マグロの心臓を持ったら、海の仕事の解像度がぐんと上がった【南伊勢漁師塾イベントレポート】

2026年2月22日・23日、三重県南伊勢町で「南伊勢漁師塾 × TRITON SCHOOL」 が開催されました。
これは、漁業に興味を持つ人が実際の現場を訪れ、漁師の仕事や地域の暮らしを体験する1泊2日の研修プログラムです。
今回参加したのは、高校生から社会人まで世代も背景もさまざまな6名。東京や愛知、大阪から、「将来的に漁業の仕事に就きたい」「まずは現場を知りたい」といった思いを胸に南伊勢へと集まりました。
今回受け入れにご協力いただいたのは、南伊勢町で漁業を営む3つの事業者です。
・大下水産(迫間浦地区(はさまうら) / 真鯛養殖)
・清洋水産(奈屋浦地区(なやうら) / 定置網漁業・マグロ養殖・まき網漁業)
・友栄水産(阿曽浦地区(あそうら) / 真鯛養殖)

参加者は実際の現場で何を感じ、どんな学びがあったのでしょうか?
この記事では、南伊勢の海で過ごした2日間のレポートをお届けします。
当日のスケジュール
2月22日(日)
13:30 バス停「五ヶ所」集合
13:45 オリエンテーション
15:00 真鯛養殖漁場見学・作業体験
17:30 チェックイン
18:00 漁師さんと交流会・夕食
20:30 解散・就寝
2月23日(月)
05:30 定置網漁作業見学・作業体験
07:00 魚市場にて入札見学
10:00 養殖マグロの出荷作業見学
11:00 休憩・昼食
13:00 振り返り
14:00 解散
1日目午後:「育てる漁業」の最前線へ
初日は、南伊勢町・五ヶ所のバス停に集合。まずはオリエンテーションからスタートです。今回は三重県漁業協同組合連合会の協力のもと、定置網漁の仕組みや特徴について解説していただきました。

「どんな魚が獲れるのか」「魚はどのように網に入ってくるのか」など、定置網漁の基本について動画も交えながら説明を受けました。漁業の基礎を学んだうえで、いよいよ現場へ向かいます。
最初に訪れたのは、迫間浦地区で真鯛養殖を営む大下水産。

海に浮かぶ生け簀の上で、参加者たちは養殖業の仕組みや日々の管理作業について説明を受けました。生け簀ごとに育成段階の異なる真鯛が育てられており、「この魚は何年育てたんですか?」「出荷する頃には何キロくらいになるんですか?」など、参加者からも多くの質問が飛び交います。

さらに、餌やりの仕組みについても説明があり、タイマー式の自動給餌機や、AIを活用した給餌システムを導入していることなど、養殖業における技術の進化についても知ることができました。

AIを活用した自動給餌システム
大下水産では養殖だけでなく、加工や食堂の運営にも取り組んでおり、それらの施設も見学させていただきました。養殖した魚を加工・販売し、さらに料理として提供するという、漁業の新しい事業展開についても学ぶ機会となりました。

1日目夜:南伊勢の海の幸を食べ尽くす
夕方からは、漁師さんとの交流会を開催しました。
会場では、阿曽浦地区で真鯛養殖を営む友栄水産の橋本純さんが腕を振るい、豪華な夕食を準備してくださいました。なんと橋本さんは、自ら寿司を握る職人の顔も持つ漁師さん。

目の前で握られる南伊勢の地魚を使ったお寿司をはじめ、鯛めし、クエ鍋、鯛の兜煮……。テーブルを埋め尽くす海の幸は、まさに「南伊勢の海そのもの」を味わうような贅沢なラインナップです。

交流会には、漁師さんだけでなく、役場や漁協の担当者、フィッシャーマン・ジャパンのメンバーも合流。美味しい食事を囲めば、自然と心の距離も縮まります。
高校生の参加者からは、「漁師になるために、今のうちに勉強しておくべきことはありますか?」といった質問も。漁師さんからは実体験をもとにしたアドバイスが語られていました。
夜9時。熱気冷めやらぬまま交流会は終了。翌日は早朝からの漁に備え、それぞれ宿へ戻りました。

2日目朝:いざ、早朝の海へ
2日目は朝5時半からスタート。この日は清洋水産が営む定置網漁の見学・体験を予定していました。
まだ薄暗い港を出発し、漁場へ向かいます。

しかし当日は天候が不安定で、海の状況も思わしくありませんでした。漁場へ向かう途中で安全面を考慮し、今回は漁場へ向かうことを断念。港へ戻る判断となりました。
自然条件に左右されるのも、漁業のリアルな一面です。
予定していた定置網体験は叶いませんでしたが、清洋水産のみなさんのご協力により、代わりのプログラムとして別の漁業現場を見学させていただくことになりました。
まずは港で、まき網船の案内をしていただきました。船の設備や漁の流れについて説明を受けながら、参加者は実際の漁船を間近で見ることができました。

その後、養殖マグロの出荷作業を見学するため、生け簀のある現場へ船で向かいます。現場では、マグロを生け簀から引き上げて出荷する作業が行われており、参加者はすぐそばでその様子を見学しました。
大きなマグロが生け簀から引き上げられ、船の上で〆られていく様子は迫力満点。エラを切って血抜きをする作業では、まだ動いている心臓を見せてもらう場面もありました。
「触ってみるか?」
漁師さんにそう声をかけられ、参加者が手に取ると、心臓はまだドクドクと動いています。

「おお…これが生きてるってことか」
そんな声が上がり、現場は大きな盛り上がりを見せました。
その後は市場に戻り、水揚げされた魚を氷詰めしたり箱詰めしたりする作業を体験。タイミングによっては、魚を持ち上げて計量したり、箱を運んだりといった作業を手伝える場面もあり、漁業の現場の仕事の流れを知ることができました。

2日目午後:【振り返り】もし自分が漁師になるとしたら?
2日間の締めくくりは、自分の将来を考えるワークショップ。 「もし自分が漁師になるとしたら?」というテーマで、キャリアの歩みを表に描きます。

収入や暮らしのリアルを知っているからこそ、筆が止まりがちな社会人の参加者たち。そんな中、迷いなくペンを走らせたのは高校生の参加者でした。
「まずは現場を覚えて、将来は絶対に船長になる!」
その真っ直ぐな言葉に、会場は温かい拍手と笑顔に包まれました。
他にも、参加者からはこんな感想もいただきました。
「これまで『獲る漁師』しか考えていなかったが、養殖業の面白さを知り、進路の視野が広がった」(高校生)
「現場のプロと話せたことで、働くイメージが明確になった」(20代・社会人)
漁業といっても、形はさまざまです。「獲る」「育てる」。 今回の体験を通じ、参加者それぞれの中で「海の仕事」の解像度がぐんと上がったようでした。
振り返りも終わり、プログラムは全て終了。途中、あいにくのお天気でしたが、結果として南伊勢の漁業の多様さを知ることができるプログラムとなりました。
南伊勢の海で過ごした2日間。 ここでの出会いが、彼らにとって新しい一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。

漁業との出会いを、次のステップへ
今回のレポートを読んで、「漁師の仕事に興味が出てきた」 「自分に合う漁業の種類を知りたい」 「次回の漁師塾に参加してみたい」という想いを持った方は、ぜひお気軽にご相談ください。