「海と生きる」を選んだ僕たちの物語。南伊勢に飛び込んだ若手漁師たち

 

三重県度会郡、南伊勢町。複雑に入り組んだリアス海岸が美しいこの町で、今、新しい風を吹かせている若者たちがいます。

 

かつては「3K(きつい・汚い・危険)」の代名詞とも言われた漁師の世界。しかしこの町では今、そのイメージを塗り替えるように、次々と若い漁師が誕生しているのです。

彼らを惹きつけたのは、都会では味わうことのできない「豊かさ」と「新しいキャリアの形」。今回は、大阪から南伊勢へ移住し、漁師の道を歩み始めた2人の物語をご紹介します。

「食の原点」を求めて。多業種を経験した吉田さんの挑戦

異業種からの転身。「1匹の価値」に惹かれた理由

まずご紹介するのは、南伊勢町阿曽浦にある友栄水産で真鯛養殖漁師として働く吉田夏樹(よしだなつき)さんです 。

大阪出身の吉田さんのキャリアは実に多彩です。自動車整備士、花の卸業者、そしてビール専門の飲食店。もともと漁業とは全く違う仕事をしていましたが、釣りが好きだったことと、飲食業で「食」に関わる中で、食材の生産現場への興味が日に日に強くなっていきました。

「飲食店で働くうちに、食材がどこから来るのか、その原点を知りたくなったんです」

そんな彼が南伊勢に出会ったきっかけは、SNSで流れてきた友栄水産の求人でした 。そこで目にしたのは、友栄水産の「育てる真鯛の匹数を増やすのではなく、1匹の価値を上げる」という生産方針。ただ生産量を増やすだけではない、サステナブルな生産のあり方に強く惹かれ、未経験ながら漁師の世界へ飛び込むことを決意しました 。

「地獄を見る覚悟」の先に見えた、心地よい日常

吉田さんの担当する仕事は、日々の魚への餌やりや出荷作業、網のメンテナンス。さらに最近は、小型定置網漁にも携わり、多様な漁法を通じて海のリアルを学んでいます。

移住前、周囲からは「漁師は絶対にキツイぞ」と脅されていたという吉田さん。「正直、地獄を見るつもりで来ました(笑)」と当時を振り返ります 。

しかし、実際に働き始めてみると、その不安は良い意味で裏切られることになります。

実際の養殖作業は主に波の穏やかな湾内で行われるため、想像していたような荒波に揉まれる過酷さはありません。また、同年代の同僚がおり、先輩たちも親身に相談に乗ってくれるため、非常に働きやすい環境だと話します。

「仕事の時間以外も充実感でいっぱいで」と吉田さんは続けます。現在は、隣町の大台町に住み、約50分かけて通勤していますが、車窓から眺める山や海の景色は最高の気分転換になっています。休日は趣味の釣りに没頭し、仕事もプライベートも充実した日々を送っています。

当初は漁師になることについて猛反対していたおじいさんも、今では吉田さんが送る南伊勢の魚を楽しみに、活動を応援してくれているといいます。

夢は食材の背景まで一緒に届けること

吉田さんの夢は、漁師になることだけではありません。 「育てたり獲ったりした魚を、その背景にある物語と一緒に提供できるようなお店を持ちたい」。

現在は養殖の技術を学びながら、船舶免許や狩猟免許の取得も目指しています 。飲食業での経験と、生産現場での学びを掛け合わせ、独自の「食の体験」を創り出そうとしています。

小学生からの夢をハイブリッドに叶える野口さん。漁師×潜水の新しい形

テレビの向こう側の憧れを、南伊勢で現実に

続いてご紹介するのは、丸久水産でマグロ養殖に従事する野口透弥(のぐちとうや)さんです 。

彼が漁師を志したのは、なんと小学生の頃。テレビで見たマグロ漁師の姿に憧れ、「いつか海に関わる仕事がしたい」という夢を抱き続けてきました。

専門学校ではダイビングを専攻し、インストラクターの道も考えていた野口さん。しかし、「漁師」としての夢も諦めきれませんでした。「漁師もやりたい、でも大好きなダイビングも活かしたい」。

そんな彼の夢をどちらも叶える場所が、南伊勢の丸久水産でした。

マグロの養殖現場では、巨大なマグロの水揚げや出荷作業など、ダイナミックな仕事がたくさんあるだけでなく、養殖生け簀の整備や網直しといったメンテナンスなどで潜水の仕事も発生します。まさに丸久水産は、「漁師×潜水」というハイブリッドな働き方ができる場所だったのです。

信頼の中で育まれる技術

「移住への不安は全くなかった」と語る野口さん。おじいさんがかつて釣りのために南伊勢を頻繁に訪れていた縁もあり、家族も「行っておいで」と快く送り出してくれました。

しかし、現場では大きな壁にぶつかります。それは、巨大な船の操縦でした。

「最初は事故を起こさないか、とても不安でした」

そんな彼を支えたのは、職場の先輩や親方の懐の深さです。

「ぶつけるならぶつけてみろ」 そう言わんばかりに、失敗を恐れずに挑戦させてくれる信頼関係の中で、野口さんは着実に操縦技術と自信を身につけていきました。今では、操船を完全に任されるまでに成長しています。

海の中も、外も、全力で楽しむ

「海にいる時間が本当に好き」と語る野口さんは、プライベートも海と密接に関わっています 。休日は職場の人や友人と飲みに行くほか、趣味である釣りを満喫。旅行の計画も釣りを軸に立てるほどの釣り好きで、仕事帰りにも漁港で釣りをしているそうです。

野口さんのご家族が大阪から南伊勢に遊びに来ることもあり、家族とのつながりも大切にしながら、幼い頃から憧れていた「海の近くでの暮らし」を全力で楽しんでいます 。

「目標は、大好きな潜水の仕事をもっと極めていくこと。水の中にいる時間が本当に好きなんです」

漁師とダイビング、どちらの夢も叶える。彼はいま、自分にしかできない漁師の形を見つけ出しています。

あなただけの生き方を、南伊勢で探してみよう

今回ご紹介した2人に共通しているのは、自分の『好き』や『やりたい』に正直であること。そして「まずは一歩踏み出してみる」という前向きな気持ちです。

都会での生活に疑問を感じている方、あるいは、昔からの夢を胸に秘めている方。南伊勢の海は、あなたの想像以上に多様な受け皿を用意して待っています。

「でも、どうすればいい?」そんな戸惑いがあっても心配いりません。実は今回紹介した二人も、まずは南伊勢町やフィッシャーマン・ジャパンへ相談したことから、今の仕事とのマッチングが実現しました 。南伊勢には、相談から就業まで伴走するFJメンバーが常駐しています。

応募時の丁寧なヒアリングはもちろん、漁業のリアルを肌で学べる「TRITON SCHOOL(漁師塾)」や長期研修など、一人ひとりに合わせたサポート体制を整えています。

まずは気軽な相談から、あなただけの「海の生き方」を探し始めてみませんか?

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