創業42年。石巻市魚町にある盛信(せいしん)冷凍庫株式会社は、三重県の漁業会社が石巻に水揚げした冷凍のカツオを保管する工場としてできたのがはじまりです。
現在は、サバ、イワシ、サンマ、イカ、銀鮭などを取り扱い、石巻魚市場でNo.1取り引き業者として宮城県知事から表彰されるまでになりました。
会社名から想像するに、工場内には冷凍庫がずらりと並んでいるのかと思いきや……工場内に広がるのは巨大な製造ライン!
ベルトコンベアの上を途切れることなく魚が流れ、さらにその上を出荷用の箱が行儀よく流れていく様は、「モンスターズ・インク」さながら。工場に一歩入れば好奇心が掻き立てられ、歓声をあげずにはいられません。
「うちの社長がとにかくめんどくさがり屋で、なんでも機械化しちゃったんですね。魚を選別するのも、運ぶのもめんどくさい。でも大量に処理して稼ぎたい。それが機械化をここまで進めた原動力ですね(笑)」
おもしろおかしくお話をしてくれたのは、現社長の息子であり、盛信冷凍庫の取締役営業部長の臼井俊文さん(33歳)。盛信冷凍庫の製造ラインでは、魚の選別も計量も、なんと箱の組み立てまでもすべてが機械化。
「量と品質。相反するようなところをバランスよくとっている点ではうちが同業者の中では一番だと思っています。機械化の面で見ても、たぶん全国で一番ですね」
従業員は 27名。その少なさにも驚きですが、社員のうち6割が40歳以下と若い人材が揃っています。機械化もこれだけ進んでいるのなら、新たに人を雇う必要がないのでは?と思ってしまいますが、ベトナムや中国からの実習生を受け入れていることもあり、今後地元の若者も採用していきたいと考えているそうです。
「省人化できるのも、やっぱり人がいるからできることなんですね。機械だけでもうまくいかない。機械と魚を見ながら常にブラッシュアップしていく。うちに関しては、1次加工も2次加工もやっているので、どちらの現場もやる必要があります。ISO22000や、FSC22000、HACCPなんかの認証も取得しているので、維持していくための品質管理や書類作成も必要です。……こんなこと言うと難しく感じますけど、学歴じゃなくて、なんでも足を突っ込んでみたくなる人が合うと思います。最初からできなくていいんです。幅広く興味を持ってくれるような人だったら、きっとやりがいを持って働けるんじゃないかなと」
取材をしてわかったのは、盛信冷凍庫の仕事のことや信念を理解するには、やっぱり工場見学が一番だということ。
一つひとつの機械に、働く人への思いと、徹底した品質管理のこだわりが詰まっていました。
力仕事からトレサビまで
機械化によってもたらされたもの
「モンスターズ・インク」のような工場内をウロウロして驚くのは、スタッフの少なさと、人が行う力仕事が見当たらないということです。
「よいしょ!というような力仕事は全部機械がやってくれます。老若男女、幅広く働いてもらうための機械化でもありますね。人に負担がかかってしまっては長く働けないので。負担がかからないような仕組みづくりを心がけています」
パレットの上に重たいダンボールを積み重ねていくのも、そのパレットを目的地まで運ぶのも、全部自動で機械が行います。「機械化」と聞くと、なんだか冷たい印象もありますが、働く機械たちは、ドラゴンクエストのテーマ曲やサザエさんの音楽など、遊び心のある音楽とともに器用に仕事をこなしていきます。健気な働きっぷりを眺めていると、ものの数分で愛着が湧いてくるほどです。
実際に働いている人の声を聞いてみたくて、26 歳の同い年コンビにお時間をいただきました。就業4年目になる尾形さん(左)は、他の水産会社で働く父からの紹介で、盛信冷凍庫に入社しました。
「地元が石巻なんですけど、まさか水産業の現場で働くとは思いませんでした。本当にたまたまなんですけど、高校や大学で情報処理を専攻していたので、こういう職場っていうのは楽しいですね」
高橋さん(右)は、今年3月に他の水産加工会社から転職。初めて盛信冷凍庫の製造ラインを見たときにはこれは別格だと驚いたとそうです。
「ちょっとここまでのは見たことないですね。みんな自動化でコンピューターで操作。あれも機械、これも機械。こんなに楽していいのかなと(笑)。今でも機械を見てテンションがあがります。周りのみなさんもすごく優しくて、『随分できるようになったな』とか、『これはもう任せていいな』とか、声をかけてくれるんです」
穏やかな二人の話を聞きながら、ちょっぴりホッとした一面も。
いくら仕事が機械化になっても、職場には良好な人間関係があるようです。
若手社員の高橋さんが、今でも「テンションがあがる」と言うのが、-40度で魚を冷凍させる凍結庫。凍結が終わると、ドラゴンクエストの勇敢な音楽とともに鉄棚ごと運ばれ、人が触ることなく冷凍庫に収納されます。
冷凍加工を行う多くの会社は、この凍結庫の中に人が出入りしなくてはならず、扉の開け閉めによって冷気が逃げてしまうため、その間は凍結ができません。盛信冷凍庫のすごいところは、この凍結庫への出し入れをすべて機械化してしまったところ。これによって生産性の向上と品質の維持ができ、働く人への負担も減らすことが可能となりました(温度差によって体調を崩してしまったり、蓄膿症にかかりやすくなるそうです)。
「この鉄棚にはICチップがついているので、どの船がいつ獲った魚かというのもわかるので、トレーサビリティにも対応しています。ここまでやっているのは世界中探してもうちだけですね。冷凍した魚は、工場の隣の大きな冷凍庫で保管するんですけど、そこは回転式の立体駐車場みたいになっています。パソコンでピピっと入力すると、商品を出してくれる。大抵の冷凍庫って平積みになってるので、手前からものを出したり、ひどいところだと生産日付をごまかすようなこともできちゃうんですけど、うちは嘘をつく必要も労力もかからないので。機械化によって、お客さんとの信頼関係も築くことができました」
社長の「面倒くさい」からはじまった機械化によって、世界一の冷凍技術を手に入れ、顧客への安心安全の提供、そして従業員の負担を減らしてしまったというのが、盛信冷凍庫の強みでもあります。
「前浜」と生きる
水産加工会社に求められていること
盛信冷凍庫で扱うメインの魚は、6、7月は銀鮭とイワシ、11、12月はサバ。
巨大な製造ラインは、ひとつの魚だけのためにあるわけではなく、それぞれの魚に合わせて設定が可能となっていて、シーズンごとに流れる魚が変わります。
基本的に加工の原料(1次加工)となるものがほとんどですが、船が魚市場に入船しないときは、魚をフィレや切り身に加工する(2次加工)作業がメインの仕事になります。
2次加工の現場も、均一に解凍ができる遠赤外線解凍機、自動で3枚におろせるフィレマシーンと、機械化が進んでいます。機械化によって、人が触ることが少なくてすむというのも、高度な鮮度を保つ秘訣のひとつ。商社などを通して、全国チェーンの回転寿司店に納品されるほどの品質です。
魚を保管しておく巨大な冷凍庫も「-35度」というこだわりがあります。
「大体の冷凍保管庫は-25度くらいの設定。うちは-35度設定で、保管庫の中が-32、3度になるようにしています。商品として青魚を多く扱っているんですけど、青魚は脂が強い。これを-20度くらいで保管しちゃうと、脂焼けっていって表面が黄色くなっちゃうんですね。うちは温度管理を徹底することで、いつでも変わらない品質で出荷することができています」
そして見据えるのは、水産業の未来。
「魚っていつ獲れなくなるかもわからない。欲しいサイズが今年も獲れる保証はどこにもない。なので、うちがやっていることは、需給調整的な役割もあると思うんです。今年はタイがたくさん水揚げされているので、たくさん買って冷凍庫に保管しています。産地の水産業って漁業と水産加工の両輪でまわっているので、どっちかがかけちゃダメなんです。私たちは、前浜……目の前の海の魚を相手にしているので、変化にあわせて生きていかなくちゃいけない」
盛信冷凍庫には、機械化が進む現場を見たいと全国から視察の依頼もあります。
同業者に真似されて困ることはないのかな?と心配にもなりますが、臼井さんはニッコリ笑顔で答えます。
「水産加工業は機械化が遅れてます。どの魚が手に入るかわからないから、変に機械化しちゃうと固定化されて対応できなくなってしまうんですね。でも機械化していかなければ、どんどん産業としても取り残されてしまう。自分たちの工場を見てもらうことで、少しでも機械化に興味を持ってもらって全国的な処理量が増えれば、それは水産業にとってもいいことだと思うんです。例えばうち1社だけで石巻魚市場にあがる魚が全部買えるかっていったらそれは違いますからね。全体的な底上げはやっぱり大事だと思うんです」
人がたくさんいるからいいのではない。
少人数だからこそ、現場の負担を減らせる。
臼井さんは、これからもっと多様な働き方ができる職場を目指していきたいと思いを語ります。
「うちはあまり部署や役職という考え方はないんです。1次加工も2次加工もみんなが兼任してやる。給与も真面目に働いていれば、20代、30代と年数を重ねていく中できちんと昇給していきます。高卒で入った子もいますが、今20代前半で年収もいいほうだと思いますね。賞与も年2回あります。実際、人も辞めないんです。これからは若い世代に技術や知識を受け継いでもらいたいなと」
33歳という若さながら、頼もしさと柔軟性を持ち得た臼井さんは、大学院まで進学し、震災を機に東京からUターンをした経歴を持っています。
若手社員からも「ユーモアで熱い!」と信頼される存在。そんな臼井さんが目指す未来は、どんな世界でしょうか。
「もっとできることがあるんじゃないか。常にそんなことを考えていますね。僕としては、工場ももっともっと省人化していきたい。ユニバーサルデザインですね。誰でも働ける職場。夢は工場を2、3人くらいで回す仕組みを作ることです」
まだ見ぬ新たな仲間とともに。
盛信冷凍庫の革新的な挑戦は続いていきます。
(文=高橋由季、写真=Funny!!平井慶祐)
※取材は2021年7月に行いました。
応募申し込みフォームに不具合が生じる場合があります。お申し込み、お問い合わせは
triton@fishermanjapan.com
まで直接メールでご連絡ください。
募集職種 | オールラウンダーを目指す製造スタッフ |
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雇用形態 | 正社員・フルタイム |
給与 | 月収16.5万円~ ※昇給制度あり ※想定年収例 ・30代・入社6年目(食品安全リーダー):年収490万円 ・20代・高卒7年目:年収350万円 ・20代・高卒4年目:年収320万円 ※賞与あり(年2回) |
福利厚生 | 寮あり(TRITON IZUMI), 育休取得実績あり, 賞与あり, 寮あり(TRITON WATANOHA), 社会保険完備, 交通費支給 |
仕事内容 | ISO /品質管理, 現場作業 |
勤務地 | 宮城県石巻市魚町 |
勤務時間 | 8:00〜17:00 |
休日休暇 | 週休2日(土曜出勤有) ※年間休日100日(長期連休有り)、産休・育休の取得実績有 |
その他 | ■仕事内容 現場作業、ISO/品質管理 ※現場作業は、先輩社員が丁寧に指導します。作業に慣れてきたら徐々にISO/品質管理も携わって頂く予定です。 製造現場の中核となる人材になれる様、一緒にキャリアアッププランを考えましょう。 |
会社名 | 盛信冷凍庫株式会社 |
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住所 | 宮城県石巻市魚町1丁目9−10 |
Webサイト | http://seishin88.jp/wp/ |
選考方法 | 応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ 電話もしくはビデオ電話にて面談 ▼ 現地面談 現地研修(1週間程度) ▼ 内定 |
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