漁業研修がきっかけで漁師になる道がひらけた~海と生きるまち・気仙沼~

漁業研修がきっかけで漁師になる道がひらけた~海と生きるまち・気仙沼~

「漁師になる!」と思ってみても、都会では身近に漁師さんはいないし、なかなかその糸口は掴めません。
しかし海とともに育ってきた宮城県気仙沼市は、「海と生きる」がアイデンティティとなっている街。漁師との出会いはすぐに見つかるし、漁師になる糸口も網の目のように広がり、さまざまな漁業、漁師の姿がありありと見えてきます。

まずは、漁業短期研修で「海が好き」「漁師に憧れる」、その夢への一歩を踏み出してみませんか?
今回は漁業短期研修に参加し、漁業から漁業へ転職した石井さん、漁業就職活動中の大畑さんに体験談を紹介します。2人の話の中には、漁師になりたいという夢に近づくヒントがあるかもしれません。

<牡蠣養殖に就業 石井洸平さんの場合>

漁業権取得を目指して

2021年に気仙沼大島で牡蠣養殖業に就業した石井洸平さん(28)は、漁業権取得を目指し京都から宮城県気仙沼に移住しました。
「漁業から漁業への転職だったので、実家がある秋田に近い東北での就業を希望しました。秋田のハローワークに行って、漁業系のサイトなどを教えていただき、このTRITON JOBで気仙沼の漁業短期研修を知りました。

実際の短期研修では、定置網2社と牡蠣養殖を1週間ずつ、3週間滞在。ひとつの町でいくつかの漁業を体験できるのはよかったです。短期研修中は、すぐに船に乗せていただき、普通に仕事をしていました。宿が海の近くだったので、浜の雰囲気を見ることができたのもここに来なければできないことでした」

石井さんは、漁業短期研修参加者、第一号!まだ手探りの状態なことがある中にも関わらず、周囲の期待に見事応えてくれました。就業先となったヤマヨ水産では、研修期間中から「うちに来てくれたらいいね〜」と話していたそうです。

「漁業権を取りたいですと相談をさせていただいた時に、『うちで力になれることはどんどんサポートする』と前向きな話をしてくださったのと、ヤマヨ水産の牡蠣は美味しいといろんなところから聞いて、日本でも有数の牡蠣をつくることに興味が湧いて勉強させていただきたいなと思い、ヤマヨ水産さんを選びました」

気仙沼では、石井さんと同世代の漁師さんも比較的多く、横のつながりも密に行われています。

「つながりがまったくないところからのスタートでしたが、養殖業はいろんな方と連携する仕事なので、人のつながりを提供していただけるのはありがたいですね。気仙沼に来てからは、牡蠣養殖について学んでいく勉強会での話題やテーマをきっかけに、同世代とつながりが持てました。心強いことだと思いますね」

石井さんは気仙沼に来て2年。今では、牡蠣養殖の作業の全般をこなし、一人で水揚げに行くこともあるそうです。

「任せてもらえる仕事も増えてきていますが、社長の武さんがいてこそですね。私一人では、とてもできません。教えてもらいながら、いろいろ経験していくことができるのは、すごくありがたいですね」

色々体験し、知ってから決める

都会では触れ合う機会のない漁業を体験できる、<漁業短期研修>をぜひ活用してほしいと石井さん。

「何も知らないで就業するのと、知ってから決めるのとは全然違うと思います。一つのところで数日の短期研修は他の地域でもやっていますが、気仙沼では3−4カ所の研修先を用意してもらえて、自分の向き不向きなど比べることができます。その上で就業先を決めることができるのは、漁業に力を入れている街しかできないことだと思うので、すごくありがたいですね」

「短期研修中はお試し住宅に住みながら、町の中心部から体験先の浜に通っていたので、どんな感じの街なのかを見ることができました。漁村って聞くと閉鎖的なイメージがあるんですけど、気仙沼は初めての人にも気さくに話してくれますし、いろいろ助けてくれますし、本当にいいところに移住できたなと思っています」

石井さんは、将来的に漁業権を得るために大島への引越し準備も進めています。

「不満はありません。優しい人たちばっかりで、順風満帆です!」

 

 

<漁師就職活動中! 大畑直樹さんの場合>

自分がやりたいことを仕事に

大畑直樹さん(22)は、今まさに漁師の就職活動中。

「大学ではロボット機械工学を学んでいました。でも将来を考えた時に、もともと釣り好きで魚を捌くのも好きで、これをできるのは漁師だなと思ったんです。自分のやりたいこと、住みたい場所に、行き着いた先が漁師でした!」

大学の同級生たちは大手企業やベンチャー企業への就職活動の真っ最中。大畑さんは漁師になる道を探して就職活動を始めます。

「漁業就業イベントに参加して、漁師にもいろんな種類があることを知り自分の考えの幅が広がりました。でも、実際に体験してみないとわからないなという気持ちがあって。ネットで色々調べていると、気仙沼で2週間の研修があるというのを知り、参加しました」

 

同い歳の漁師にリスペクト

気仙沼では、定置網漁と牡蠣養殖の<漁業短期研修>に参加。2週間の研修期間中は民宿に滞在しました。

「千葉の内陸出身だったので周囲の友達にも『漁師になりたい』て言うと驚かれるし、実際自分もそんな考えでした。短期研修に申し込んだけど、気仙沼には行ったことがなく最初は不安でした。実際に来てみると、同年代の人も漁師として頑張っている人がいると知ることができたし、年齢が近いので話しやすくて気を使わなくて。いろんな考えの人と交流するいうのが自分はこれまで経験してこなかったので、楽しくていい経験でした」

都心部から、ただ海が好きで釣りが好きでやってきた大畑さん。

「はるばる電車乗って気仙沼までやって来て、最初は方言がわからなかったんですが、分からなかったらすぐ聞くことって途中で気づきました。全く問題なく過ごせました!心配することは何もないですよ」とまずは漁業短期研修への参加を勧めています。

実際の漁業の世界を垣間見た大畑さんは、漁師になるために本格的に就職活動をしようと大学を退学。1年間で千葉県の刺し網漁、気仙沼市で定置網漁と牡蠣養殖、延縄船、石巻市でわかめと牡蠣養殖、伊豆で釣船と、さまざまな漁業を体験してきました。

「同年代の人が、漁師としてその地で暮らしているのは、気持ちの上でリスペクトが強く、先生みたいに感じて刺激になります。それに年齢が近いと、漁師になった時の生活リズムを想像しやすく、自分と照らし合わせて考えることができました。僕が疑問に思っていたことも、年上の漁師さんはそれが普通って感じなんですけど、年齢が近いと共感する面が多いので、話していてホッとします」

1年間いろんな地域で漁を見て、その土地に触れ、大畑さん自身が今後やっていきたい漁業の姿もおぼろげながら見え、どの地でどんな漁業に就くのか、今後について具体的に検討中。「気仙沼ではいろんな、いい発見がありました。環境に優しい漁をする意識が高い漁師さんもいるので、色々考えさせられますね。短期研修中は、作業も積極的にやらせていただけたので、体で感じた新しい発見がたくさんありました。
気仙沼は地域や暮らしの面で話しもできる場があり、町と関わりを持てるように感じます。やりたいことができる可能性を、圧倒的に感じるのが気仙沼です」

今、気仙沼での<漁業短期研修>をきっかけに、2人の青年が「海と生きる」決意を固め、それぞれの道を歩み始めています。

 

2023年7月1日〜8月31日の漁業体験、参加者募集中です!
https://job.fishermanjapan.com/event/4626/

 

文 藤川典良
写真 平井慶祐
※取材は2023年2月に行いました

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