いくえにも重なる島や半島の稜線。海岸線は入り組んだリアス海岸で、あの山の向こうに太平洋が広がっているとは思えないほど、湾内は穏やか。三重県南伊勢町は紀伊半島の南東に位置し、北には伊勢神宮がある伊勢市、東には2016年G7伊勢志摩サミットが開催された・志摩市、西は熊野古道を有する大紀町、南には広大な熊の灘。
町の85%を占める山間部の斜面では、温暖な気候を活かしたミカン園が広がっています。そして、町域の約6割が伊勢志摩国立公園に指定される風光明媚な場所です。
来たれ!全国屈指の漁業の町・南伊勢町へ
町内には10の漁港施設があり、中でも最も大きい奈屋浦漁港には1日に500t以上の魚が水揚げされることもあります。水揚げ量は県内1位。市場にはまき網船や定置網で獲るサバ・イワシをはじめ、養殖マダイ、養殖マグロも並びます。もちろん伊勢海老も!全国的に見ても屈指の漁業の町なのです。
そんな南伊勢町もかつては32,000人いた町民がいまでは12,000人まで減少し、漁業者の減少・高齢化が進んでいます。これまで漁業を支えてきた漁師さんたちの技術を継承し、次世代へと繋ぎ、町の漁業を維持・発展していくために、令和4年4月から町全体で水産業の担い手育成に力を入れています。
全国的に農林水産課といわれることが多いのですが、南伊勢町では水産農林課。並々ならぬ水産業への力の注ぎ方が窺い知れます。春から本格始動予定の担い手育成事業では、漁業関係者への情報収集から、求人情報の掘り起こし、情報コンテンツの作成。短期研修「漁師塾」の開催や応募対応、マッチングサポート、受け入れ体制を整えていくなど新規就業者を受け入れるために必要なことを行っていきます。
事業は宮城県を中心に漁師の担い手育成事業を行っている一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(以下、FJ)と連携して実施しています。
今回募集する漁師コーディネーターはFJのメンバーと一緒に活動してもらいます。FJからは島本幸奈、川鍋一樹の2名の漁師コーディネーターが南伊勢町内で活動しています。また、2024年6月から地域おこし協力隊として漁師コーディネーターに加わった渡邉拓也の計3名がおり、このチームの一員となり、コーディネーターの見習いから始めることができます。未経験でも安心です。3年後には漁業・漁村の活性化に限らず、プロの地域コーディネーターとして成長できるよう私たちも全力で応援していきます。
人と人との間に立ち、調和できる存在を
新たに始まるこの事業で、重要な役割を担う「漁業・漁村活性化コーディネーター」を募集しているそうです。これまで多くの移住者を呼び込んできた地域おこし協力隊制度を活用しての募集となり、受け入れ先は水産農林課。まさに羽根さんの仲間となる存在として、どのような人材を求めているのか本事業を担当する水産係の羽根俊介さん(右)と連携して事業に取り組む三重外湾漁協の植村泰士さん(左)にお話を伺いました。
「正直、初めてFJさんのやってる担い手育成事業の話を聞いた時は震災復興での活動で同じようにはやれないんだろうなって思ってたんです。でも、実際に石巻へ視察に行かせてもらって、漁協や親方漁師さんの話を聞かせてもらったら、いろんな人の思いが重なり合って事業を推進しているんだなってことがわかって。全国どこの漁村でも課題は一緒で、南伊勢町では南伊勢町にあったやり方でできる可能性があるんじゃないかと思ったんですよね。」
高齢化・少子化は日本のどの業態にも、地域にも共通した課題。特に漁業は、高齢化と年代の空洞化に加え、漁業権を取得しなければ操業できないというハードルがあります。漁師になりたい希望者がいても、魚種や漁法、後継者を育てる気概を持った親方漁師の存在など、さまざまな要素から相性を見極める必要もあります。
「南伊勢町として、8年位前から移住定住事業に力をいれていて、漁業をしたいですって相談もあったんですけど、漁業権や住まいなどの問題があったり、すぐには解決できないことも多いんで、たらい回しになって漁師への道に進めずにお終いってことがあって。漁業就業の相談窓口の顔となり、漁師や漁協・地域との間にはいって調整役となる人が必要なんちゃうかなと思ってるんですよね。」
「なんというか、剣と魔法どっちも使い分けられる人だといいなって思ってます。新しいことを始めると、きっと色んな人が色んな意見を言うてくると思うんですよ。そんな時に、これから漁師の担い手を受け入れようとしている親方漁師の声も、地域の人の声も、県外からやってくるであろう新人漁師の声もちゃんと聞いて、地域にとってより良い選択を考えていける人だと嬉しいですね。
あとは、少しずつ勉強しながら、漁業権のあり方もきちんと理解してもらう必要があると思います。まあ、僕らもこれから勉強しやんとですけどね」と、羽根さん。
「漁師さんや漁業なんて今まで関わったことがない・・・という方でも安心してください。FJさんとの連携事業なので、事業に関することは少しずつ教えてもらったら大丈夫です。海が好き、海産物が好き!という方なら、すぐにいろんな発見があるはずです。同じように地域おこし協力隊としてやってきた方々もいますので、困ったときにはお互いに相談し合ったり、地域活動に一緒に参加する仲間になれると思いますよ」と植村さん。
情熱をもってこの事業を動かそうとしているおふたりの話は、まだ見ぬ仲間に優しく語りかけているようにも見えます。きっと、海と山とが交わり、温かな調和の取れた南伊勢町の景色のような未来予想図を描いているのでしょう。
ハードの課題、ソフトの課題
南伊勢町にとって水産業は、なくてはならない産業。後継者不足の問題が深刻化し、担い手育成事業をスタートさせますが、販売や流通、資源管理の課題も浮き彫りになりつつあります。現在の流通経路だと、市場に水揚げされた魚は鮮魚のまま買われて南伊勢町を離れてしまうのがほとんどだそう。
「町として水産加工場を整備し、水揚げした魚にひと手間かけることで雇用が生まれ、今よりも高値で売れるようになれば外貨を稼ぐこともできるんじゃないかと考えています。漁業を存続させていくことが、町の経済を回し続けることになるんじゃないかと思うんです」
「もし、この町から漁業がなくなったら、水産加工業もなくなり、卸業者さんも撤退していってしまうだろうし、町の衰退が一気に加速してしまうと思うんですよね。町として水産加工のハード面整備も、担い手事業の推進と両輪で考えて、長期的なプランで考えながらやっていかないといけないんだと思ってます。
町の経済の循環を絶やさないために、そして発展させていくためには外部からの新たな人材の力が必要不可欠です。漁業・漁村活性化コーディネーターになる方には、漁師さんはもちろん、漁協や水産農林課、FJと一緒にチームを組んで、いろんな人からのたくさんの意見を聞いて、議論を重ねながら着実に進んでいきたいですね。これから先、適正な南伊勢町の漁業のあり方も一緒に模索していける仲間になっていけるといいなと思ってます」
漁業・漁村活性化コーディネーターとなる人には、「海」の魅力を伝え、漁業の担い手を増やす取組みを行い、漁業・漁村の調整役として活動してもらいます。そして、漁協や町とともに漁業の受入体制を整え、水産業全体の情報発信を行ってもらうことになります。
採用条件は3つ
基本的に、漁業の課題解決に興味があるひとであれば、どなたでもご応募いただけます。必須の条件が3つあります。
必須条件
① 普通運転免許があること
② あきらめず、投げださず、続ける気持ち
③ 地域に住んだ経験や、ゼミや研究室などを通じて地域でフィールドワークをした経験がある
漁業を取り巻く課題は複雑です。すぐに成果が出ません。それでも、笑顔で前を向き、地道に調整し続けられることがコーディネーターに求められます。他にも、採用の際に加味する事項として以下のものがあります。
歓迎要件
・誰とでも元気に挨拶ができ、雑談を楽しめる
・相手の話をさえぎらずに、最後まできくことができる
・ワード、エクセル、パワポでの業務経験がある
・小規模なイベントの企画・運営経験がある
・漁業や魚の知識・職歴(好奇心を持って覚える気持ちがあればOK)
・日本語で文章を書くこと、書類を作ることが苦ではない
※別途、地域おこし協力隊の地域要件を満たしている必要があります。詳しくは下記、募集要項の募集対象参照
1年目の仕事は、漁業・漁村活性化コーディネーターの”見習い”です。漁業の問題解決につながる業務を、先輩コーディネーターに教わりながら、指示のもとに行っていただきます。1年目の主な仕事は①〜③です。同時期に着任したメンバー全員で取り組みます。
<1年目の主な業務>
①漁師さんと仲良くなる!【関係構築】
コーディネーターの仕事においてもっとも大切なことは関係構築です。漁師さんや水産業関係者と気軽に話せるようになり、良い関係を築くことがコーディネーター業務の第一歩です。そのためにも、現場に毎日出向き、挨拶をし、できるだけ多くの話を聞きます。時には実際に漁を体験することをとおして、漁業の現場や課題を理解していきます。
南伊勢には1000人ほどの漁業従事者がおり、複数の漁業形態があります。約半年間から1年をかけて、関係構築のために以下のようなプロセスや研修を行っていきます。
・各漁村集落の漁師のリーダーを務める管理委員さん等への挨拶(17集落)
・三重外湾漁協など関係団体への挨拶
・主要漁業の体験(まき網船、定置網船、マグロ養殖事業、真鯛養殖事業など)
・体験レポートの作成(HPやNOTE等での情報発信)
・関係者インタビュー(情報発信や課題の把握のため)
・関係者の顔と名前を覚え、連絡を取り合える関係性づくり
・漁師さんとの交流(各種イベントのサポートや歓送迎会など)
・若手漁師のコミュニティづくり
難しく考える必要はありません。しっかり挨拶をすること。話を最後まで聴く姿勢を持つことができれば大丈夫です。まずは1年間をかけて自分の名前を覚えてもらうことを目指します。
②漁師の”採用”をサポートする【担い手採用支援】
漁業には個人経営もあれば法人経営もあります。まき網船、定置網船、マグロ養殖事業など種類も様々です。”稼げる仕事”としての漁業もあれば、個人の暮らしや働き方のニーズに合わせて働くこともできるのが特徴です。しかし、そのような漁業の働き方は、一般の方には知られていません。そのため漁業を就職先とする人が減ってきているのが現状です。
地域の漁業の深刻な課題は「採用」です。漁師になりたい担い手を見つけることです。そこで私たちは、忙しい漁師さんたちに代わり、漁業の魅力を伝えて、募集や採用をサポートさせてもらっています。いわば、新人漁師のリクルートです。具体的には以下のようなことをします。
・漁業者ヒアリング(採用条件や仕事内容の整理)
・専用求人のウェブサイトへの掲載( https://job.fishermanjapan.com/ )
・就業説明会イベントへの参加(年間数回)
・漁師塾など体験イベントの企画・調整・集客・運営・フォローアップ
・新規就業者の研修・サポート(年間数名)
単純に情報を集約して、求人記事を書くだけでは応募にはつながりません。採用をしたことがない漁師さんも多いため、基本的な事柄から確認していきます。漁師や漁村のみなさんにとっては当たり前になっている漁業や暮らしの魅力を伝える工夫をしたり、採用条件を改善するなど、一件の募集にも数ヶ月の労力を必要とします。現状では、メンバーが足りず業務が追いついていないため、まずはこの仕事から取り組んでもらいます。この「担い手の確保」こそが、未来の漁業を支える根本的な取り組みでもあります。
なお、職業紹介責任者講習などの研修を受け、スキルアップをはかることができます。
③その他、業務
<会議の運営・記録>
・全体会議及びチームMTGのセッティングと議事録作成(週4回程度)
<研修や報告>
・宮城県石巻市で2週間程度の初任者研修
・地域おこし協力隊としての定例会議や研修
・月報等の報告書の作成
・経費精算書の作成(毎月5日締め切り)
<イベントやSNS>
・町内で実施される水産関係イベントの補助
・SNSアカウントの開設・更新(業務広報として週1回程度)
・事務所の管理・清掃
また、地区の祭りや清掃活動などへの参加は、業務ではありませんが、地区の住民としてしっかり参加してください。
<2年目以降のステップアップ>
2年目以降は、上記の①〜③の業務に加えて、業務範囲を広げて各人に担当を持ってもらいます。
漁業の「生産性向上」や「海洋資源管理」、熟練漁師さんたちの「技術継承」などに関する取り組みが業務としてプラスされる予定です。
例えば、「生産性向上」については、業務フローの整理・効率化やデータ分析、コスト削減のためのデジタルツールの導入など、まだまだできることが残っていそうです。
資源管理についても、法律に定められた1年間の魚種別の漁獲可能量を守れるように、水揚情報をデータ管理するなどのサポートも進めていきたいと考えています。海洋環境を守っていくために必要な藻場再生や磯焼け対策にも取り組んでいきましょう。
また、「技術継承」については漁師の平均年齢80歳の漁村で、熟練漁師たちから技術や権利、漁具漁船をよいかたちで継承し、次の世代に残していけるように準備をしていきます。
2年目以降もチームでサポートし合いながら業務にあたります。本当に必要とされている取り組みを見極めるため、1年間以上時間をかけて現場に入りこみ、漁師さんたちの目線にたった取り組みを作っていきます。
魚を獲るだけが漁業ではありません。海の環境を守り、漁師さんたちの暮らしや技術を守っていくために、みなさんの身につけてきたスキルや経験をいかしてみませんか?
震災、コロナ、さまざまな災禍を乗り越えるなかで、働き方も変わってきました。震災はSNSで繋がることが当たり前になり、コロナ禍はオンラインが一気に加速して働く場所を選ばなくなりました。しかし、その場所に行かなければ見えないものや感じられないものはたくさんあります。
内にいたら見えないことも、外からなら課題が見え、変えていくことがきっとできます。変わらない海と山の自然の中で、あなたが町を魅力的に変えていくことで、あなた自身も魅力的な人になっていくでしょう。
課題が大きいほど燃えてくるというあなた!
漁業・漁村活性化コーディネーターとして活躍しませんか?
南伊勢町であなたを待っています。
募集職種 | 地域おこし協力隊 |
---|---|
給与 | 年収279.6万円 【給与・賃金等】報償費年間2,796,000円 (基本報償費:233,000円/月) ※時間外手当、退職手当等はありません。 活動日数が16日/月に満たない場合は日割り計算により支給します。 【活動日数】20日程度/月 【活動時間】概ね8時間程度/日 ※土日祝日が活動日となることもあります。活動開始時間・終了時間及び休日は活動状況により変動します。 |
仕事内容 | 漁師コーディネーター |
勤務地 | 三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦3057 |
勤務時間 | 活動日数:20日程度/月、活動時間:概ね8時間程度/日 |
募集期間 | 2024年09月11日(水)~2024年09月30日(月) |
その他 | 【雇用形態・期間】 ・「南伊勢町地域おこし協力隊」として町より委嘱します。 ・町との雇用関係はありません。 ・初年度の委嘱期間は委嘱日から年度末(3月31日)までとします。 ・任用開始は原則として令和6年3月〜4月(応相談) ・期間は更新することができ、最長3年間とします。 【募集対象】 学歴不問 未経験歓迎 必須条件 ・普通運転免許 ・あきらめず、投げださず、続ける気持ち ・地域に住んだ経験や、ゼミや研究室などを通じて地域でフィールドワークをした経験がある ・地域おこし協力隊の任用要件(生活の拠点を3大都市圏をはじめとする都市地域等から南伊勢町内へ移し、住民票を移動することができる人。地域要件については、総務省が設定している基準による) 歓迎要件 ・誰とでも元気に挨拶ができ、雑談を楽しめる ・相手の話をさえぎらずに、最後まできくことができる ・ワード、エクセル、パワポでの業務経験がある ・小規模なイベントの企画・運営経験がある ・漁業や魚の知識・職歴(好奇心を持って覚える気持ちがあればOK) ・日本語で文章を書くこと、書類を作ることが苦ではない 【待遇・福利厚生】 ①活動経費 協力隊活動に要する経費は、町から隊員へ交付する「地域おこし協力隊事業補助金(上限年間1,736,000円)」から支出します。委嘱内容や予算等に応じて調整します。 協力隊活動に要する経費は、町から隊員へ交付する「地域おこし協力隊事業補助金」から支出します。固定の経費として、住宅家賃、燃料費、傷害保険料などがかかります。委嘱内容や予算等に応じて調整し、受け入れるフィッシャーマンジャパンや役場と話し合って、支出します。 ②住居 町と協議のうえ町内に住居を決定し、家賃は活動経費から支出します。(転居にかかる費用、光熱水費、自治会費等は本人負担とします。住宅は借家や町営住宅などを想定しています。) ③自家用車 自家用車は原則隊員本人所有の車両を使用してください。自家用車を所有していない人は活動経費でリースすることも可能です。 ※活動時も自家用車を使用していただくことがあります。 ④保険・年金 社会保険や雇用保険には加入しません。各自で国民健康保険、国民年金に加入することとし、その経費は本人負担とします。なお、活動中の傷害保険等には必ず加入することとし、その経費は活動経費から支出することができます。 ⑤その他 ・生活に必要な経費は本人負担となります。 ・兼業については、協力隊活動に支障がない範囲で可能とします。事前に担当課へ連絡してください。 ・活動について、疑義や問題が発生した場合は、協力隊員と町、受入事業者(フィッシャーマンジャパン)等の関係者で協議して対応します。 |
会社名 | 南伊勢町 |
---|---|
住所 | 三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦3057 |
Webサイト | https://www.town.minamiise.lg.jp/ |
その他 | https://www.instagram.com/minamiisetown_official/ |
選考方法 | 応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ オンラインにて面談(Zoomなど) ▼ 必要書類提出 ▼ 現地にて説明会・面接 ▼ 内定 (必要書類) ・南伊勢町地域おこし協力隊応募申込書 1部 ・応募用紙 1部 ・運転免許証の写し 1部 |
---|