東京から南に約140キロメートル、都心から高速船で約2時間20分の位置にある面積4.02平方キロメートルの小さな島、利島。島全体が約20万本もの椿に覆われた利島は「椿の島」として知られ、日本有数の椿油の生産地となっています。さらに、島周辺に生息するミナミハンドウイルカと一緒に泳ぐドルフィンスイムを楽しめるほか、「天然のプラネタリウム」といわれる美しい星空が見られるなど、美しい自然環境は利島の大きな魅力です。
島の人口は、約300人。移住者を迎え入れる柔軟な施策が行われてきた結果、現在では人口の7割は移住者が占め、若い世代の力が大いに発揮されています。
そんな利島村で、現在、大きな期待が寄せられているのが水産業の振興です。利島村では、近年の海の環境の変化により、かつては主力だった伊勢海老やサザエの漁獲高が激減する一方、マグロやカツオなど今まで漁獲が少なかった魚種の水揚げが増えてきています。このような環境変化を踏まえて利島村の水産業をアップデートし、持続可能な仕組みを実現することが、島の重要な課題となっています。
この挑戦に向けて、利島村では、プロジェクトで活躍してくれる仲間(地域おこし協力隊)を募集しています。水産加工品の企画、開発、調理、販売に関する業務から水産業の魅力発信に関する業務まで、利島の水産業の振興を担うやりがいのある仕事です。
利島の水産業に秘められた大きな可能性とは? この地で水産振興に取り組む意義とやりがいとは? 今回は、アドバイザーとして利島村の水産振興をサポートする西伊豆町役場職員の松浦城太郎さんと、JA利島職員の加藤大樹さんにお話をうかがいました。
「水産加工場」が利島にもたらす大きなビジネスチャンスとは
今回のプロジェクトにあたり、水産加工場の設計や運営などをサポートしてくれるのが、静岡県の西伊豆町役場職員として活躍する松浦城太郎さんです。ふるさと納税事業で大きな成果を上げたほか、産地直売所「はんばた市場」の設立や電子地域通貨「サンセットコイン」の導入など、次々と画期的な地域振興の取り組みを実現してきた松浦さんは、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2021」を受賞した経歴があります。
松浦さんは、利島に水産加工場をつくることの意義について、次のように語ります。
「海で泳いでいる状態の魚には、水産的な経済“価値”はありません。当たり前のことですが、魚を水揚げして、経済活動の中に落とし込んでいくための機能が必要です。加工場や直売所ができれば、そこに経済活動が生まれ、魚の価値を高めることもでき、漁師さんの手取りを増やし、雇用も創出できます。それが、今回のプロジェクトが利島に与える一番大きな効果だと思います。」
実は、黒潮の流れがぶつかる位置にある利島は、マグロやカツオをはじめとする回遊魚の通り道となっており、豊かな漁獲が得られると期待されます。しかし、これまで利島の漁業は自家消費が中心となっていたため、これらの魚について積極的な水揚げが行われてきませんでした。そのため、漁獲量のデータも存在しておらず、そのポテンシャルは未知数です。
利島を取り巻く豊かな漁場を最大限に活用し、持続可能な水産業を実現するためには、島内の経済を回し、島外から資金を得る仕組みを作ることが必要です。そのために、大きな役割を果たすのが水産加工場。加工場があれば、水揚げした魚を加工して島内に流通させられるだけでなく、フィレやロインの形状にして冷凍することで、保存や長距離輸送が可能になります。
「安定的に売れるようになっていけば、どんどん好循環が生まれて、経済活動も大きくなっていくと思います。そのためにも、島外の売り先を確保することが大切です。卸しとEC、ふるさと納税。これらが実現できればよいですね。その一方で、バランスを見ながら島内に流通させていくことも大切です。水産加工場は、ビジネスチャンスを生む場でもあり、地産地消の核にもなります」
西伊豆での自身の経験を踏まえながら、利島における水産加工場の役割と、とるべき戦略について語る松浦さん。「島内に魚という商材が留まる機能ができることで、どこにどう売っていくのか、いろいろと考えることができる。わくわくしますね」と、利島での加工場設立に期待を寄せます。では、このようなプロジェクトを推進するために、どのようなマインドセットが求められるのでしょうか。
「魚が好きで、食いしん坊で、商売が好き。そんな方に向いている仕事だと思います。私もそうですが、食いしん坊で料理好きであることは、商品開発につながるんですよ」
椿とのコラボレーションも!? 利島の水産業の可能性は無限大
今回のプロジェクトを現地でサポートしてくれるアドバイザーが、利島に移住して11年目、現在では島の振興のキーパーソンとして活躍する加藤大樹さんです。加藤さんは、35歳の時に家族とともに利島に移住。JA利島の職員として椿油のブランディングに成功したほか、現在は利島村村議会議員、利島農業協同組合理事、利島村農業委員会会長も務めるなど、八面六臂の仕事ぶりです。
「私が移住する10年前くらいからIターンを受け入れる機運が高まり、そこから10年、移住者はさらに増えてきています。会社員や団体職員として働きながら、土日を使って椿山の管理をするなど、兼業で農業に関わる方も多いですね。
とはいえ、島の雰囲気はゆったりとしています。のんびりとした島暮らしを望んで移住者される方も多いので、私のようなタイプは少数派かもしれませんね。しかしながら、新しいことができるチャンスが山ほど転がっている。その気になれば、いつでも手を伸ばせるんですよ」
利島が持つ可能性に目を輝かせる加藤さん。自身も椿油のオーガニック認証取得やオーガニック化粧品分野への挑戦など画期的な取り組みを実現してきた加藤さんにとって、人口約300人という島の規模は不安要素ではなく、「自由にスピード感をもって物事を実現できる」強みなのだといいます。
そんな加藤さんも、利島の水産業の発展には大きな可能性があるといいます。
「一般的に“島”というと、“おいしいお魚が食べられるんでしょう”というイメージがありますが、残念ながら、現在は利島で水揚げされた魚が『利島産』としてブランディングできていません。魚は獲れていて、それに対するニーズもあるのに、機会損失を起こしている状態。ですから、ここには大きな伸びしろがあります」
観光客や島外の人々に「利島産」の魚の魅力を伝えるために、加工場は重要な役割を果たします。また、加工場の設立等による水産振興の取り組みは、島外に魚を売るだけでなく、地元の伝統的な食文化を守ることにもつながります。
「利島など伊豆諸島の島では、ブダイなどの白身魚を島唐辛子醤油に漬けて握る『べっこう寿司』という郷土料理があります。また、ハバノリは近年ではとれるのが2月頃になってしまいましたが、かつては11月頃にとれる初物を皆で食べて、健康や長寿を祈願するという文化がありました」
移住者が増えていく現在、地元の人々と加工場が手を取り合うことで、このような食文化が継承され、さらに進化する可能性が秘められています。そんな利島の水産振興を担う仲間に向けて、加藤さんは熱いエールを送ります。
「ゼロイチを生む材料がたくさんあるので、それを生かしたいというチャレンジ精神のある方には、とても楽しめる島だと思います。利島といえば椿ですから、椿にちなんだブランディングなどもできたら面白いですね。私も、全力でサポートします!」
心強い仲間たちが、挑戦をサポート
利島村のような少人数自治体の仕事では、各自が多様な業務を担当することが求められるものの、一人で抱え込むのではなく、漁協職員や漁師、役場職員、島外の事業者など、さまざまな関係者と連携して仕事を進めていきます。
「地域おこし協力隊」の任期は3年間ですが、利島村としては「なるべく長くいてほしい」との意向を持ち、任期後も加工品の開発部門担当として業務を継続したり、島内外向けに水産を軸としたイベント等の企画・実施したりと、島の暮らしと仕事を継続してもらうことを期待しています。協力隊は副業可能なため、水産業のかたわらで椿産業を手伝うなど、さまざまな仕事(収入)を得ることも可能です。
また、協力隊の住居は村が確保。都会のように多様なお店やサービスはないものの、診療所や教育環境が揃い、ネット通販は最短2日で届き、食品や生活必需品は島内の商店で購入できます。和やかな島の空気に溶け込む移住者は多く、これまでさまざまな職種で採用されてきた地域おこし協力隊も、任期満了後に3名が定住しているといいます。
水産加工場の設立により、大きな飛躍を目指している利島の水産業。ゼロからイチを生むさまざまな可能性が秘められたフィールドで、共に挑戦する仲間をお待ちしています。
募集職種 | 地域おこし協力隊(水産業振興担当) |
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雇用形態 | 利島村会計年度任用職員 |
給与 | 月給20.096万円 ◆任用期間 採用日から1年間(最長3年間) |
福利厚生 | ◆待遇・福利厚生 ・期末手当を支給(令和7年6月支給時のみ勤務期間により30/100支給) ・地方公務員共済組合(短期給付及び福祉事業を適用)・厚生年金・雇用保険・労災保 険へ加入 ・住居は村で確保(家賃は地域おこし協力隊員が負担) ・年次有給休暇(6か月経過時から付与) ・特別休暇の付与 ・活動に必要なパソコン等の機材は村、又は漁協が貸与 ・副業は村長の許可を得た上で可能 ※週の勤務日が4日のため、その他は副業の時間にあてていただくことを想定しています。 |
仕事内容 | ・採用後、水産振興担当として活動していただきます。 ・島の豊かな資源を活用した水産業の振興や、地域経済・コミュニティの活性化に取り組んでいただきます。 《主な活動の例》 ・水産加工品の企画、開発、調理、販売に関する業務 ・漁協の運営支援業務や漁業者支援に関する業務 ・漁協及び水産業の魅力発信に関する業務 ・水産を軸としたイベント等の企画立案・運営 ・水産振興や地域経済・コミュニティ活性化に必要な活動 ・その他水産業振興に必要な業務 など ※活動に当たっては、主に利島村漁業協同組合(以下、漁協)において、主に水産振興を目的とした様々な活動を行っていただきます。 【望ましい人物像(全て該当する必要はありません)】 ・魚が好き、釣りが好きなど魚と触れる機会の多い人 ・地域への愛着やコミュニティへの関心を強く持っている人 ・問題解決に向けて柔軟に対応できる人 ・地域振興に情熱を持ち、持続可能な取組を推進できる人 ・住民や関係者と協調的に関係を築くことができ、円滑に取組を推進できる人 ・島内で採れる食材を活用した商品開発等に熱意を以って取り組むことができる人 ・費用対効果を考慮しながら実現可能な取組を提案でき、実行できる人 |
勤務地 | 東京都利島村主に利島村漁業協同組合 |
勤務時間 | 週4日、1日につき原則8時15分~17時00分の7時間45分(変則勤務の可能性有り。) |
休日休暇 | 休日は原則として週4日シフトによる |
募集期間 | 2024年12月23日(月)~ |
その他 | 【募集条件】 応募者は次の条件を全て満たす方に限ります。 (1) 応募時点で3大都市圏又は都市地域(過疎、山村、離島、半島等の地域に該当しない市町村)に在住し、採用後に利島村に住民票を移し居住できる方 (2) 離島振興など、社会貢献度が高く使命感にあふれる職種を希望する方 (3) 地方公務員法第16条に規定する欠格状況に該当しない方、税金等滞納のない方 (4) 心身ともに健康で積極的に地域社会に入り込み、住民等と充分にコミュニケーションを取りながら地域活動を共にできる方 (5) 自ら情報収集を行い、分析し、企画立案・実践活動ができる方 (6) 普通運転免許を取得している方 (7) Microsoft Office ソフト(word・excel等)やメールなど一般的な操作ができ、 インターネットを活用して情報発信ができる方 |
会社名 | 利島村漁業協同組合 |
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住所 | 東京都利島村 |
選考方法 | TRITON JOBから応募いただきます ▼ TRITON PROJECTよりメールにて連絡をします ▼ TRITON PROJECT 公式LINEを追加いただき、チャットにてやりとりを開始 ▼ LINE内で、サポート窓口と電話での簡易面談 ▼ LINE内で、エントリーシートの提出をお願いします ▼ 書類選考・応募先との電話面談などの調整をします。 ▼ 合否についてご連絡が入ります。 |
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