終わらない挑戦 ー唐桑・大目流し網漁ー

終わらない挑戦 ー唐桑・大目流し網漁ー

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皆さんは「大目流し網」という漁法を聞いたことがありますか?

流し網漁は、いわゆる刺し網の一種です。
通常の刺し網では、アンカーなどの重りで網を固定しますが、流し網は読んで字の如く、潮の流れに任せ、網を流して魚を獲ります。「大目」という聞き慣れない言葉は、網目の大きさのこと。カジキやマカジキ、モウカザメなど、大きな魚をターゲットとしているため、15~18cmと網目のサイズが決められています。

この「大目流し網」は、国の許可(海域によっては県の許可)がなければ操業ができず、深刻な乗組員不足に加え、国際的な水産資源保護の動きも相まって、廃業する船が増えてきています。

「終わりゆく漁業。いずれ自然消滅するでしょうね」

そう語るのは、国内有数のカジキ・サメの水揚げを誇る宮城県気仙沼市で、大目流し網漁を営んでいる千葉和則さん(61歳)。今回強い思いで、求人を募集するに至りました。
募集のひとつの理由は、人員不足。
通常は乗組員が5〜6名必要と言われていますが、現在は自身を含め、3名で漁を行っているそうです。

もうひとつの大きな理由は、後継者育成です。

「金輪際、大目流し網船がこの海に増えることはない。だからこそ、1隻でも船を残したい」

大目流し網漁歴30年。
終わりゆくもの。
守るべきもの。
終わらせたくないもの。
守りたいもの。
和則さんの今の思いを伺いました。

 

 

雇われ漁師から、雇う漁師へ

宮城県の北東端、気仙沼市の唐桑半島にある旧唐桑町(現:宮城県気仙沼市唐桑町)は、平成18年に気仙沼市と合併した人口約2600人ほどの小さな町です。

和則さんは、養殖業を営む漁師の家で生まれました。
周りの期待とは裏腹に、中学を卒業すると、迷わず遠洋マグロ船に飛び乗ったそうです。

「親父とは合わなかったんです。それでも漁師を選んだのは……なんでしょうね。自分のやり方次第ではどうにでもなる仕事、チャンスがある仕事だと思ったからかな」

順調にマグロ船でキャリアを重ねていきますが、10年ほど経ったある日、事件が起こります。

「最終回の操業……ニューヨークやって、カナダやって、アビジャンの沖、そこで満船になった。船頭が『会社はもう1年やって来いって言ってるんだけど、どう思う?』って相談してきたから、『現場は満船なったから、帰るつもりでいるよ』って言ったんですね。あくまで自分の意見を言った。最終的には船頭の判断で船を戻すことになったんだけど、陸に戻ると同時に会社に呼び出されて。俺が会社の指示を無視して船を戻せと言ったことになってたんです。結局人に使われるのはこういうことかって、嫌気がさした。だったら自分でやったほうがいいんじゃないかって」

時を同じくして、奥様の百合子さんと出会い、マグロ船を降りるとともに結婚。
唐桑の地で、沿岸漁業を営み始めました。

「最初は秋鮭の刺し網から始めて。冬は鱈、春はイサダとか獲ってね。少しずつ、少しずつ……」

平成になると同時に大目流し網船の操業をはじめ、平成24年に法人化。
夫婦二人三脚で、今の会社を築き上げました。
決してお金があったわけでも、人脈があったわけでもありません。

「先輩漁師を頼って、俺のおかげだ!って偉そうにされるのが嫌だったから、自分でいろいろ情報を仕入れて、船も中古で購入して。自分でやった分には、誰にも何も言われないからね。先輩たちから見たら可愛くなかったかもしれない(笑)」

15歳のときにマグロ船に乗って以来、約半世紀に渡って海で仕事をし続ける和則さんは、陸にいるときよりも、海にいるときのほうが落ち着くそうです。もちろん、奥様の百合子さんがしっかりと家庭を守ってくれているという安心感があってこそ。

和則さんが陸にいるときは、いつも百合子さんがそばにいらっしゃいます。
人手が足りないときには作業を手伝い、和則さんに代わって就業希望者の面談を行うこともあります。

「陸にいるときのほうが少ないから。期間限定で仲良くしているだけよ」

いたずらっぽい笑みを浮かべて話す百合子さんですが、そこには海の男を支える温かさと強さが滲み出ていました。

 

 

大目流し網漁。その極意。

和則さんの漁場は、時期とともに変わります。
4月は福島沖、5~7月は気仙沼沖、8~9月は北海道十勝沖、10~4月くらいまでは再び気仙沼沖。
航海日数は、一番近い気仙沼沖で3~4日、北海道で1週間程度。漁場まで行くのには、最短3時間~最長20時間かかるそうです。行きも帰りも、和則さんが一人で運転しています。

漁場に着くのは14~15時。そこから「投網」といって、船を走らせながら網を降ろしていきますが、この作業に2時間ほどかかります。遅くても17時には投網を完了させ、魚がかかるまで待ちます。

漁に使う網の大きさは、1反が32m。100反で1本の網となります。
通常はこれを5本使うそうですが、今は人員不足もあって、2~3本の網で行っているそうです。

「カジキやマカジキは、昼間は冷たい場所にいて餌を食べて、夜になると温かい場所に戻ってくる。なので、水温の境目を狙って網を入れます。ただ網を入れればいいというわけではなく、高い水温のほうに網が流れて行くように。潮目も計算して網を入れるんです」

和則さんの操舵室には、無線を始め、潮の流れを見る潮流計や水温センサーなど、さまざまな機械がところ狭しと設置してあります。

「漁師の勘っていうのは、いろんな情報分析の上にある。でも最後は、経験とセンスです」

網をあげるのは、21~22時頃。
機械で網をあげながら、かかった魚を外していきますが、魚自体が大きいため、手作業で外していくのは大仕事です。カジキであれば、体重は100キロ。大物になると、200~300 キロもあるそうです。カジキ・メカジキは、その場で鼻を切り、エラを抜いて腸をとり、20t入るというタンクに入れていきます。この作業を現在3人で行っているのだとか!

1時間から2時間ほどかけて1本の網をあげ、全ての網をあげ終わるのは、朝の6~7時頃です。ここから次の網を入れ始めるまでが、休憩時間となります。

「寝るのは日中になりますが、疲れてるからぐっすりですよ。でも、次はどこに網を仕掛けようとか考えなくちゃいけないので、自分はあまり休めないんですけど(笑)」

時化でない限りは、船が水揚げした魚でいっぱいになるまで航海が続きます。

なかなかハードですが、どんな人が仕事に向いているのでしょう?

「体力があって、真面目な人」
「ちょっとやんちゃなくらいが、ちょうどいいかな」

和則さんと百合子さんは、新しくやってくる仲間が住む場所に困らないようにと、自宅の近くに新しい番屋もつくりました。

「養殖業と違って固定給ではないから、頑張った分稼げるおもしろさがある。それが漁師の醍醐味」

雇われる側の気持ちもわかるからこそ、大事に人を育てたいと和則さんは話します。

 

 

震災を乗り越えて

「海岸に倉庫があったんだけど、漁具が全部流されて……7000万の損失。家と船が残ったからまだ良かったと思うしかなかった。震災の前の年の暮れにようやく借金がなくなって、今年からの稼ぎは全部儲け分にできるぞって思ってた矢先だったから、これどうするべって。やめようかなと思ったんだけど、網屋の社長が、『網がなかったら商売できないだろ。いくら欲しいか言ってみろ』って言ってきて。今すぐ銭はないって言ったんですけど、稼いでからでいいからって、200反……1000万くらいの網をボンって渡してくれたんです」

網屋の社長の男気が、和則さんの心を突き動かしました。

「そんなことされたら、辞められないじゃないですか。前にもその人に助けられたことがあって。しょうがない、もう一回頑張るかって。気仙沼の市場の再開と共に漁を再開しました。初水揚げしたのが、俺と石巻の仲間だった」

震災から7年。
頑張ろうとしている漁業者の想いとは相反するかのように、年々船員は減り、廃業する船は増えていくばかり。
唐桑地区では、大目流し網漁の船が5隻のみとなってしまいました(県内では、大臣・知事許可の操業を合わせて19隻)。

「もし今、俺が辞めるってなったら、また1隻、この業界から船が減る。もしチャンスがあるなら、後継者を育てたい。船とか道具とか俺のものを全部引き継いでやってくれる人。それくらいの気持ちがある人が来てくれたら嬉しいね」

 

瀧濱丸に想いを乗せて

和則さんの愛船・瀧濱丸は、平成25年に知り合いから購入した船です。
出航準備中の船を特別に見せてもらいました。

次の目的地は北海道。
漁場までは約20時間ほどかかります。もちろん、和則さん一人で、船を操縦しなくてはなりません。

操舵室には手の届く位置にタバコや湿布薬、メモ帳や雑誌などが。
その片隅に、鳥羽一郎さんのCDを見つけました。

「漁師さんはやっぱり鳥羽一郎さんが好きなんですね」とシャッターを切ると、思わぬ答えが……。

「この船、中古で買ったんだけど、実は鳥羽一郎の伯父さんの船なの。鳥羽一郎がデビューしたときに、お袋の兄貴のために作った船で、もともとは三重にあった船なんだよ。尾鷲。たまたま、俺のところにやってきた。使いやすいように自分で改造したんだけど……ほら、この装飾とか。変なとこに名残があるでしょ(笑)」

 

波の谷間に命の花が ふたつ並んで咲いている

兄弟船は親父のかたみ 型は古いがしけにはつよい

おれと兄貴のヨ 夢の揺り篭さ 

             兄弟船/鳥羽一郎

 

サングラスをかけ、タバコを咥えれば、出航の合図です。
船が小さく見えなくなるまで、百合子さんは手を振り続けます。

あの甲板で、いつか一緒に元気な若者と働くことを夢見ながら。

瀧濱丸はまっすぐに、海へと進みだします。

前略 鳥羽一郎さま
あなたが贈ったあの船は、今日も熱い想いを乗せて。
この青い海を元気に走っています。

(文・撮影/高橋由季 船上写真=千葉水産)
※2018年9月取材、2019年11月再編集

募集情報
募集職種 漁師
雇用形態 通年雇用, 正社員(研修期間あり)
給与 月給16万円〜25万円(本人の能力によって昇給あり)
※試用期間3ヶ月後、正社員登用(社会保険加入)
※歩合給は、正社員登用後に一定条件を満たした場合に配給
福利厚生 番屋あり(唐桑町内), 各種社会保険完備
仕事内容 大目流し網漁
勤務地 宮城県気仙沼市唐桑町
勤務時間 (投網)15〜17時頃(網あげ)22時〜翌4時頃 ※実働7時間程度 /漁業のため、状況によって異なる。陸上作業もあり(8〜17時)
休日休暇 月4〜6日(漁業のため、主に悪天候日)、年末年始・盆休み有、5月に1〜2週間休み有
募集期間 2018年11月01日(木)~
その他 1回の航海日数

夏期:7〜10日程度

冬期:3〜5日程度

※1航海から短期研修可
会社情報
会社名 株式会社 千葉水産
住所 宮城県気仙沼市唐桑町
社員数 3人
選考方法
選考方法 メールにて応募

履歴書提出 ※書類選考あり

面談 ※基本は現地

短期研修(1航海〜)

内定

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