「漁師や漁業を守りたいっていうよりは、この福貴浦を廃れさせたくないっていう思いが強いかな。漁業は人がやるものだから、人がいなければどの浜も廃れていく。だから、人がいないといけない。特にこれからやってやろうっていう若い人さ」
そう話すのは、石巻市の福貴浦で牡蠣養殖を営む阿部一弘さん(59歳)。2015年から1人の若者を受け入れ、育成に力を入れてきました。2024年には、一弘さんのもとで育った若手漁師が個漁師として独立する予定です。そんな一弘さんが次に目指すのは、事業承継の形で、牡蠣養殖を引き継ぎ、この浜を次世代に残していくこと。
「養殖を新規参入で始めるのは難しい。だから、後継者がいないところが廃業していくばかり。そうなったら自然と浜も廃れてしまう」
事業承継型の求人というのは、もし応募者にやる気があれば、漁具や船なども全て引き継ぐこともできるというもの。事業承継をしてどんな未来を目指しているのか。福貴浦に対する思いや実際にやることになる仕事についてインタビューしました。
楽しいことも、辛いこともある。それが漁師。
一弘さんの家が漁師を始めたのは、一弘さんのお父さんの代から。その時は牡蠣養殖だけでなく、夜中に出港し、一晩中、小女子という魚を獲るランプ網漁もやっていました。一弘さんは、高校卒業後すぐ漁師になりましたが、もともと漁業を継ぐ気はなかったといいます。
「ランプ網っていうのは、最低でも4、5人が必要な漁業なのさ。『人いなくてひでえ、人いなくてひでえ』って、親父とお袋がいってたこともあって、俺も手伝わなくちゃって思ったのさ。それに同級生たちが、浜に戻って家業の漁業を継いでた。それで漁師になったんだよね」
「だから、俺は心からの漁師ではないっていうか。好きで漁師になったわけではないんだな。やめたくなる時だってあったさ。一瞬だけど、こんな辛い思いして、いい生活ができないなら、やめてやるってさ」
浜に人を増やしたい、漁師を増やしたいという気持ちはありながらも、漁師の仕事は決して簡単ではありません。それは一弘さんが一番分かっています。自然に大きく左右され、思い通りにいかないこともしばしば。
一弘さんが漁師になって40年になりますが、その気持ちは今も変わりません。楽しいことももちろんあるけれど、大変なことも受け入れてやっていかないといけない。漁師という仕事の良さ、素晴らしさを決して誇張しない。一弘さんの眼差しは真剣でした。
漁師の仕事は最初が大変。
一弘さんは、牡蠣養殖とワカメ養殖を営んでいます。牡蠣の仕事は、牡蠣の赤ちゃんがついたホタテの貝殻をロープに挟み込む「種はさみ」、成長した牡蠣を沖合にに移動させる「沖出し」、牡蠣筏が沈まないように調整する「タルつけ」、冬になると「牡蠣の水揚げ」と「牡蠣剥き」を行います。3月と4月には、ワカメの収穫や加工の作業も行います。
「一番大変な仕事は、牡蠣を沖合に運ぶ沖だし作業かな」
来年独立予定の担い手漁師を受け入れたばかりのときのこと。
「休憩しようとして彼が長靴を逆さまにしたら、中から大量の水が出てきたんだよ。バーって。海水でも入ったのかなと思って聞くと、汗だっていうのさ。その時は驚いたね。漁師の仕事は最初が大変なんだな」
一弘さんも、一緒の船に乗っていた先輩に教わったり、他の船で働いたりして少しずつ仕事に慣れていったといいます。最初の一年は戸惑うこともあるかもしれませんが、心配することはありません。
震災で失ったものと得たもの
福貴浦には18軒もの牡蠣漁師さんがいて、他の浜と比べても若い漁師の数が多くなっています。彼らに話を聞いていく中で感じるのは、みんなとてもフレンドリーなこと。
「2011年に、東日本大震災が起きて、漁師以外の人がこの浜からいなくなってしまった。それまでは牡蠣剥きやワカメの加工作業は、漁師以外の浜の人も一緒になってやっていたけれど、それができなくなってしまった。だから残った浜の人同士でなんとか協力しあってやっているのさ」
ワカメの収穫シーズンになると、漁師同士の助け合いが頻繁に発生します。
「それに、新しい人との出会いもあった。震災後、ボランティア団体が福貴浦に来てくれて、ボランティアをはじめ、外の人との交流が活発になった。その時思ったね。ああ、やっぱ人と一緒に働くって楽しいんだなって」
震災で失ったものもあれば、得たものもある。人と一緒に働くことの楽しさを、浜のみんなが知っている。この浜のフレンドリーさの源はそこにあるのかもしれません。
重く考えすぎずに
「うちには後継者がいないからさ。自分の漁具とか船を全部引き継いでもらってもいいし、好きなところを継ぐのもいいさ。もし本当に継ぐとなったら、人に負けねえくらいの漁師にはなってほしいな」
そうは言いつつも、漁師になるハードルはあげたいわけではありません。
「家のローンがあるから、すぐには引退はできねえんだ笑。だから、まずはこの浜に来て、この浜のことを知って、自分の将来も少しずつ考えてくれたらいいよ」
すでに担い手を受け入れ、独立もさせた経験もある一弘さん。受け入れ体制はバッチリです。将来的には事業承継も考えながら、この福貴浦で漁師に挑戦してみませんか。
募集職種 | 漁師 |
---|---|
雇用形態 | 正社員・フルタイム |
給与 | 月収20万~25万円 試用期間中は月給200,000円(1~3か月) |
福利厚生 | 海産物持ち帰り可, 昇給あり, 昼食支給(繁忙期のみ), 乗組員厚生共済, 寮あり(TRITON OSHIKA), 大漁手当 |
仕事内容 | 沿岸/養殖漁業, ワカメ養殖, 刺し網漁, 牡蠣養殖 |
勤務地 | 宮城県石巻市福貴浦 |
勤務時間 | 牡蠣養殖(10月~2月、5~6月)6:00~15:00 ワカメ養殖(3~4月)5:00~12:00 牡蠣・ワカメ準備、刺し網など(7月~9月)5:00~11:00 ※漁業のため天候等により変動あり |
休日休暇 | 10月~2月:日曜 3~9月:不定休(月当たり6~8日程度) お盆休暇(5日程度) 年末年始休暇(5日程度) |
会社名 | 福徳丸 |
---|---|
住所 | 宮城県石巻市福貴浦字土手30‐7 |