みなさん、銀鮭という魚を知っていますか?
そもそも鮭にはたくさん種類があるので、普段あまり種類を意識していないかもしれませんが、スーパーなどでは「紅鮭」「白鮭」「銀鮭」このあたりをよく見かけるのではないかと思われます。
画像元:twitter王子サーモン【公式】@Oji_Salmon(許可をいただき転載しました)
表を見てわかるように、銀鮭は養殖がほとんど。紅鮭や白鮭とは違って、人の手によって育てられた魚です。
養殖された魚は天然(回遊魚)と違って寄生虫などの心配がなく、生で食べられることが一番の特徴。
他にも、キングサーモン、アトランティックサーモン、サーモントラウト……と養殖されている鮭はたくさんいますが、銀鮭の養殖は、ここ宮城県がはじまり。
成長スピードの速さに加え、身がふっくらして脂がのっていておいしい!ということが注目され、紅鮭や白鮭に変わる食材として昭和50年頃から県内での養殖がスタートしました。現在では、国内生産量の約9割を宮城県が占め、国内生産量第1位をキープし続けています。
ノルウェーやチリなど、まだまだ外国産の銀鮭が主ではありますが、ぜひ一度機会があれば、日本の漁師たちが手塩にかけて育てた自慢の銀鮭を味わってみてください。きっと、そのおいしさに震えるはず……!
ここ数年で餌の改良が進んだことや、育成・出荷方法にも工夫をこらすなど、ますますおいしい銀鮭が育ってきています。
たとえばこちらは、ある日の新人漁師の朝ごはん。
銀鮭をどどーんと載せた丼飯。食欲をそそられませんか?
紅鮭とも白鮭とも違う、美しいオレンジ色の柔らかな身で熱々のご飯を包めば、ふわっと上品な甘みが口いっぱいに広がります。
新人漁師曰く、仕事の疲れもふっ飛ぶ旨さ。
銀鮭のくどすぎない程よい脂身は、どんな料理にもよく合うと評判なんです。
そんな宮城県が誇る、銀鮭がどのように育てられているのか。
今回は、銀鮭養殖の現場を紹介します。
銀鮭、山で育つ
北海道などで採取された銀鮭の卵は、宮城県や岩手県などの山間部にある養魚場(稚魚育成施設)に運ばれ、春先に卵が孵化すると生簀の中で餌を与えられながら、すくすくと成長していきます。
山間部のきれいな水であればどこでもいいというわけではなく、水が豊富であること、年間を通して水温が変わらないことなどが、銀鮭を育てるための最低条件となります。
ちなみにこの淡水で行われる漁業を「内水面漁業」と呼びます。
銀鮭が孵化し、海にやって来るまで約半年。
この自然豊かな山奥を舞台に、銀鮭は成魚になる準備をしていくのです。
銀鮭、海へ行く
11月に入ると、銀鮭の稚魚は180g前後に成長。
いよいよ海へ向かいます。
山間部から数時間かけてトラックで陸送された稚魚は、岸壁に横付けされた「小割(こわり)」と呼ばれる小さな生簀に入れられます。
この作業を「稚魚入れ」と呼びます。
小割に入れた稚魚は、海の本生簀に運ばれ、広い生簀のなかでさらに大きく成長していきます。
余談ですが、銀鮭の生簀は基本的に多角形(6角形ないし8角形)です。
銀鮭が円を描くように泳ぐ習性があるため、無駄なスペースを省くために、なるべく円に近い形にしているのだそう。
ここにも長年の経験による知識が垣間見られます。
銀鮭漁師の仕事
稚魚入れを皮切りに、銀鮭漁師のシーズンがはじまります。
基本は1日2回の餌やり。雨でも雪でも休みはなく、魚が餌を欲する(といわれる)朝と夕方に行います。
餌は機械から流し込むパターンと、チリトリやスコップを使って投げ入れるパターンがあります。後者は労力がかかりますが、魚は動くものに反応するため、人が投げ入れることによって、魚がよく食いつくのだそうです。
餌は「ペレット」と呼ばれる魚粉などを乾燥させたもの。
近年はこの餌の改良が進み、魚の生くささなどを減らすことができました。
餌のサイズも4〜6段階あり、魚の成育段階を見ながら変えていきます。
生簀には何万匹もの銀鮭がいるため、最盛期には1生簀で1〜2トンもの餌を与えることもあるそうです。
銀鮭は餌代のほかに繁忙期の人件費などもかかるため、他の養殖物に比べてかかる経費も大きいのが特徴です。
また餌やりのほかに、網の汚れ具合(汚れがつきすぎると網の目がふさがり酸素が行き届かなくなるため)や魚の大きさに合わせて、網の交換をシーズン中に1〜2回行います。
銀鮭が生簀に入っている状態で行う網を交換は、緊張する作業のひとつ。
チームワークと漁師の腕が試されます。
4〜7月 水揚げシーズン到来
11月から海で育った銀鮭は、すくすく成長を遂げ、4月に入ると水揚げシーズンを迎えます。この頃には1.2kg程度に成長し、シーズンが終わる7月頃には大きいもので4kgを越えることも。
もともと寒いところで育つ魚なので、ここからは水温との勝負。
水温が高くなると死滅のリスクがあるため、7月末を目安に水揚げの終了を目指します。
出荷前の大事な作業が、生簀の網を寄せ、大きいサイズのものを1匹1匹小割に移す「選別」という作業です。
たくさん泳いでいる中から大きいものを一瞬で見極め、タモですくって後ろにつけている小割に移す作業はまさに職人技。
(まるで巨大金魚すくい選手権でも見ているかのよう……)
ベテラン漁師はこれを「ノールック」で行います。
タモで銀鮭を後ろに投げながらも、すでに目線は次の魚を追っているんです!!
新人漁師くんも2年目にしてようやく様になってきました!
選別された銀鮭は、1〜3日かけて「餌止め」を行います。
餌止めすることによってお腹の中をきれいにし、体内の旨味をギュッと閉じ込めるのだそう。
最近は出荷に当たって、活締めや血抜き処理をすることもあります。
その分漁師の手間はかかりますが、抜群においしい銀鮭が市場に出回るようになりました。
銀鮭漁師になろう!
銀鮭養殖は、毎日の餌やりがはじまると、なかなか休みを取れない仕事です。
でもそれは生き物相手の仕事なので、仕方のないこと。
その代わり、水揚げが終わってから1か月ほどは自由な時間もあります。
社会人になるとなかなか長い休みをとることは難しいですが、バイクで日本一周したい!なんてこともできるかもしれません。「休みがない仕事」ではなく、「メリハリのある仕事」。そう思えば、シーズン中も頑張れるはず。
そして銀鮭は、たくさんの努力によって、日々おいしさが追求され続けています。
現場の高齢化も進んでいますが、今だからこそ、まだまだ元気なベテランさんと一緒に働くことが可能です。ぜひ彼らから、たくさんのことを学び、次の世代へこの技術を繋いでいってください。
TRITON PROJECTでは、銀鮭が大好きな元気な若者を募集しています!
(文=高橋由季/写真=Funny!!平井慶祐、高橋由季)
※養殖方法は地域や個人によって異なります。この記事は宮城県石巻市雄勝町で銀鮭養殖に携わる漁師の協力のもと作成しました。
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