要をまかなうために無くてはならないものですが、私たちの魚は養殖による遺伝子攪乱を防ぐ「次世代の養殖魚」でもあるのです。
――実際に養殖するのはどのような魚なのでしょうか?
吉崎:第一弾の品種として、アジ科の希少魚であるカイワリをベースとした魚を養殖しています。カイワリは水産のプロ達がとても美味しいと評価する魚で、私も一番好きな魚の一つなのですが、飼うのが難しいため養殖は全くされていませんでした。そこで、館山湾で獲れたマアジとの交配によって「美味しくて飼いやすい新品種」を開発し、2024年7月から養殖を始めました。
石崎:この魚は来年の春頃から販売を開始する予定です。先日試食していただいたミシュラン星付きの寿司職人さんからは「販売を開始したらすぐに連絡してほしい」と言われており、手応えを感じています。すっきりとした脂乗りが特徴なので、海外でも人気が出るだろうというご意見も頂いており、日本以外でも展開できるのではないかと考えています。
事業の拡大に必要なのは、並外れた情熱と鋭い観察力を持つ「魚飼い」
――既に販売先も見据えているのですね。御社では現在どのような人材を募集しているのでしょうか?
細谷:私たちはまだ10人程度の企業で、これから事業を拡大していくフェーズですので、様々なポジションで募集をしておりますが、最も採用を強化しているのは飼育研究員です。飼育研究員は、陸上水槽で飼育している親魚や稚魚を育てる飼育担当、海面生け簀で生産を行う養殖担当の2つに分かれ、候補者の方の希望や適性によって役割を決めています。
――どのようなスキルや経験が必要になる仕事なのでしょうか?
森田:研究機関や企業で魚を飼ってきた経験がある方、魚の養殖経験がある方は特に歓迎していますが、何より大事なのは生き物が好きという気持ちです。給餌や水質管理、設備の手入れといった毎日の仕事は、ともすれば単調な作業になってしまいますが、日々のルーティンの中で魚たちの微細な変化を見逃さないような鋭い観察力が求められます。生き物が好きという人でなければ成果を上げるのは難しいと思いますし、逆に生き物好きの人たちにとってはとても楽しい仕事だと思います。また、私たちが生産するのはまだ養殖されていない新しい魚です。どこを調べても飼育方法は書いておらず、自分たちが世界に先駆けて新しい養殖技術を編み出すんだという強い情熱が必要です。
吉崎:結局のところ、どんなに優れた技術や品種があったとしても、魚をうまく飼えなければ何も始まらないのが私たちの仕事です。大手水産会社で15年以上の経験を積んだ森田が、私の研究チームに帰ってきてくれたことで、社会実装に向けた動きが一気に加速したように、当社の事業拡大において腕の良い「魚飼い」はどれだけいても足りることはありません。
石崎:私たちは、生産した魚をただ右から左に流すのではなく、ブランディングにも最大限注力していきます。自分が飼った唯一無二の美味しさを持つ養殖魚が、最高峰の飲食店や地球の裏側でも販売されて、お客様に感動を提供するというのは、当社ならではの魅力ではないでしょうか。
――最後に、御社が目指す未来と候補者へのメッセージをお願いします。
細谷:日本には豊富な水産資源、最先端の水産研究、職人技とも言うべき養殖技術、発達したコールドチェーン、世界に誇る食文化など、他の国にはない多くの強みがあります。そして、当社がこれらを繋ぎ合わせるパズルのピースになることで、日本の水産業を飛躍させるための一助になりたいと思っています。今はまだ小さな企業ですが、共に大きな夢を追ってくれる仲間を募集しています。
石崎:「世界一旨い魚を創り、届ける」という当社の企業理念に共感してくださる方は、まずはカジュアル面談からでもぜひご連絡を頂きたいです。世界中の魚好きから愛されるようなオリジナル養殖魚の展開を一緒に目指しませんか?
森田:当社は様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まっており、各々が持つ専門性や強みを活かせる環境があります。魚の繁殖や飼育に関する知識は入社後にいくらでも伝えられますので、まずは思い切って飛び込んできていただけたら嬉しいです。
吉崎:魚は少しのミスや不注意で簡単に死んでしまう繊細な生き物です。また、病気や環境変化で急に死んでしまうこともあり、精神的にタフな仕事かもしれません。私も過去に何度も辛い思いをしてきましたが、それでも挫けずに日々真摯に向き合い続けていれば、魚たちは必ずそれに応えてくれます。命を担う覚悟を持ちながらも、魚を愛してやまない方からのご応募をお待ちしています。
インタビューを通して、4人の事業にかける思いがひしひしと伝わってきました。養殖業に新たな風を吹き込みたいという人は、ぜひ「さかなドリーム」へ!
給与 | 30万~40万円 想定年収:3,600,000円~4,800,000円 みなし残業あり:45時間分の固定残業代を含む 【仕事内容について】 当社が開発・生産する新規養殖魚の海面養殖や飼育等を担当していただきます。具体的には、養殖生産(種苗生産、中間育成、海面養殖、出荷作業等)、魚類の飼育管理(採卵、初期飼育、親魚養成等)を担っていただきます。この他に、親魚候補となる魚の収集を各地で実施していただくことがあります。千葉県館山市を主な活動拠点としつつ、2024年は千葉県南房総市や静岡県沼津市等での海面養殖を予定しております。また、2025年以降は更に養殖地が追加される可能性があります。希望や適性に応じて勤務地や具体的な担当業務を決定します。 |
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勤務地 | 千葉県館山市坂田670 東京海洋大学 水圏生殖工学研究所(予定地) |
勤務時間 | 平日:8時30分~16時45分 土曜日:8時30分~12時00分 |
休日休暇 | 日曜日、祝日、年末年始 |
募集期間 | 2024年07月16日(火)~2024年08月31日(土) |
その他 | ◆必要な経験資格:漁協や事業会社、研究機関等における魚類の養殖・飼育経験のある方 自動車免許(AT可)、船舶免許必須 【会社について】 さかなドリーム代表の細谷と申します。この度は弊社の求人をご覧くださり、ありがとうございます。当社は「世界一旨い魚を創り、届ける」という企業理念を掲げる水産スタートアップです。 日本の養殖技術は世界でもトップクラスの水準である一方、既存の養殖魚は天然魚の代替品という位置付けに留まっています。私たちは東京海洋大学の独自技術「代理親魚技法」によって、際立って旨い養殖魚を開発することで「日本の海」と「魚」のポテンシャルを解放し、お客様がこれまで食べたことのないような美味しい魚を届けたいと考えています。 魚を飼うのが大好きな方、美味しいものを食べることが好きな方、日本の養殖業を盛り上げたい方、新しいことに挑戦して社会にポジティブなインパクトを与えたい方、まずはカジュアル面談からでも結構ですので、是非お気軽にご連絡ください。 【事業内容】 当社は、全く新しい養殖魚、具体的には異なる種類の親を掛け合わせることで生まれるハイブリッド魚を開発・生産・販売する水産スタートアップです。 日本の水域に生息する4,000種の中から、際立って旨い希少魚と養殖技術が確立している魚を掛け合わせることで「抜群に旨くて飼いやすい魚」を養殖することを目指します。 日本の養殖技術は世界最高峰の域にありますが、養殖している魚自体は農産物や畜産物と比較すると育種が為されておらず、天然魚との差別化が困難です。その結果、日本では養殖よりも天然の方が評価が高いのが現状です。 |
会社名 | 株式会社さかなドリーム |
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Webサイト | https://sakana-dream.com/ |
選考方法 | TRITON JOBから応募いただきます ▼ TRITON PROJECTよりメールにて連絡をいたします。 ▼ 履歴書、職務経歴書を指定アドレスに送付頂きます。 |
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