ビルの屋上テラスで火を囲みバーべキューをする若い女性たち。傍らにジャグジーがある豪華スペースで、大粒のホタテがジュワリと音を立てる度に歓声が上がります。場所は神奈川県川崎市。主催しているのは、三陸の水産業に関わる若手が立ち上げた一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンです。
このバーベキューイベントは昨年11月より毎週末に連続開催し、食材のストーリーを漁師から聞きながら、石巻直送の海産物を味わうという内容。同様に東北各地で奮闘する農家や味噌蔵など異業種とのコラボレーションで、新たな価値を生み出し注目を集めています。
若手漁師たちが繰り広げる快進撃
フィッシャーマン・ジャパンは「真に稼げてカッコいい漁師」をコンセプトに、2014年7月に設立。産業の新しい仕組みに大胆に切り込み、次世代へと続く「仕掛け」を続々と提案しています。そのひとつが上述のバーベキューイベント。
イベントだけでなく、漁師の住まいをサポートするシェアハウス整備や、東南アジアや大手スーパーへの販路創出、地元の高校への進路相談など、深刻化する担い手不足と更なるマーケットの拡大に、それぞれのメンバーが得意分野を活かし、地元石巻から海外に至るまで各地を奔走しています。
フィッシャーマン・ジャパンは、11名の水産業従事者と、3名の事務局スタッフ計14名で構成されています。そのメンバーの顔ぶれは多彩。それが彼らの魅力でもあり、強みでもあります。
メンバーの経歴は様々。生まれ育った地域で家業を継いだ漁師だけでなく、漁師に憧れゼロから挑戦した漁師、一度海から離れた後に帰郷した漁師もいます。また、本来漁師とは売る側と買う側という正反対の立場にある鮮魚・活魚屋も仲間になっている他、水産業とは無縁の世界からその魅力に惚れ込んだ「女子」やIT従事者が運営を支えています。
個性が強いメンバーが夜な夜な集まるミーティングでは、業種の異なる彼らならではの意見が飛び交います。真剣な面持ちで話しているかと思えば、時折大爆笑が起こることも。仕事相手でありながら、サークルのような、スポーツチームのような空気感が漂っています。
志に集まる個性。
そんな一見“バラバラ”な彼らをつなぐもの。水産物販売事業の責任者を務める津田祐樹(つだ ゆうき)さんは、それが「志」だと言います。
「私達はそれぞれが自分の事業を抱えていて、自分や自社の従業員が食べていけるようにそれぞれが独立して経営をしています。フィッシャーマン・ジャパンを立ち上げなくても生計自体は成り立ちます。生活する為に集まった訳ではなく、同じ志があるからこそ行動を共にしている。だから個性は強烈ですが、ぶつかることはないですね」
津田さん自身は石巻で約40年続く鮮魚店の2代目。漁師から魚を買い取り販売する立場です。一度経営学を学ぶ為に石巻を離れましたが、家業を手伝う為に戻って来たUターン者でもあります。
「経営が軌道に乗ったらまた家を出るつもりでした。でも震災で水産業の弱点が浮き彫りになった。このまま誰かが動かなければ水産業が終わる、自分がやらなくては、と思いました。しかし、自分がいくら販路を探してきても、商品を充分に調達出来ない。ひとりでは限界がありました」
同じ頃、一方の漁師たちも課題を抱えていました。漁師は魚を納品したらそこで仕事は終わり。どんなにこだわっても、それに見合った価格で売れない仕組みが根付き、安定した収入を見込めないことは後継者減少の一因にもなっていました。既存の流通の形を変えるには、漁師以外の力が必要でした。
悩み苦しんだ彼らの「志」は、業種や地域を超えて自然と導き合い、最強のチームとなりました。そして「東北の水産業ではやったこともないような革新的な事に挑戦しよう」という思いを共有し、チャレンジを続けています。
だけど思いだけでは、何も解決できない
カッコいい漁師になる一番の条件はあくまで「稼げること」。経済のベースを確立し、持続可能な事業を展開することだと、フィッシャーマン・ジャパンは考えています。
「本当に後継者を育て、水産業を盛り上げたいなら、まず漁師が正当に稼げる仕組みを作ることが必要です。今、自分達の世代がしっかりと稼げる経営体制と労働環境を築かなければ、いくら美しい言葉を並べたところで後継者も仲間もついてきません」
ブルーツーリズムや魚食文化を生かした提案、地方活性のための新しいコンテンツつくりなどといった彼らの活動の中には、水産業の可能性を最大限に広げようという信念が見えてきます。
そして今、新たに挑んでいるのは新たな流通システムの構築です。募集をする職種は「生産者コーディネーター」という役割です。
「漁業の知識がなくても、まずは挑戦してみたい気持ちがあることが大事。最終的には学んで欲しいですが、とにかく勢いがあって、大変なことも楽しめる人がいいですね」と津田さん。
石巻の水産業の可能性を活かすというしごと
日本屈指の水揚げ量を誇る石巻の港には、年間200数十種類の海産物が揚がります。これは、海流、気温、地形などの自然条件が揃うからこそ。石巻や三陸の海は世界中のどこにもマネのできない資源の宝庫なのです。
新たに募る《生産者コーディネーター》というしごとについて、津田さんはこう紹介してくれました。
「浜の人には大切にしてきた考え方があり、消費者には消費者なりの希望があります。《生産者コーディネーター》はその間に立ち、消費者のニーズを漁師に伝え、逆に海や漁師の背景やストーリーを消費者に伝える、通訳のような存在です。また、この有り余るポテンシャルを生かす提案ができることも、かなりやりがいがあると思います」
例えば、インターネット販売やイベント企画。フィッシャーマン・ジャパンでは「MERMAN(半漁人)」という会員サービスを展開しています。こだわりの海産物が買える他、漁師と直接触れ合えるイベント情報の発信など、消費者と生産者との距離を縮める大切な要素となっています。これは漁師の力だけでは出来ないこと。まさに両者の代弁者として潤滑材の役目を担うのが《生産者コーディネーター》です。
人間だもの。だから「フィッシャーマン」は強くてアツい
フィッシャーマン・ジャパンの活動は、もしかしたら一見盛大なことを成し遂げようとしているように見えるかもしれません。だけど、彼らを突き動かす原動力は、もっと身近なところにありました。
「安定しないから」と海から離れざるを得なかった漁師仲間がいたこと。「大変だから」と子供に跡を継がせたくないと言う親がいたこと。仲間や家族といった一番大切にしたい場所で、悔しい思いを経験してきました。
共通するのは、若者や子供たちに「漁師になりたい!」と思われるような産業にしたい、という純粋な願い。だからこそフィッシャーマン・ジャパンは「同志」であり、また多くの「漁師じゃない人たち」の共感を呼ぶのかもしれません。
新しく、かっこいい水産業の礎を築こうと前進するフィッシャーマン・ジャパン。創造と革新を繰り返すアツい挑戦者たちの中で、更に新しいことに挑戦すること。そして何よりも刺激し合える仲間と戦えることは、かけがえのない経験となるような気がします。
(取材日:2016年1月31日 文:佐藤睦美 写真:Funny!!平井慶祐)
給与 | 18万円~ |
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勤務地 | 宮城県石巻市千石町 |
勤務時間 | 8:30〜17:30 |
休日休暇 | 土日祝日、年末年始、お盆期間 |
募集期間 | 2017年03月01日(水)~2019年02月17日(日) |
会社名 | フィッシャーマン・ジャパン |
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住所 | 宮城県石巻市千石町8-20 |
Webサイト | http://fishermanjapan.com/ |
通販サイト | http://store.shopping.yahoo.co.jp/fishermanjapan/ |
選考方法 | ※新型コロナウィルス感染拡大防止措置として、現地対応(面談・研修)の受け入れ時期を慎重に判断させていただいております。お電話やビデオ電話などでの企業説明や相談なども行っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 応募 ▼ フィッシャーマン・ジャパン担当より電話にて連絡 ▼ 写真付履歴書の提出(書類選考) ▼ 電話もしくはビデオ電話にて面談 ▼ 現地面談 現地研修(1週間程度) ▼ 内定 |
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