南伊勢町・外湾漁協・ フィッシャーマン・ジャパンが連携協定を締結

2025年10月3日。南伊勢町、三重外湾漁業協同組合(以下外湾漁協)、そして一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(FJ)の3者は、活気ある水産業の実現に向けて連携協定を締結しました。

これまで南伊勢町では、水産業の担い手育成を中心に、漁業の未来をつくる取り組みを進めてきました。今回の協定では、その流れをさらに発展させ、「海業の振興」や「デジタル化の推進」、「藻場再生と新しい養殖技術の導入」といった新たな取り組みを実施していくことを宣言しています。

この記事では、協定締結の背景と新たな取り組み内容を紹介していきます。

連携は担い手育成から始まった

南伊勢町は、豊かな海に育まれた水産業を基盤に発展してきた町です。しかし近年では、全国の漁村と同じように、担い手不足や漁獲量の減少、海水温の上昇、藻場の消失など、海を取り巻くさまざまな課題が顕在化しています。

こうした状況を受け、2022年より南伊勢町は外湾漁協、FJと連携し、水産業の担い手育成事業「TRITON PROJECT」に取り組んできました。

2022年に実施した、担い手育成事業「TRITON PROJECT」の立ち上げ時の様子

漁師の求人情報の発信や受け入れ体制の整備を進め、短期での漁業体験・研修「漁師塾」も定期的に開催しています。これまでに実施した「漁師塾」には延べ28名が参加し、3名の新規漁業就業者が生まれています。

着実な成果が生まれている一方で、私たちはさらなる取り組みが必要であるとも感じています。

「漁師になった彼らがこの町、この海で、安心して働き続けるために何ができるのか?」

担い手を増やした先にある持続可能な水産業の未来を見据え、私たちは海や漁場、漁協、魚市場といった現場の仕組みそのものにも目を向けはじめました。

そこで、これまでの担い手育成の取り組みをさらに発展させる形で、これからの水産業に必要な新たな取り組みを立ち上げ、推進していくために、連携協定を締結することとなったのです。

さらなる水産業の発展に向けて

では、実際にどんなことに取り組んでいくのでしょうか。

1, 海業の振興

まず一つ目は「海業の振興」です。海業とは、海や漁村の資源を活かしながら、観光・教育・体験など多様な事業を生み出す取り組みです。全国でも注目が高まっており、地域のにぎわいや新たな雇用を生む可能性が期待されています。

南伊勢町では、これまでに漁業体験、釣り堀、シーカヤック、マグロ養殖いけすで泳ぐツアーなど、海を舞台にした多彩な体験事業を行ってきました。

さらに、今年11月には「第44回全国豊かな海づくり大会〜美し国みえ大会〜」が開催される予定で、その開催地となる宿田曽漁港周辺では、この1年間で護岸整備や海浜清掃、稚魚放流などの活動が進められてきました。

南伊勢の海を舞台にした取り組みは、ますます盛り上がりを見せています。

今年中には、漁港や海の新しい利活用を地域住民みんなで検討する会を実施する予定です。地域の声を取り入れながら、既存の海業をさらに広げ、にぎわい・所得・雇用を生み出す新しい南伊勢の海のかたちをつくっていきます。

2, デジタル化の推進

二つ目は「デジタル化の推進」です。2025年9月、南伊勢町は水産庁が推進する「デジタル水産業戦略拠点」の一つに選定されました。

この取り組みは、地域が一体となって水産業のデジタル化を効率的・効果的に推進するモデルとなることを目指すものです。選定を受け、町、外湾漁協、三重県、FJの4者が連携して「南伊勢町デジタル水産業推進協議会」を立ち上げました。現場の声を起点に、段階的にデジタル技術の導入を進めています。

現在は主に「海洋環境・資源データの収集と活用方法の検討」「漁協業務の効率化とデジタル化の推進」の2つのテーマで取り組みを進めています。

さっそく魚市場業務のデジタル化に向けて動き出している

これまで「点」で行われてきた生産・加工・流通のデジタル化を、南伊勢では「面」としてつなぎ、地域全体での仕組みづくりに取り組みます。そして南伊勢で培われたノウハウは、デジタル水産業戦略拠点のモデルとして、同規模の漁村に展開していくことも目指しています。

3, 藻場再生と新たな養殖技術の導入

三つ目は「藻場再生と新たな養殖技術の導入」です。近年の海水温の上昇や藻場の減少、磯焼けなどによって、全国1位の生産量を誇るアオサノリ養殖の生育状況や生産量にも影響が出ています。

南伊勢の沿岸部でも発生している磯焼けの様子

そこで、合同会社シーベジタブルと連携し、海藻栽培による新たな地方創生事業を展開していきます。

海藻の生産試験を実施し、南伊勢海域における海藻の成長ポテンシャルの検証を行います。実証実験後には、陸上や沿岸海域での海藻の量産技術を活用した水産資源の回復や特産品開発、新たな雇用の創出に取り組みます。

このプロジェクトは、企業版ふるさと納税を活用して進める計画で、現在は
「RIVER」「with」「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」などを通じて寄付企業を募集しています。

資金調達の進捗に合わせ、11月中に試験場を整備し、年内にはヒジキ・モズク・トサカノリ・ミリンなどの試験養殖を開始予定です。

海業の振興、デジタル化、藻場再生――。これら3つの取り組みは、どれも南伊勢町の海を未来につなぐための挑戦です。

それぞれのプロジェクトが、やがて大きな波となって、南伊勢の海から日本各地へと広がっていく。そんなビジョンを描きながら、私たちは一歩ずつ前に進んでいきます。

連携協定 締結式を実施しました

最後に協定式の様子を紹介したいと思います。協定式には、各団体の代表が登壇し、それぞれの思いや今後の展望についてお話ししました。

【協定式概要】
日時:2025年10月3日(金)11:00〜12:00
場所:三重外湾漁業協同組合本所 2階会議室
登壇者:
南伊勢町:上村久仁 町長、城勝司 水産農林課長
三重外湾漁業協同組合:清水三千春 代表理事組合長
一社フィッシャーマン・ジャパン:長谷川琢也 事務局長、島本幸奈 漁村活性統括

南伊勢町 上村久仁 町長からのコメント

この度、外湾漁協、フィッシャーマン・ジャパンと連携協定を結べたことを大変嬉しく思っております。漁業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にありますが、私たちはこの厳しさに立ち止まることなく、町・漁協・フィッシャーマン・ジャパンの三者で対話を重ね、地域水産業の発展に向けて共に取り組んでまいります。
この協定を機に、行政としてできる部分と各団体から力を借りる部分をマッチさせ、水産業の発展のためにしっかりと汗をかいていく所存です。特に、11月9日に開催される「全国豊かな海づくり大会」を単なるイベントで終わらせず、その後の発展に結びつけていきたいと強く願っております。

外湾漁協 清水三千春 代表理事組合長からのコメント

漁協は日々、漁業者と共に資源の管理や水産物の流通に取り組んでおりますが、資源の変動や担い手不足といった、私たちだけでは解決できない多くの課題が存在します。今回の締結を通じて、町やフィッシャーマン・ジャパンと力を合わせ、南伊勢の漁業をさらに発展させ、次の世代へとしっかりと繋げられるよう、全力で取り組んでまいりますので、皆様のご支援ご協力をお願いいたします。

FJ 長谷川琢也 事務局長からのコメント

南伊勢町には、2021年に水産計画を策定する会議の段階から関わらせていただき、これまで町や漁協の皆さんと共に歩んでまいりました。水産業の未来を切り拓くためには、漁師だけでも、団体だけでも、町だけでもなく、あらゆる人々の力を結集することが不可欠です。
今回の協定を契機に、この町の海や仕事、そして人をより良くしていく活動を一層加速させたいと考えております。私たちは、全国の漁村で培った多様な知見を南伊勢町に活かし、地域が一体となって未来に誇れる水産業を築いてまいります。

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