「この地域には、誇るべき素晴らしい海がある。30歳で親父と一緒に漁師をやるまでその凄さがわからなかった」
そう語るのは、宮城県石巻市渡波地区で牡蠣養殖を営む齋藤晃さん。
渡波地区の牡蠣は短期間でも身入りが良く、 1年子として出荷。小粒ながらもプリッとした食感と凝縮された味わいが自慢です。
こだわりは牡蠣のおいしさだけではありません。
晃さんが所属する宮城県漁協石巻湾支所の牡蠣は、石巻地区支所・石巻市東部支所と共同で、養殖版・海のエコラベルと呼ばれる ASC認証を取得していて、環境や働く人にも配慮した「持続可能な養殖業」として認められている地域です。
これまでも、これからも。
万石浦の種牡蠣が全国の牡蠣養殖を支える。
そしてなんといっても、地域の漁師にとって欠かせないのが、目の前に広がる内海・万石浦(まんごくうら)です。ここ万石浦は全国有数の種牡蠣(たねがき)どころ。晃さんも種牡蠣養殖を手がけ、他県に出荷しています。
種牡蠣とは、牡蠣の赤ちゃんを採苗し、中間育成させたもの。強い種牡蠣に育てるために、潮の満ち引きを利用した「抑制」という作業を行いますが、万石浦には好条件が揃っているため、大規模かつ質の良い種牡蠣養殖が行われています。
万石浦で生まれ育った種牡蠣は、北は北海道から南は九州にまで届けられ、各地域の海でおいしくて立派な牡蠣に成長を遂げます。
恩恵を受けているのは国内だけではありません。
1960年代にフランスで牡蠣の病死が大流行したときにピンチを救ったのも、実は万石浦の種牡蠣。世界中で評判となった万石浦の種牡蠣は、アメリカ、ポルトガル、スペイン、韓国など各地に輸出されたため、今世界で食べられている牡蠣の多くが、「万石浦にルールを持つ」と言われています。
「震災があった年も、種牡蠣をかき集めて全国に出荷した。ここの漁師がいなくなったら、本当に大変なことになるんです」
晃さんは、今年で 58 歳。
年齢的にも体力的にも、次の世代へバトンタッチをする時期にきていると感じていますが、後継者となる人はいません。
「震災の年はまだ46歳。今まで突っ走ってきた。突っ走れる年齢だった。朝も暗いうちから夕方まで働いてたね。自分は他の仕事も経験したことがあるけど、漁師の仕事っていうのは、頑張った分が稼ぎになるからおもしろい。でもね、頑張りすぎたね。踏ん張りが効かなくなってきた。今、自分にある選択肢は二つ。ひとつは、規模を減らす方法。もうひとつは、人を育てて、今の規模を保つ方法……つまりは、自分の後継者となる人を育てるということ」
日本全国津々浦々、少しずつ新規参入者が漁業権を取得する事例も出てきていますが、漁協の正組合員となり、牡蠣やホタテなど養殖物を育てる「区画漁業権」を取得することは、新規参入者にとって容易なことではありません。船や漁具の購入のための資金調達のほか、その浜の漁場の空き具合や地域のルール……最終的には、漁業者として地域の人に認められるかどうかが大きな鍵となります。
そして漁業者にとっても、後継者育成には大きな課題があります。ベテラン漁師といえども、縁者でもない「よそ者」を迎え入れ、育成するというのは、雲を掴むようなもの。晃さんの働く渡波地区では、 新規参入者の漁業権の継承・取得事例はまだありません。
「それでも、やってみないことには何もはじまらない。苦労して震災後やってきたのに、自分がいつか辞めるとなったときに、船も資材も全部ゴミ(廃棄)になっちゃう。だったら、それを誰かに譲り受けてほしいなって。祖父の代から続く、この漁師という仕事。自分が受け継いできたものを、誰かに残したい」
晃さんは、最後の最後まで漁師として挑戦することを決意をしました。
ロックに生きる。後継者、募集中。
「髭剃ったほうがいいんじゃない?スタジャン脱いだほういいんじゃない?え、本当にこれでいいの?怖い人じゃないかって、誰も応募してこないんじゃない?」
お茶目で心配性な一面も見せる晃さん。
晃さんは、優しい穏やかな口調でありながらも、いつも真摯に熱い思いを話してくれます。
「本気の子を応援したい。息子を育てるくらいの覚悟でいるんだよ」
ダンディな出立ちもさることながら、いい意味で“漁師っぽく”ない晃さん。
撮影で着てもらったカッパもきれいに畳んで軽トラへ。晃さんの仕事の丁寧さや道具を大切に使う姿勢は、周囲からも評判です。
そのルーツを探ろうと、好きなものを尋ねてきました。
「音楽が好きで、作業中もいろいろ聞くんだけど。永ちゃんが好き」
ロックシンガーの矢沢永吉さん!……なんだか妙に納得してしまいました。
晃さんが漁師として、真面目一徹で仕事に向き合ってきたその様を表すのであれば、<ロックに生きる>。その言葉に尽きます。
<ロックに生きる>とは、破天荒に生きるということではありません。
自分が惚れ込んだことに真摯に向き合い、信念を貫き、なんでもやり通すーーそれが、<ロックに生きる>ということです。
「最初はできなくて当たり前。いつか自分のものにするんだ!という、強い気持ちがあればいい。技術や知識を蓄えるために、5年、10年くらいの期間は見ているけど、もう任せられるってなったら立場を逆転して、俺を雇ってくれればいいんだ。牡蠣剥きも手伝うし、いいように使ってもらえれば」
晃さんは自分が父から漁師の仕事を受け継いだように、自分もまた次の世代にバトンを渡し、独り立ちするまで支えていくつもりです。
世界に誇る牡蠣の聖地。
ここには、まだ見ぬあなたの夢を全力で応援しようとする漁師がいます。
思いを受け継ぎ、未来へ繋ぐ。
地域の新しい水産業の1ページを、一緒につくってみませんか?
(文・写真=高橋由季、種牡蠣漁場撮影=Funny!!平井慶祐)
※取材・撮影は2022年4月に行いました。
給与 | 18万~20万円 ※能力に応じて昇給あり ※試用期間3ヶ月は時給1,000円 |
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勤務地 | 宮城県石巻市渡波字黄金浜 |
勤務時間 | (10〜4月)5:30〜14:30(5〜9月)6:00〜15:00 ※漁業のため天候・季節・作業によって変動あり(実質7時間程度) |
休日休暇 | 月5〜6日休みのほか悪天候日休み、夏期休暇3日程度、正月休暇あり(12/31〜1/4) |
募集期間 | 2022年05月01日(日)~2022年08月09日(火) |
その他 | この求人は、事業継承を目指す後継者育成のための求人となります。独立するまでは長期継続による勤務が必要なため、30歳くらいまでの年齢の方を想定しています。詳しくはお気軽にご相談ください。 |
会社名 | 新栄丸 |
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選考方法 | ※新型コロナウィルス感染拡大防止措置として、現地対応(面談・研修)の受け入れ時期を慎重に判断させていただいております。お電話やビデオ電話などでの企業説明や相談なども行っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ 電話もしくはビデオ電話にて面談 ▼ 現地面談 現地研修(1週間程度) ▼ 内定 |
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