宮城県石巻市北上町十三浜字大指へは、石巻市街地から車で約40分。北上川を横目にしばらく車を走らせ、いくつかのトンネルを抜けると生命を感じる碧い海が見えてきます。十三の浜があるから「十三浜」。
雄々しい山に囲まれた道は険しく、かつての人々は行き来するのも苦労したことでしょう。だからこそ、ここに住む人々は協力し、互いを敬いながら生きてきたのです。
阿部勝太(あべ しょうた)さんが代表を務めるのは「漁業生産組合 浜人(はまんと)」。震災後、浜の漁師家族が4つ集まって、2011年10月11日に生産組合を設立したのが始まりです。
阿部さんは一度外に出て様々な仕事を通じて多くのことを学び、家業を継ぐために戻ってきました。その経験から、地元の若手漁師や年配の漁師、そして漁師を志す若い移住者をも受け入れ、幅広い年齢層の仲間とこれまでの常識を打ち破るチャレンジを繰り返しています。
「生産組合として漁師家族が4つ集まって運営する事は、今ではもう語れないくらいの苦労がありました。これまで助け合ってきた中で、少しづつパワーバランスが整いつつあります。物つくりにしても、商売にしても、個人では出来ないことができるようになってきました。」と、阿部さんは過去を振り返りながら話します。
設立から5年、その歩みはまだまだ駆け出しかもしれませんが、ここに住むかつての人がそうだったように協働して前に進んでいる会社です。さらに比較的に若い浜の気質も加わって今その名を全国に広げています。
外から就職にくる人に向けた環境づくり
今後の浜人を20名くらいのスタッフで運営していく事が理想だと考える阿部さんは、外部から就職に来る人と交流しやすい環境づくりも行っています。
漁師のシェアハウス「TRITON 13」をつくったのもその環境づくりの一環。実際に、現在2名のスタッフがシェアハウスに住みながら浜人で働いています。
2015年4月から心機一転移住をしてきた大泉真介(おおいずみ しんすけ)さんは漁師になって1年。以前は県内の他地域にて郵便局員として働いていましたが、「漁師そのもののあり方を変える」という阿部さんの言葉に引き寄せられるようにこの職場にやってきました。
漁師となった今、代表の描く漁師の姿を共に追い求めています。好きな音楽を聴きながら作業の後片付けをする、くしゃくしゃに笑う顔が何とも満たされています。働いている姿が美しいという事を感じさせてくれる表情でした。
前代未聞!?漁師のシフト勤務&定年制度
ここでは、全員がシフト制です。漁師は年中休みなく働いている印象があり、休日の遠出なんてもってのほかで朝から晩まで働いていると思われがち。
「外でいろいろな仕事をしてきたので、地元に戻って漁師になった時、『なんで休みなく働くのが当たり前なんだ!』と感じたんです。いつか変えてやろう、と思いました。」
販路を自分たちで切り開き、水揚げや受注から発送までの流れ、そして在庫管理など、社内でコントロールできるようにすることで、阿部さんは本当にその思いを実現させることができました。
さらに、有給休暇や希望休暇もとることができます。事務室の壁にはシフトを管理する1枚の紙がはられています。誰かが休暇をとっても、別の誰かが補うため、生産ラインに支障が出ないよう工夫されているのです。
移住漁師である大泉さんも最初はかなり驚いたそうですが、漁師の仕事はきついとか、厳しいというイメージは払拭され、これからの未来を思い描くようになったといいます。
もう一つの阿部さんのチャレンジは、「漁師の定年制度の改革」です。
年を重ねた熟練の漁師たちは、何歳になっても海で働くことを生き甲斐としている方も多くいます。でもそこには働かなくては食べていけない現実もあるのです。
「稼げて、やりがいのある海の仕事」を目指す阿部さんは、いずれは退職金をだせるような制度を整え、両親の世代には漁師引退後に海以外の生き甲斐を見つけられるようにしたいと考えています。
「生涯漁師」ではなく「引退」を意識するということは、世代交代や人材育成の意識にもつながっていくのです。
自身の老後を考え、後輩の育成を考えながら働く事が出来る場所がここにあります。
武器は「妥協を許さない精神」
浜人は、1月から4月がわかめの作業。これが一番の売りです。5月から6月には昆布、夏場の7月、8月は漁期は落ち着き夏祭りの出店などに出向きます。9月から12月は秋鮭漁が待っています。天然の秋鮭を刺し網漁で水揚げするので漁師の醍醐味ともいえます。また、通年を通して帆立の養殖を行っています。
自分の収穫したものを、誇りを持って自分の手で販売する。はじめは周囲からも反対されたそうですが、今では約1,000件ほどの取引を抱えています。スーパーや百貨店をはじめ、飲食店、個人のお客様にも商品を提供しています。ここまでの提携ができるのは、みんなで運営しているからこそです。これが個人ではできないことの一つです。
普通個人では安定した量の出荷は難しくなりますが、足りない分を全体で補い合いながら販売する事で供給が安定しています。こだわっているのは、「食べる人に作り手や浜を知ってもらえるような売り方」。
もともと、浜の味を全国の食卓に届けたいという思いから始まっているので、商品には必ず、産地、生産者、商品名が明記されたラベルが貼られています。時に、このラベル使用が認められない時は取引を再検討することもあるのだとか。
このこだわりは会社にいい緊張感をもたらしています。ラベルが商品を背負ってたつので、必然的に物つくりへの責任が発生します。もちろんおいしいから食べたいと思うのが消費者です。阿部さんたちの妥協を許さない精神が、より一層いい物をつくり、付加価値のある商品として取引されていくのです。
あくまでも手作業にこだわる袋詰めの作業もみんなで行います。機械の導入を検討していないのは、「浜の人と全国の消費者の皆さんとのつながりを大事にしたい」という気持ちがあるからかもしれません。作業するみんなの手もとにも、表情にも愛情が現れています。
ラベルの貼られたこの商品こそが浜と全国をつなぎ、次なるステージの準備を整えてくれています。
「作業の繰り返しは長くて地味だけど、売り出しの時は本当に嬉しいし、楽しいです。漁期の落ち着く夏場に出店に出向きます。その折に、消費者の方から直接いただく生の声はとても励みになります。」とスタッフの1人が話してくれました。
良いわかめの色とは、青々とした草色だと聞きました。荒々しい外洋にもまれると、わかめは歯ごたえのある美味しさと、早春を感じさせる草色を持ち合わせるようです。
以前から三陸でも高い評価を得ている十三浜のブランドわかめは、荒々しい外洋と、北上川から注ぎ込まれる栄養たっぷりの水など、恵まれた環境のおかげ。
でも、阿部さんは言います。
「環境に甘えず、最後の努力と妥協しないでやり抜くことが突き抜けた価値を生み出すのだと思います。」
若い代表のこの意識が、数々のチャレンジを実現させ、成長し続ける浜人の原動力となっていることは間違いありません。
それぞれが夢を持って、ずっと一緒に働ける場所
今回募集するのは、事務と加工場兼務の女性1名(パート勤務)と、海の仕事と加工場を兼務する男性3名(漁師)です。阿部さんは一度決めたからにはずっと一緒に働けるようにと願っています。
「従来の漁師のイメージとは違う新しい働き方を目指すこの会社で、つくる楽しさ、売る楽しさを一緒に味わえる人を探しています。そして一緒に働き続けた先にそれぞれの夢を持って、その夢を大事に、仲間と豊かな人生を送りたいですよね。」
阿部さん自身も、自分の代を終えた時、自らが用意した制度を利用して次のステージに進んでいくのかもしれません。
(取材日:2016年5月13日 文:竹内久古 写真:Funny!!平井慶祐)
給与 | 18万~25万円 |
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勤務地 | 宮城県石巻市北上町十三浜 |
勤務時間 | 5:00〜16:00(休憩1時間) ※天候・季節・状況に応じて変動あり(所定時間外労働あり) |
休日休暇 | 週1日 年間80日以上 シフト制で希望休あり |
募集期間 | 2017年03月01日(水)~2025年12月31日(水) |
その他 | ・募集職種 海の仕事と加工場を兼務 ・仕事内容 ワカメ・昆布等海藻養殖、ホタテ養殖、秋鮭漁(刺し網) ・条件 免許:普通自動車免許(マニュアル必須) 経験:未経験OK 年齢:45歳まで(長期勤続によるキャリア形成のため若年者等を対象) こんな人にきてもらいたいです。 海が好きで、体力のある人。海藻、貝類の養殖から天然魚の網漁まで幅広くやっていますので、様々な漁業に興味のある人には満足いただける職場です! |
会社名 | 漁業生産組合 浜人 |
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Webサイト | http://www.wakamo.jp/ |
選考方法 | TRITON JOBから応募いただきます ▼ TRITON PROJECTよりメールにて連絡をします ▼ TRITON PROJECT 公式LINEを追加いただき、チャットにてやりとりを開始 ▼ LINE内で、サポート窓口と電話での簡易面談 ▼ LINE内で、エントリーシートの提出をお願いします ▼ 書類選考・現地での面談・研修などの調整をします ▼ 選考の結果、合否をお知らせします |
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